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ホーム弁護士コラム・論文・エッセイ友成弁護士著作 一覧 > <民法改正ブログ>連載第7回 瑕疵担保に関する改正点
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弁護士 友成 亮太

2019年04月26日

<民法改正ブログ>連載第7回 瑕疵担保に関する改正点

はじめに

瑕疵担保に関する主要な改正点は、概ね次の4点です。  

①「瑕疵」から「契約の内容に適合しない場合」という考え方へ。
②買主の追完請求権と代金減額請求権を新設。
③「契約の目的を達することができないとき」という解除要件の削除。
④目的物の種類または品質に関する担保責任の期間制限。

  *以下では特に断らない限り条文の指摘は改正後の民法を指し、条文は次の通り表記します。
    例)563条2項1号→§563-Ⅱ①

「瑕疵」から「契約の内容に適合しない」へ

1 改正前の法律では                           

 改正前の民法では、土地、建物、中古車、クラシックカーなど、代替性のない「特定物」の売買の場合には、売買目的物に瑕疵があったとしても、瑕疵のない特定物は存在しないので、売主は売買目的物である「特定物」を引き渡せば足り、買主には追完請求権がないと考えられていました。但し、このような場合には買主に不利益が生じますから、売主は法定責任として瑕疵担保責任を負うとされていました。他方、日用品など、代替性のある「不特定物」については、売買目的物に瑕疵があっても代替品を用意できますから、債務不履行の問題となり、買主が追完請求権を有すると考えられていました。

改正前民法§570

 売買の目的物に隠れた瑕疵があったときは、第566条の規定を準用する。ただし、強制競売の場合は、この限りでない。

改正前民法§566

 1 売買の目的物が地上権、永小作権、地役権、留置権又は質権の目的である場合において、買主がこれを知らず、かつ、そのために契約をした目的を達することができないときは、買主は、契約の解除をすることができる。この場合において、契約の解除をすることができないときは、損害賠償の請求のみをすることができる。

 2 前項の規定は、売買の目的である不動産のために存すると称した地役権が存しなかった場合及びその不動産について登記をした賃貸借があった場合について準用する。
 3 前2項の場合において、契約の解除又は損害賠償の請求は、買主が事実を知った時から1年以内にしなければならない。

 ところが、上記のような考え方について、「瑕疵」という概念が難解であるという指摘もあり、特定物か不特定物かを問わず、売買の目的物が「契約の内容に適合しない場合」には、買主が追完請求権(①修補請求権、②代替物引渡請求権、③不足分引渡請求権)等を有することが明記されることになりました。

2 改正法では                               

 改正法では、上記改正前民法§566、570を削除し、「引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるとき」に買主の追完請求権等を行使できるよう定められました(§562)。

3 経過措置                                 

 施行日後に締結された契約について、新法が適用されます。

4 実務への影響                               

 従前、「瑕疵」といえるかどうかを判断するに当たり、その売買目的物が通常有するであろう性能等が問題になったりしていましたので、今後、「契約に適合しているかどうか」という基準になったとしても実務への影響はさほど大きくないのではないかと考えます。
 しかし、民法において契約解釈(当事者間の意思解釈)が明文化された以上、今後は紛争の予防のためにも契約書等の文書によって当事者間の合意(どのような種類、品質、数量のものに関して契約を締結したのか)を明確にしておくことが望ましいといえます。日常的な契約では、一々契約書を作成することが煩雑であるということもあるかもしれませんが、契約書のひな形を見直したり、注文書・注文請書に条件を明示しておいたり、契約条件交渉の経過をなるべくメールで残すようにしたり、といった工夫も検討すべきではないかと考えます。

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買主の追完請求権と代金減額請求権

1 改正前の法律では                           

 改正前の民法では、数量を指示した売買契約の場合や、売買目的物の一部が他人物であったとき等に代金減額請求が出来ることになっていました。

改正前民法§563

 1 売買の目的である権利の一部が他人に属することにより、売主がこれを買主に移転することができないときは、買主は、その不足する部分の割合に応じて代金の減額を請求することができる。

 2 前項の場合において、残存する部分のみであれば買主がこれを買い受けなかったときは、善意の買主は、契約の解除をすることができる。

 3 代金減額の請求又は契約の解除は、善意の買主が損害賠償の請求をすることを妨げない。

改正前民法§565

 前2条の規定は、数量を指示して売買をした物に不足がある場合又は物の一部が契約の時に既に滅失していた場合において、買主がその不足又は滅失を知らなかったときについて準用する。

2 改正法では                               

 改正法では、買主に追完請求権と代金減額請求権が認められることが明文化されることになりました。

§562(買主の追完請求権)

 1 引き渡された目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補、代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
 2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

§563(買主の代金減額請求権)

 1 前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
 2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
  一 履行の追完が不能であるとき。 
  二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前3号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
 3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

§565(移転した権利が契約の内容に適合しない場合における売主の担保責任)
 前3条の規定は、売主が買主に移転した権利が契約の内容に適合しないものである場合(権利の一部が他人に属する場合においてその権利の一部を移転しないときを含む。)について準用する。

 買主は、①目的物の修補請求、②代替物の引渡請求、③不足物の引渡による履行の追完請求のいずれかを選択することができ、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法により履行の追完をすることができます。但し、売主は、買主が選択した追完の方法を害することはできませんから、売主の提供する追完の方法が契約の趣旨に適合し、かつ、買主に不相当な負担を課すものではないときに限り、買主の指定した追完方法と異なる方法で追完することができると考えられます。なお、追完不能の場合には買主の追完請求権はなく、代金減額請求、損害賠償請求または契約解除を検討することになります。

 また、買主は、売主に対して相当の期間を定めて履行の追完を催告し、同期間内に履行の追完がないときは、その不適合の程度に応じて代金減額請求をすることができます。この代金減額請求は形成権ですから、訴訟外における買主の一方的意思表示によって効力が生じます。履行の追完をした後の減額請求が原則ではありますが、一定の場合には追完の催告をせずに減額請求をすることもできます。なお、代金減額請求は損害賠償請求ではありませんから、売主に帰責事由がなかったとしても行使することができます(但し、買主の責めに帰すべき理由による場合は減額請求できません)。

3 経過措置                                 

 施行日後に締結された契約について、新法が適用されます。

4 実務への影響                               

 今後、売買目的物が特定物であるか不特定物であるかに関係なく、契約不適合の場合には買主の追完請求権が認められ、さらに代金減額請求権も認められることになり、この成否は売主の帰責性に関係がありませんから、引渡を受けた売買目的物が契約の内容と適合しないと考える買主としては追完請求権と減額請求権の行使を検討することができ、実務に与える影響は大きいものと考えられます。

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「契約の目的を達することができないとき」という解除要件の削除

1 改正前の法律では                           

 改正前の民法では、上記のとおり、「瑕疵」による解除ができるかどうかは、「契約の目的を達することができないとき」に当たるかどうか、という判断基準でした(改正前民法§566,570)。

2 改正法では                               

 改正法では、上記のとおり、「瑕疵」から「契約の内容に適合しない」に改められただけでなく、解除について§541、542に整理しましたので、売買目的物が契約の内容に適合しない場合には、§541または§542によって解除が認められるかどうかを検討することになります(詳しくは契約解除のコラムをご参照下さい)。
したがって、買主が催告解除を主張した場合、売主としては「契約の目的が達成可能である」というだけでは抗弁としては足りず、「契約及び取引上の社会通念に照らして軽微であること」(§541但書)を主張立証しなければなりません。

§564(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
 前2条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。
§566(目的物の種類又は品質に関する担保責任の期間の制限)
 売主が種類又は品質に関して契約の内容に適合しない目的物を買主に引き渡した場合において、買主がその不適合を知った時から1年以内にその旨を売主に通知しないときは、買主は、その不適合を理由として、履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。ただし、売主が引渡しの時にその不適合を知り、又は重大な過失によって知らなかったときは、この限りでない。

3 経過措置                                 

施行日前に締結された契約に関する解除については、新法ではなく旧法が適用されます(改正附則32)。

4 実務への影響                             

「瑕疵」ないし「契約の目的に適合しないこと」によって解除が認められ得ることは従前と同様ですから、実務への影響はそれほど大きいとは考えられませんが、解除の要件が改正前民法と異なりますので、いざ解除を主張するときには要件の確認を要するだろうと考えます。 

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目的物の種類または品質に関する担保責任の期間制限

1 改正前の法律では                           

 改正前の民法では、買主が売主に対して瑕疵担保責任を追及する場合には、「事実を知った時から1年以内」に解除または損害賠償請求をしなければならないこととされていました(改正前民法§566,570)。
 この条文の意味について、判例は、買主が1年以内に裁判上の権利を行使しなければならないというわけではなく、裁判外での通知で足りるとしていましたが、通知すべき内容は「具体的に瑕疵の内容とそれに基づく損害賠償請求をする旨を表明し、請求する損害額の算定の根拠を示すなどして、売主の担保責任を問う意思を明確に告げる必要がある」としていました(最判平成4年10月20日民集46巻7号1129頁)。
 しかし、これでは買主に負担が重いという理由から、今回改正されることになりました。

2 改正法では                               

 改正法では、買主が「種類」または「品質」について契約の内容に適合しない目的物の引渡を受け、「買主がその不適合を知った時から1年以内」にその旨を通知すれば足りるものとされました(§566)。買主は、この「通知」を怠ることにより追完請求権等の権利を失うことになりますが、通知の内容としては、瑕疵・数量不足の種類とその大体の範囲を通知する程度のもので足りると考えられています。
 但し、買主に通知義務が課せられるのは売買目的物の「種類」または「品質」に関して契約不適合があった場合であり、「数量不足」の場合や「権利の売買」の場合には適用がありません。
 そして、買主が売買目的物の「種類」または「品質」について契約不適合があり、売主に対して1年以内にその旨を通知した場合、売買目的物の契約不適合の場合及び売買目的の権利が契約不適合の場合には、買主のもつ損害賠償請求権等は消滅時効の一般原則にかかります。

商法§526

 1 商人間の売買において、買主は、その売買の目的物を受領したときは、遅滞なく、その物を検査しなければならない。
 2 前項に規定する場合において、買主は、同項の規定による検査により売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことを発見したときは、直ちに売主に対してその旨の通知を発しなければ、その不適合を理由とする履行の追完の請求、代金の減額の請求、損害賠償の請求及び契約の解除をすることができない。売買の目的物が種類又は品質に関して契約の内容に適合しないことを直ちに発見することができない場合において、買主が6か月以内にその不適合を発見したときも、同様とする。
 3 前項の規定は、売買の目的物が種類、品質又は数量に関して契約の内容に適合しないことにつき売主が悪意であった場合には、適用しない。

 なお、商人間の売買の場合には商法526条が適用され、同条も以下のとおり改正されましたので、改正民法が適用されるのは、売買当事者双方または一方が商人ではない場合ということになります。

3 経過措置                                 

 施行日前に締結された契約に関する解除については、新法ではなく旧法が適用されます(改正附則32)。

4 実務への影響                             

 売買目的物の「種類」または「品質」に契約不適合がある場合には、買主が売主に対して損害賠償または解除をしないまでも、契約不適合がある旨を通知しなければ買主の権利が失われてしまいますから、実務へ与える影響も大きいものと考えられます。

まとめ

 現行法と改正法を比較すると下表の通りとなります。

 全体として買主保護に重きを置いた改正といえますので、物品の販売を行う企業などでは、契約書の書式の見直しや法改正に関する従業員への教育の徹底など、相応の対策が必要となります。

旧法・新法比較.jpg

以上

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