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弁護士コラム・論文・エッセイ

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弁護士 石田 茂

2012年08月01日

レシート考

コンビニでお茶のペットボトルを150円で買うと、店員からレシートを渡され、渡されたレシートをカウンターに置いてある、どうやらレシートをその中に捨てるためのプラスティック製のボックスに入れることになります。私は、極力レシートを受け取らないようにしています。何故なら、代価150円のレシートは不要であり、ゴミと同様だからです。

レシートについて携帯電話でサイトの意見を見ると、例えば、

貰わないとお釣りが合っているかわかりません。レジ打ちミスか、釣り銭渡しミスとか・・・。万が一万引きの参考人として聞かれた時どうすれば証明できるでしょうか?レシートを渡すのは店側の義務です。結論。捨てるのはお客の判断。

とあります

ところで、民法第486条は、

弁済した者は、弁済を受領した者に対して受取証書の交付を請求することができる。

と規定しております。
受取証書は、弁済の証拠となる文書で、その形式に制限はなく、取引観念上適切なもので足りるとされているので、コンビニのレシートも該たりそうです。ただし、これに対し、受取証書には、受領文言、債権者および債務者の氏名、受領年月日を記載しなければならないという説(多数説)もあり、この説を採るとコンビニのレシートは債務者(買主たるお客)の氏名が表示されることはないので、受領証書には該らないことになります。

そして、民法が弁済受領者に受領証書交付の義務を課したのは、弁済者に弁済の証拠を得させようとする趣旨なので、弁済と受領証書の交付は同時履行の関係に立つと解されています。
つまり、コンビニで150円の代金を支払う際にレシートをくれなければ、150円は支払わないと言える訳です。ただし、150円を支払わなければ、お茶のペットボトルは手許に来ませんが。お客は同時履行を求めることはできますが、これは抗弁権ですので、お客が求めなければコンビニはレシートを渡す義務はないのです。上記のサイトの意見は、求められればレシートを渡すことは義務であるという点で正しく、半分正しいことになります。
また、上述の受取証書に関する多数説を採りますと、例えば、私が「石田」と宛先を記した領収書をくれないと150円を支払わないと言えることになりますが、何人もの客がこのようなことを言えば、レジスター前は大変な混雑を来すことになります。たかが、150円の領収書です。多数説は大量消費を前提とする現代では通用しないものと言えます。

レシートの用紙はレジロールと称されているようで、アスクルで頼むと、CASIO製(幅58mm、外径60mm、長さ35m)のものが5個606円で購入できるようです。

次にローソンの平成24年2月期の決算短信を見ますと、営業総収入は約4789億5700万円(これが総て店舗における売上げかは判りませんが、一応店舗における売上げと推定します)で、株主、投資家情報(IR)によると、平成24年5月の既存店客単価は569円となっていますので(因みに国内店舗数は9328です)、1年間の営業総収入を客単価で割ると8億4175万2197が解となります。実にローソンだけで約8億4175万枚のレシートが発行されたことになります。この発行されたレシートのうち何枚に実用性があるのでしょう。

今、丸ビル地下1階のナチュラルローソンでジュースなど3点を買い、594円(上記の客単価とほぼ同額です)を支払って、常は貰わないレシートを入手しました。レシートは幅が58mm、長さが103mmですので、レジロール紙1個の長さ35mを103mmで割ると、約340枚のレシートが1個のレジロール紙から発行できることになります。そこで、ローソンの1年間のレシートの発行枚数8億4175万枚を340で割ると約247万5735個のレジロール紙が必要となります。レジロール紙5個で606円ですので、アスクルでCASIO製レジロール紙を購入するとなると、247万5735個を5で割って606円を掛けることとなりますので、ローソンだけで年間約3億円の費用を要することになります。勿論ローソンがアスクルから購入していることなどないと思いますが。

私は、総務省の通達でもあって、コンビニがレシートを発行しているのかと思っていましたが、そのような通達はないようです。
お客一人ひとりにレシートを発行するのは全く無駄で、家計簿に貼るとか、会社の経費とするためにレシートが必要であると言われたときに発行すれば足りると思うのですが、如何でしょう。

(平成24年8月1日)

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