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弁護士 園 高明

2015年01月01日

過失相殺にみる安全運転の心得

(丸の内中央法律事務所報vol.26, 2015.1.1)

今回は、前号でご紹介した別冊判例タイムズ38号の交通事故における過失相殺認定基準を参考に、安全運転に向けた教訓を考えて見ましょう。

過失相殺というのは、被害者にも事故について過失がある場合には、請求できる損害賠償額が被害者の過失の程度に応じて減額されることをいいます。一般的には双方の過失の割合を足して100%になるようにしており、A60%:B40%とすると、本来の損害賠償額がAについては40%:Bについてはは60%になります。

1 正面の青信号に従って、A車が交差点に進入したところ、赤信号を無視したB車に衝突された場合(1図)

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 常識としても、赤信号を無視したB車が悪いので、青信号で交差点に進入したA車に過失はなく、赤信号無視して交差点に進入したB車の過失が100%となり、A車の損害はそのまま賠償され、B車の損害はA車に請求できないというのが損害賠償の原則でもあります。

 しかし、対面信号が青信号で交差点に進入したA車に、過失が認められる場合があります。

 例えば、赤信号無視車が明らかに交差点に先に進入しており、普通に前方注意していれば、ブレーキ操作により衝突しなかったと認められる場合には、A車にも10%程度の過失が認められます。

 もう一つは、信号表示の変わり目の事故です。現在の信号機は、両方向を赤信号とする時間が4秒程度は設けられていますから、黄色信号あるいは変わってすぐの赤信号を無視して交差点に進入する車両があっても、青信号に変わってから発進すれば一般的には事故にはならないと思われますが、黄色信号、赤信号に変わりたてに関しては、運転者には自分なりの感覚があり、急ブレーキに近い感じで、停止しようとする人がいたり、逆に信号の変わり目では加速して通過しようとする人がいたり様々なパターンがあるように感じます。

 そこで、信号表示が青になって発進した場合でも、赤信号を無視して車両が進入してくること可能性も無視できる訳ではないのですが、自動車同士の事故に関しては、相手が交通ルールを守るものと信頼して運転していれば良いという原則があります。しかし、交差点内あるいは交差点に近接する場所について普通に前方を注意していればB車が信号を無視して交差点に進入してくるのが判るのに、青信号だけを見て発進したためB車に気づかなかったという場合には、A車に10%の過失が認められることになります。

安全運転の心得1

 「赤信号が青信号に変わり発進する場合にも、信号機だけを見るのではなく、一呼吸おいて、左右を確認しながらゆっくり発進するようにしましょう。」

2 交差点を直進していたA車が、対向車線から急に右折してきたB車に衝突された場合(2図)

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 A車は、B車は右折のウィンカーは出していたが、通過を待つと思っていた。直進優先だろう、急に右折されたって避けようがないと言うでしょう。

 しかしながら、対向車が右折するに際し、対向直進車の速度やその距離を見誤り、右折可能と判断したが、結果的に衝突した場合、直進するA車も、前方を注意し、B車の動向を確認するのは容易であり、適切に減速しあるいはハンドルを操作すれば事故を防げることも多いことから、基本的な過失割合はA車20%:B車80%とされています。

安全運転の心得2

「交差点を直進するに際し、交差点に右折車を発見したときも、右折車が、判断を誤って右折してくるかもしれないと思って、対向車の動静に注意を払うようにしましょう」

 

また、本件では、B車は、早回り右折をしていると考えられます。これによりB車の過失割合は10%加算され、A車10%:B車90%となります。道交法では、交差点中心の直近の内側を進行して右折することが求められておりますが(法34条2項)、この規定に反して、交差点中心によらずに右折した場合を早回り右折といいます。

 道交法がこのように定めたのは、早めに右折を開始すると運転者の視線が右折先の道路に向かい、対向道路への注意がおろそかになり、対向車を見逃したり、位置を見誤る危険が高まるからです。

安全運転の心得3

「交差点を右折するに際しては、早めにハンドルを切らず、対向直進車の有無位置、速度を的確に判断し、交差点中心部の内側を通って右折するようにしましょう」

3 高速道路のICにおいて、加速車線からの合流するA車の速度が遅く、B車が走行車線から追い越し車線に進路変更したところ、追い越し車線を走行中のC車と衝突した場合(3図)

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(1)A車B車が衝突した場合を考えて見ると、合流するA車は、本線車道上を走行するB車の進行を妨害してはなりません(道交法75条の6 1項)から、A車の過失はB車の過失より大きいですが、B車もA車が走行車線に進行してくるのは予想できるのですから、A車の動向に注意し、適宜速度を調節することによって衝突を回避できるのが一般的ですからB車にも過失が認められ、基本的な過失割合は、A車70%:B車30%とされています。

 本件の場合は、合流するA車の速度が著しく遅いとされています。高速道路本線は80km/h以上の高速度で走行することが予定されており、加速車線を使って合流車Aは本線を走行している車両との速度差をなくしているおくことが期待されており、20km/h以上遅い速度で合流しようとした場合には、不適切な合流方法として、A車の過失が10%加算され、A車80%:B車20%とされます。

安全運転の心得4

「高速道路に不慣れな初心者は、ときとして不十分な速度で、高速道路本線に進入しようとすることがありますが、加速車線で加速することが高速道路での安全につながります」

(2)B車とC車の衝突に関して考えると、進路を変更するB車は、後方から進行してくるC車の速度又は方向を急に変更させてはなりません(道交法75条2の3,26条の2 2項)から、追越車線のC車が有利に判断されますが、C車も前方を走行するB車の動向を注意し、適宜速度を調整して衝突を回避することはさほど困難ではありませんから、基本的な過失割合は、B車80%:C車20%とされています。(1)の合流の場合と似た事故形態ではありますが、(1)の場合には、A車は加速車線内から本線に合流せざるを得ないので、走行車線のB車は、A車を合流させてあげないといけない面もあるわけです。そこで、A車の基本過失は、B車が追越車線に進路変更する本件の場合より10%有利に考えられているのです。

 ところで、本件は、合流点付近での事故ですが、ICやSA・PAの付近の分岐点・合流点付近では、通常の高速道路の流れに比べ進路変更車両が多くなるのが一般的ですから、これら付近では、走行車線の車両が追越車線に進路変更してくることが予測されるので、C車の過失が10%加算され、B車70%:C車30%になります。

安全運転心得5

「高速道路のIC、SA、PA付近では、追越車線を走行中でも、走行車線上の車両が進路変更してくることを予想し、その動向及び速度差に注意しましょう。」

(3)本件で、B車C車の事故にこれらと衝突していないA車に責任が認められるかという問題があります。非接触車の責任として議論される問題ですが、接触していないというだけで責任がないとは言えません。A車の走行妨害の程度や判断の不適切性の程度などからA車が接触した場合と同視できるような危険を作ったと評価できるかが問題です。興味のある方は、本誌で何度か紹介している日弁連交通事故相談センター東京支部の発行している交通事故損害賠償額算定基準「赤い本」の2007年版の下巻41頁以下に、過去の裁判例の分析結果が、裁判官の報告として掲載されていますのでご参照下さい。

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