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ホーム弁護士コラム・論文・エッセイ園弁護士著作 一覧 > 東名高速あおり運転致死傷事件の続報
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弁護士 園 高明

2020年07月01日

東名高速あおり運転致死傷事件の続報

園高明弁護士は2023年(令和5年)3月をもちまして当事務所を退所いたしましたが、本人の承諾を得て本ブログの掲載を継続させていただいております。

 (丸の内中央法律事務所事務所報No.36, 2020.1.1)

 去る12月6日、昨年事務所報(34,35号)で取り上げてきた東名高速あおり運転致死傷事件(東名高速道路においてあおり運転をしたうえ追越し車線上に被告人が自車を止めて後続のワンボックス車を停車させ、自車からおりてワンボックス車の両親に文句をいっていたところ、後続の大型トラックがワンボックス車に衝突し、ワンボックス車の幼い子供2人が死亡し、両親が負傷した事故)について東京高等裁判所の控訴審判決がありありました。危険運転致死傷罪の成立を認め懲役18年とした横浜地裁判決が控訴審でも維持されるか否か、その判断が注目されていたところです。
 控訴審判決は、本件について原審が危険運転致死傷罪を認めたことは控訴の理由にはならないとしたものの、公判前整理手続きでは危険運転致死傷罪にはあたらないとしながら、判決では危険運転致死傷罪に当ると判断したことが、訴訟手続きの法令違反(刑訴法379条)にあたるとして原判決を取り消すとしました。マスコミ報道によるもので、判決の詳細は分かりませんが、前号でご説明したように公判前の整理手続きでは、裁判官の判断で危険運転致死傷罪は成立しないと表明しながら、原判決では、危険運転致死傷罪が成立すると認定しています。サービスエリアからの被害者に文句を言って謝罪させる意思による一連の追跡行為における追越し、接近行為を危険運転行為と認定し、停止させてからその後の衝突までの因果関係を認めて危険運転致死傷罪を認めたことは、被告人に不意打ちを与え、被告人の防御権を侵害するという判断になったものと考えられます。
 つまり、被告人は、争点であった高速道路上にワンボックス車を停止させる行為は、危険運転致死傷罪の犯罪行為とはならず、停止させた後被害者を一定の場所から移動することをできなくさせた犯罪行為として監禁致死傷罪が成立することについて争っていたにもかかわらず、ワンボックス車を高速道路上に停止させ被害者に文句を言うという意図のもとに停止前の追越し、接近という危険行為、その後停止させる行為及び追突事故を危険運転致死傷罪の犯罪行為として判決していることが違法と判断されたことになります。端緒となったサービスエリアから停止させるまでの一連の運転行為は、一部の危険運転行為も含めて証拠上認定できる事実と思われますが(したがって、控訴審は、原審の危険運転致死傷罪の認定を否定していない)、これらは、監禁致死傷罪では犯罪行為ではなく、動機、犯罪に至る経緯にすぎないので、被告人は、犯罪の成否に影響する重要な事実として争わず、この点について審理のやり直しを求めたものと考えられます。従って、差戻審では、被告人は、前記の認定に対して反証を行うことが可能となり、量刑も原審の判断とは関係なく再度検討されることになります。

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