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弁護士コラム・論文・エッセイ

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弁護士 園 高明

2021年04月12日

自転車問題あれこれ

(丸の内中央法律事務所事務所報No.38, 2021.1.1)

 最近は自転車の利用が増え、乱暴な自転車の運転が度々報道されているところです。本稿では自転車関連の法的問題について触れてみようと思います。

1 自転車の道交法上の位置付け

 自転車は、ペダル又はハンド・クランクを用い、かつ、人の力により運転する二輪以上の車(レールにより運転する車を除く。)であって、身体障害者用の車椅子及び歩行補助車以外のものをいう。(道交法2条十一の二)とされています。歩行補助車とは、シルバーカー、四輪歩行器などで、原動機としてモーターを使用するものでも時速6kmを超える速度が出せないなどの構造要件に該当する車も含まれ、道交法上は歩行者として扱われます。人力によらない電動機を用いるものでも内閣府令で定める基準に該当する車は自転車に含まれるとされており、電動アシスト付き自転車といわれるものです。
 自転車は、軽車両の一種とされ、自動車及び原動機付自転車(「自動車等」といいます。)と同様に車両とされており(道交法2条八)、原則として自動車等と同じ信号機、規則に従うことになります。道路の優先関係や一時停止規制は自動車等と同様自転車も従う必要があります。信号機の信号に従う義務は車両運転者として自動車と同様であり、故意の違反に対しては3月以下の懲役又は5万円以下の罰金が規定されています。私が司法修習生をしていた時代の古い話ですが、お酒を飲んだので自動車ではなく自転車を運転したという人がいました。当然飲酒して自転車を運転することも禁止されており(道交法65条1項)、酒酔い運転については自動車と同様の罪が定められていますが、危険度が違うので、自動車ほど重くは処罰されていません(道交法117条の2第1号)。
なお、一定以上のアルコールを身体に保有する酒気帯び運転の罪は、自転車には適用されません。(道交法117条の2の2第1項第3号)

(1)歩道と自転車
 自転車が歩道や横断歩道を歩行者と同じように走行していることはよくあります。
 しかし、自転車は、歩道又は路側帯(「歩道等」といいます。)のある道路では、車道を通行するのが原則です(道交法17条1項)。
しかし、
 ①道路標識等により自転車が歩道を通行することができるとされているとき
 ②運転者が児童、幼児、70歳以上の者、一定の身体障害を有する者であるとき

 ③自転車の通行の安全を確保するための歩道を通行することがやむをえないとき

(道交法63条の4 1項)には、普通自転車(自転車の内、長さ・幅・車体の構造等について内閣府令の基準を満たしたもの)は歩道を通行することができます。
 そして、この場合には、歩道の中央より車道寄りの部分を徐行しなければなりません。また、歩道では歩行者優先ですから、歩行者の通行を妨げることとなるときは一時停止しなければなりません。(道交法63条の4 2項)
 また、自転車は、著しく歩行者の通行を妨げることになる場合を除き、道路の左側部分に設けられた路側帯を通行することができるとされています。(道交法17条の2)

(2)自転車の交差点通過方法
 自転車の交差点の通過方法は、自動車の運転免許を持つ人も持たない人も勉強する機会もなく、ルールを知らないまま運転している場合が多いのではないでしょうか。

 ア 信号機のある交差点(歩行者用信号・自転車横断帯がない場合)では、対面する信号機に従って進行します。この場合も、道路の左側端にそって進行することが必要ですが、歩行者がいないなど歩行者の通行を妨げるおそれがない場合には、自転車に乗ったまま横断歩道を渡ることができます。
  (警視庁 自転車の交通ルール)
 イ 信号機のない交差点
   この場合には、自動車や原動機付自転車と同じルールに従います。道路の優先関係、一時停止表示に従う義務、見通しの悪い交差点での徐行義務などです。
  いずれの交差点についても、自転車は、右折するときは、その前からできる限り道路の左側端に寄り、交差点の側端に沿って徐行しなければならず、(道交法34条3項)斜めに右折することは禁止されています。
 ウ 自転車横断帯のある交差点
   自転車横断帯がある交差点では、自転車は自転車横断帯によって横断しなければなりません。(道交法63条の7)自転車横断帯とは、「道路標識等により自転車の横断の用に供される場所であることが示されている道路の部分」をいいます(道交法2条四の二)。多くは横断歩道に隣接して車道寄りに設置されています。

 なお、別冊判例タイムズの過失相殺率の認定基準では、交通整理の行われていない交差点事故などでは、自転車が自転車横断帯を横断している場合には、自転車に10%有利な事情として修正要素とされています。また、自転車は自転車横断帯がある場合には原則として横断歩道を進行してよいわけではありませんが、自動車等との関係で過失相殺を考える際には、自転車横断帯に隣接した横断歩道を渡った場合にも同様に有利な修正が図られています。因みに、自転車横断帯がない横断歩道上では、5%の修正要素とされています。

2 自転車事故の損害賠償

(1)自転車事故の責任
 自転車は、自動車や原動機付自転車との関係では被害者となる場合がほとんどですが、歩行者との関係では加害者となる場合が多いですし、自転車同士の事故も少なくありません。
 自転車事故に関しては、基本的には自転車運転者が責任を負いますが、児童の場合など責任能力が無い場合には責任を負いませんし、この場合には児童の監督責任を負う親の責任(民法714条)が問題とされることになります。
 自分の行為について法的な責任を問われる年齢は概ね10歳前後で分かれるという見解もありますが、裁判例には11歳以上でも責任能力を否定したものもあり、その代わりというわけでもないでしょうが親の民法714条に基づく責任が肯定されています。
 学校事故での児童の行為に対する親の監督責任を否定した最高裁の裁判例が出た際、自転車事故ではどう考えられるのについては本誌27号(2015年8月1日)で解説していますのでご参照ください。
 未成年者が自転車を運転していた場合には、親に民法714条による監督者ではなく、民法709条により責任を認める裁判例も少なくありません。
 民法709条の一般規定により、12歳以上の中学生や高校生について親の責任を認めるためには、当該事故との関係で事故防止に向けられた具体的な親の監督義務違反とその違反行為と事故発生との因果関係が必要となります。具体的な裁判例では、13歳の男子中学生が交通ルールを守らず高速運転をしていることを知りながら交通ルールを守るような注意、監督もしないでいたところ、夜間、無灯火で高速度のまま交差点に進入しノーブレーキで相手方自転車に衝突させてしまった例では、男子中学生とともに、両親の民法709条責任が肯定されています。

(2)事故後の対応
 事故になった場合には直ちに警察に通報し、負傷者が出れば救急車を呼ぶなどの救護義務があり(道交法72条)、これに違反し現場を離れれば、ひき逃げといわれてしまうかもしれません。ただし、自転車は5年又は10年以下の懲役が科される罪(道交法117条)からは除かれています。 
 自転車事故は、車道や歩道のどの位置を通行していて事故になったかなどは結局当事者の言い分に頼らなければならず、自動車運転過失致傷罪のような刑事処分が想定される事案ではなく、過失傷害罪は罰金、科料の軽い制裁なので刑事処分に至ることはまれであり、自動車事故では作成される実況見分調書もほとんど作成されませんから、事故状況の確定に困難を伴うことも少なくありません。
 自転車が加害者になった場合の損害賠償額も、自動車が加害者の場合と基本的には同様なので、高額の賠償額になる場合もあります。このような自転車事故が生じた場合の保険については、自動車に付保される自賠責保険はありませんが、任意保険の個人賠償責任保険が自転車事故の加害者になった場合の賠償額を填補してくれます。個人賠償責任保険は、単体の保険で加入することは稀ですが、自動車保険、火災保険、借家人賠償責任保険などの賠償責任保険に付帯されている場合がありますので、万一加害者になった場合には、これらの保険商品に付帯保険としてついていないか確認しましょう。
 前述のとおり、自転車加害事故は自賠責保険の対象外なので、自動車事故において後遺障害の認定を公的に行う損害保険料率算出機構の後遺障害認定システムはありません。後遺障害の有無、後遺障害等級の認定については損害保険会社が自賠責保険の基準に準じて行っていますが、実際は各損害保険会社の判断なので被害者がどの程度納得するかという問題はあるように思います。

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