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弁護士 山本 昌平

2019年11月27日

内部通報制度と認証制度について

(丸の内中央法律事務所事務所報No.35, 2019.8.1)

 1 皆様、日頃大変お世話になっております。
 弊事務所は、2019年(令和元年)7月をもちまして、丸の内2丁目から3丁目に移転して丸2年が経ちました。これもひとえに皆様のご支援・ご指導の賜物でございます。この場をお借りして心より御礼申し上げる次第でございます。

 2 コンプライアンスの時代といわれながら、企業をとりまく不祥事は依然として絶えず、その対策として法制度の改正など様々な取組みがなされておりますが、今回は、その一環として設けられた内部通報制に関する認証制度についてご紹介させて頂きます。
 まず、内部通報制度とは、明確な定義はございませんが、「組織内の問題を知る従業員等からの情報を受付け、情報提供者保護を徹底しつつ、調査・是正を図る仕組みをいう。」(平成29年5月30日消費者庁消費者制度課「内部通報制度の整備・運用に関する民間事業者向けガイドラインについて」(以下「ガイドライン解説」といいます)14頁より)とされております。組織・企業において、違法行為や不正行為を知った従業員等からの通報を受け付ける窓口を設け、通報内容に応じて事実関係を調査の上、再発防止策を含め、必要な措置・対応をとり、以って、企業・組織が自律的に問題を解決できるようにするための制度といえます。
 この内部通報制度の役割や機能としては、3点指摘されており、まず、①不祥事・不正の早期発見や二次不祥事の未然防止の機能があり、監督官庁やマスコミなどの外部への内部告発を防ぐことにつながります。また、②不正の動機付けをさせない、不正の機会を与えない(ガイドライン解説15頁参考3によると内部通報制度を導入した効果として最も高い数値49.4%)という抑止機能も期待できます。そして、③組織のレピュテーションリスクを減少させる機能を有しております。実際、ガイドライン解説15頁参考1(「平成28年度 民間事業者における内部通報制度の実態調査報告書」(消費者庁))では、不正発見の端緒として、第1位が内部通報制度で58.8%(内部監査の1.5倍)となっており、第2位の内部監査の37.6%、第3位の上司による日常的なチェックの31.5%より高い結果となっております。
 このように、内部通報制度は、コンプライアンス経営を推進するための重要な制度のひとつといえ、現在、多くの組織で導入されており、内部通報制度が有効に機能し、組織が自浄作用を発揮できることは、ステークホルダーの信頼を獲得し、組織・企業価値の維持・向上につながります。

 3 そして、この内部通報制度の質を向上させ、国民生活の安全・安心を確保するために導入されたのが、内部通報制度の認証制度です。この認証制度の導入を検討した内部通報制度に関する認証制度検討会から平成30年4月に公表された「内部通報制度に関する認証制度の導⼊について(報告書)」では、「内部通報制度を適切に整備・運用している事業者が高く評価され、消費者・取引先からの信頼、企業ブランドの向上、金融市場からの評価、公共調達における評価、優秀な人材の確保等につなげていくことができる社会経済環境を醸成し、事業者のインセンティブを高め、その取組を促進することによって内部通報制度の質の向上を図り、もって国民生活の安全・安心を確保するため、最終報告書及び消費者基本計画工程表等を前提に、認証制度の導入に係る事項を検討したものである。」とされております。

 4 この認証制度には、2段階あり、まず、組織が自ら評価を行う制度(内部通報制度認証(自己適合宣言登録制度))で、「事業者が自らの内部通報制度を評価して、認証基準に適合している場合、当該事業者からの申請に基づき指定登録機関がその内容を確認した結果を登録し、所定のWCMS(筆者注:Whistleblowing Compliance Management System)マークの使用を許諾する制度で」(公益社団法人商事法務研究会ホームページより)、この指定登録機関には、公益社団法人商事法務研究会が指定されております。そして、この自己適合宣言登録制度の審査項目として、内部通報制度の意義・目的の明確化、内部規程の整備、通報者等への通知、通報に係る秘密保持の徹底、通報者等に対する不利益取扱いの禁止など38項目があげられており、そのうち、「必須項目のすべておよびそれ以外の13項目のうち6項目について適合している場合に、審査基準を満たしていると判断する」(内部通報制度認証(WCMS認証)「自己適合宣言登録制度」審査基準第3条抜粋)とされております。この制度は2019年(平成31年)2月より既に開始されており、同年(令和元年)7月12日現在で生損保会社を中心に13社が登録されております(公益社団法人商事法務研究会ホームページより)。

 5 そして、第2段階として、本年以降に、自己適合宣言登録制度の運用状況を踏まえながら、自己適合宣言の登録を受けた事業者を対象として、第三者認証の制度が行われるものとされております。
 今後、この自己適合宣言登録をする組織は増えていくものと予想されますが、登録までしない場合でも、「自己適合宣言登録制度」の審査項目は、現在各組織に導入されている内部通報制度を客観的に検証・改善するのにも役立つものですので、是非、一度、ご検討されては如何でございますでしょうか。
 最後までお読み頂きまして、ありがとうございました。

以上

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