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弁護士コラム・論文・エッセイ

弁護士コラム・論文・エッセイ

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弁護士 筑紫 勝麿(客員)

2023年10月11日

裁判と時間

(丸の内中央法律事務所事務所報No.43, 2023.8.1)

   裁判について一般によく質問されるのは、裁判をするとお金がかかるでしょう、ということと、時間がかかるでしょう、という二つのことである。お金がかかるという一般の人たちの印象は、弁護士報酬が高いという感覚によるもので、これは法律問題の代理業務をどう評価するかにかかっていて、ここで直ぐに答えを出すのは難しいことである。

   一方、裁判には時間がかかるのではということについては、筆者はここ数年、裁判上のそれぞれの段階で、どれくらい時間がかかるかという具体的な経験をしたので、その事実関係を体験談としてまとめてみたい。

   筆者が経験したのは民事事件で、原告の代理人として案件に臨んだが、原告と被告が完全に対決している案件で、裁判の審理手続きとしては最高裁判所の上告受理申立てまで行われたものである。また、判決確定後も相手方は何らの対応もしないので強制執行手続きまで進まざるを得なかったものである。

   こういう種類の裁判にはどれくらい時間がかかるかという例として、参考にしていただければ幸いである。

 1. 訴状の提出から第一審判決まで

  令和元年(2019年)

  8月9日 訴状を地方裁判所に提出。

  9月20日 第1回目の口頭弁論期日。審理が始まる。その後、10月、11月、1月、2月、3月と、月に一回の頻度で弁論準備期日が開かれてきたが、コロナ禍がひどくなり、

  令和2年(2020年)

  4月17日 この日の期日が一旦指定されていたがキャンセルとなり、その後4カ月の空白となった。コロナ禍が一旦収まって、

  8月5日 に次回期日が指定された。

  しかし、今度は被告代理人がその前日の8月4日に突然解任されるというハプニングがあり、次回の9月30日は被告代理人不在で期日が開かれた後、10月28日に次の代理人が準備書面を提出。その後和解交渉に入ったが成立せず、

  12月23日 原告勝訴の判決が出された。

  コロナ禍の中の裁判であり、代理人も交代したのでやむを得ない面もあったが、訴状の提出から第1審判決まで約1年4カ月の時間がかかったことになる。

 2. 控訴から高裁判決まで

  令和3年(2021年)

  1月8日 被告は第一審判決を不服として、本件を高等裁判所に控訴した。控訴期間は、民事訴訟法285条に「判決書の送達を受けた日から2週間」と規定されている。控訴状には控訴の理由が具体的に記載されておらず、控訴の提起後50日以内に控訴理由書を提出する必要がある。(民事訴訟規則182条)

  2月26日 控訴理由書が提出された。

  2月15日 一方、高等裁判所から、訴訟進行に関する照会書が双方に送られ、口頭弁論期日候補日が提示され、日程調整のうえで控訴審の第1回口頭弁論期日が6月16日と決定された。原告側の控訴答弁書は2週間前の6月2日に提出することとされた。

  6月16日 控訴審の第1回口頭弁論が行われ、即日、弁論終結となった。

  8月4日 判決が言い渡され、原告が勝訴した。

  控訴してから約7カ月がかかったことになる。

 3. 上告受理申立てから最高裁決定まで

  8月17日 被告は判決を不服として、上告受理申立書を最高裁判所に提出した。

  9月1日 最高裁から上告受理申立て通知書が送付されてきた。その内容は、「(下記の事件の)判決に対して上告受理の申立てがありましたので、民事訴訟規則199条2項、189条1項により通知します。」というものである。

   上告受理申立て理由書の提出の期間は、上告人が上告受理申立て通知書の送達を受けた日から50日とされている(民訴規則199条2項、194条)。原告側としては、被告の申立ての理由を承知すべく高等裁判所で、10月7日付の上告受理申立て理由書のコピーを取得した。

  12月9日 最高裁から記録到着通知が送付されてきた。その内容は、「原裁判所から事件記録の送付を受けました。今後は当裁判所で審理します。」というものである。

  即ち、被告(上告人)が上告受理申立書を最高裁判所に提出してから、裁判記録が最高裁判所に到着するまで、約3カ月半かかっているということである。

  令和4年(2022年)

  4月28日 最高裁決定 その内容は、「本件を上告審として受理しない。本件は、民訴法318条1項により受理すべきものとは認められない。」というものである。

   これで、令和2年12月の地裁判決が確定した。

   令和元年8月の訴訟の提起から、2年9ヵ月をかえて裁判が確定したことになる。

   被告による上告受理申立てから最高裁判所の決定まで、約8カ月半かかっていることになる。   この間、原告側には、9月1日に、いわゆる上告がありましたよという通知と、12月9日に、記録が送られてきましたよ、という通知があったのみで、その間は、状況がどうなっているのか全く分からなかった。同僚の弁護士や事件の関係者の間では、「上告から3カ月位で棄却になるだろう。」等という噂話が飛び交ったが、誰も確たることは分からず、ただやきもきするばかりであった。

   これで判決が確定し、執行手続きに移行するが、強制執行手続きについてもいくつかの段階があるので、それぞれどれくらいの時間がかかったのかを記録しておきたい。

 4. 強制執行手続き 

  令和4年

  5月10日 4月28日の最高裁判所の決定を受けて、送達証明申請書を最高裁に提出した。具体的には、記録がある裁判所に対して、今回確定した第一審判決の正本が被告(控訴人)に対して送達されたことの証明を求めるもので、本件では、令和2年12月28日に送達されていた。

  5月25日 建物収去命令申立書を第一審の地裁に提出した。本件では、債務者(被告)が債務を履行しない(建物を収去しない)と見込まれるので、裁判に基づき、                     債権者が第三者(今回は執行官)に債務の内容を実施させる(代替執行)ことで、令和2年の判決の内容である建物収去を実現しようとした。

  申立ての後、債務者に対する書面審尋を経て申立てを認容する決定がなされた。

  7月7日 裁判所の決定。 その内容は、「債権者の申立てを受けた執行官は、別紙物件目録記載の建物を債務者の費用で収去することができる。」というもので、 この決定を授権決定という。

  これを受けて、

  7月18日 授権決定正本送達証明申請書、執行抗告無き事の証明申請書、授権決定確定証明申請書を提出した。 この申請に対して、

  7月20日 授権決定が確定したことが証明された。

  この後、執行官との協議の結果、

  8月25日 強制執行第一回目(催告)

  9月21日 強制執行第二回目(断行)

  11月18日 執行終了の確認

  ここで、強制執行そのものは終了した。

  次に、立て替え払いしている執行費用を回収するために、

  12月14日 執行費用額確定処分申立書提出 申立てに対して裁判所から照会があり、二回にわたって回答書を提出した後、

  令和5年(2023年)

  2月13日 執行費用額確定処分の決定がなされた。その内容は、「相手方(債務者)は、申立人(債権者)に対し、金〇〇円を支払え。」というものであり、これによって全額ではないが強制執行費用が回収され、強制執行手続きが全て終了した。

   強制執行手続きに入ってから執行が完了するまで6カ月、その後費用を回収するまでさらに3カ月で、合計9カ月で強制執行関係の手続が終了したことになる。

   令和元年8月に訴訟を提起してから、令和4年11月に強制執行で建物を収去するまで3年3カ月の時間がかかり、費用の立て替え分を回収するまでにさらに3カ月を要し、合計3年6カ月の時間がかかったことになる。

(以上)

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