
2006年01月01日
平成17年6月29日、第162回通常国会において、会社法(以下、「新会社法」と言います)が成立しました。新会社法は、平成18年5月からの施行が予定されておりますが、条文数は合計で979条に及ぶという大部な法律であり、この事務所報をお読みいただいている多くの皆様が、「これまでと何が変わるのか、良く分からない」という実感を抱かれているのではないかと思います。
新会社法は、形式的に見れば、これまで商法第2編、有限会社法、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律などに分散していた我が国の会社に関する法律を一本化したものですが、実質的に見ても、現代社会経済の要請に適う会社制度の実現という目的にしたがって、数多くの改正が行われております。
そこで、以下では、「新会社法のポイント」と題し、数多くの改正点の中から、日常生活においてそれほど会社法の知識が必要ないという読者の皆様に向けて、一般的な知識として最低限知っておいていただきたいと考えられるいくつかの事項について、出来る限り分かり易くご説明したいと思います(但し、紙幅の都合上、ここでご紹介できるのはほんの一部にすぎないことをご了解下さい)。
新会社法の施行によって、現行の有限会社法が廃止されるため、今後新たに有限会社を設立することができなくなります。
なお、これまで存在している有限会社については、法律上、新会社法上の株式会社としてその後も存続するものとして取り扱われます(会社法の施行に伴う関係法律の整備等に関する法律(以下、「整備法」と言います)第2条)。そして、「有限会社」という商号についても、継続して使用することが認められています(整備法第3条)。
現行法では、会社の設立にあたっては、株式会社については1000万円以上、有限会社については300万円以上の出資が必要とされていますが、新会社法にはそのような制限がないため、例えば資本金を1円とする株式会社を設立することができるようになります(但し、そのような会社が社会的信用を獲得できるかという別問題はありますが)。
株式会社の「機関」とは、すなわち株式会社の運営・管理機構であって、具体的には株主総会、取締役会、取締役、監査役、代表取締役などがこれに該当します。そして、新会社法は、現存する株式会社の9割以上が資本金2000万円以下で定款において株式の譲渡制限が付されている会社であるという現実に鑑みて、各株式会社の業務内容、資本構成などの実態に即して、それぞれが多様な機関設計を行うことを認めました。
もちろん、全ての株式会社において自由な機関設計が認められているわけではなく、現行法上の公開会社(注:公開会社とは、その発行する株式の全部または一部の内容として定款による譲渡制限が付されていない会社を言います)である大会社(注:大会社とは、資本金5億円以上もしくは負債の合計額が200億円以上の会社を言います)については、ほぼ現行法下におけるものと同様の機関設計しか認められていません。つまり、機関設計の自由化は、小規模の非公開会社を主たる対象としたものということができます。
機関設計の基本ルールは以下のとおりですが、①と②のみ知識として得ていただければ、③以降は読み飛ばしていただいてもかまいません。
読者の皆様にとって関心のある事項は、上記の基本ルールそのものよりも、むしろ上記の基本ルールが適用された結果としてどのような機関設計があり得るのかということではないでしょうか。現行法と全く異なるものとしては、
などが挙げられます。
新会社法は、非公開会社について、定款の定めをもって取締役および監査役の資格を株主に限ることを認めました(第331条第2項、第335条第1項)。これは、非公開会社の実態に鑑み、現行法下の有限会社における取り扱いを取り入れたものです。
新会社法は、非公開会社(委員会設置会社を除く)について、定款の定めをもって取締役および監査役の任期を最長10年まで伸長できることを認めました(第332条第2項、第336条第2項)。これは、株主の構成が頻繁に変わることがない非公開会社については、必ずしも原則(取締役については2年毎、監査役については4年毎)にしたがって株主の意思を問い直す必要がないためです。
新会社法は、全ての株式会社について、定款の定めにより、会計参与という機関を設けることを認めました(第362条第2項)。会計参与は、株主総会で選任され(第329条第1項)、主な職務は、取締役または執行役と共同して計算書類を作成することです(第374条第1項、第6項)。実務的には、会計監査人が設置されない小規模会社において、計算書類の適正性、正確性を高めることが期待されています。
以 上
(平成18年1月1日)