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弁護士 石黒 保雄

2013年08月01日

課題山積 どうなる日本代表!

 平成25年6月4日、サッカー日本代表は、オーストラリア代表と1-1で引き分け、アジア予選B組首位を確定させ、またしても世界最速でワールドカップの出場を決めた。

 その後、日本代表は、同月11日にカタール・ドーハにおいてイラク代表との予選最終試合を経て、そのままブラジルへと向かい、プレ・ワールドカップともいえるコンフェデレーションズカップに臨み、予選A組でブラジル代表、イタリア代表、メキシコ代表と戦った。

 コンフェデレーションズカップに参加した国は8か国であるが、その中で既に来年のブラジルワールドカップへの出場を決めているのは、開催国であるブラジルと日本だけである。すなわち、日本は、他の6か国のように残された予選を気にすることなく、来年のワールドカップ本大会のみを念頭に置いて、このコンフェデレーションズカップを戦うことができたはずであった。

 ところが、結果は周知のとおり3戦全敗。各試合の印象を端的に言えば、ブラジル戦は完敗、イタリア戦は惜敗、メキシコ戦は惨敗といったところであろうか。以下、それぞれの試合毎に感じた問題点を論じてみたい。

対ブラジル戦(0-3)

  ブラジルは、開催国であるがゆえにワールドカップ予選が免除されているため、真剣勝負の場が少ない。そのため、来年のワールドカップに向けた強化手段として、選手間の連携を整え万全のコンディションで臨んできたのがこの大会であった。

 他方、日本は、埼玉スタジアムでのオーストラリア戦後直ちにドーハへ向かい、灼熱の中イラクとの消化試合を行い、そのままブラジルへ乗り込んで4日後にブラジル戦を迎えたため、ブラジルとのコンディションの差は歴然としていた。

 しかし、そのようなコンディションの違いを差し引いたとしても、日本にとってはあまりにも酷い試合であった。前半3分に先制され、後半3分に追加点を与え、後半ロスタイムにダメ押し点まで献上するという試合展開もさることながら、この試合において、日本の選手は、相手から激しいディフェンスをされると、パスをつなげずボールを前に運べないという弱点を露呈してしまった。

 すなわち、ブラジルの選手は、日本の選手がボールを持つと直ちに1人2人とファウルも厭わないくらい激しくチェックに行き、また、他の選手もボールの受け手となりうる日本の選手を厳しくマークしていた。このようなブラジルの本気のディフェンスにより、日本はミスを連発して持ち前の早いボール回しができず、ほとんど見せ場を作れないまま試合を終えることとなってしまったのである。

 もちろん、完全アウェーの下、開始直後にネイマールに芸術的ボレーシュートを決められて浮き足立ってしまったという事情もあったであろうが、試合全体を通じ、ブラジル相手に戦いを挑むという気迫がほとんど伝わってこなかったのは残念であった。

対イタリア戦(3-4)

イタリア戦が行われたレシフェは、海が近いため高温多湿で、ピッチはまるでサウナのような状況であったという。初戦から中2日のイタリアの選手は、暑さと疲れから本来のコンディションからはほど遠い状態であり、日本の攻撃に対し、中盤からのプレスを放棄していた。そのため、日本は、面白いようにボールがつながり、次々とイタリアゴールを脅かし、本田のPK、香川のボレーシュートによって2点を先制した。この2点は、その前提においてイタリアの守備のミスがあったにせよ、会心の試合運びに基づく結果であり、2-0となった時点で、日本人であれば誰もがこの試合は勝たなければいけないと思ったはずである。

 ところが、日本は、欧州や南米の強豪国相手に2-0とリードする試合展開をした経験がほとんどないため、相手に絶対に点を与えないように守備を固めつつ、相手が前掛かりになった背後をカウンターで狙い、リードを保ったまま試合を終わらせるという当たり前の戦術を実践できなかった。

 また、戦術以前の問題として、現在の日本代表チームの守備は、高さと強さがないだけでなく、著しく安定感に欠けている。イタリアの反撃となる1点目は、ピルロの素早いCKからデロッシが頭で決めたものであるが、そのCKの際、日本の選手は明らかに「まだ蹴らないだろう」と油断してゴール前のマークが緩んでおり、中にはピッチの外で給水をしている者もいた。また、同点となった2点目についても、自陣ゴールライン前でジャッケリーニに体を入れられてボールを奪われた吉田は論外であるが、ゴール前のバロテッリを完全にフリーにして、ただ立ち止まって吉田の様子を見ていた今野、内田、長友の対応も大いに問題であった(吉田がボールを奪われた瞬間、この3人はゴール前に猛ダッシュしてバロテッリへのパスを防ごうとしたが間に合わず、内田のオウンゴールとなってしまった)。

 その後、長谷部が不運なPKを取られて逆転されたものの、その後も日本は攻勢を続けてチャンスを作り、遠藤のFKから岡崎が頭で決めて同点とした。惜しむらくはこの後であり、日本は何度も再逆転のチャンスがありながらゴールを決めきれず、逆に日本は自陣ゴール前からの短いクリアを奪われた後、数的優位な状況にありながら、縦パスを通されクロスを上げられジョビンコに押し込まれる形で、あっけなく決勝点を許してしまった。

 イタリア戦は、勝たなければいけない試合であったにもかかわらず、敗戦によって試合運びの未熟さと守備組織の脆弱さが浮き彫りとなった。

対メキシコ戦(1-2)

 この試合は、お互いに連敗し、予選敗退が決まったチーム同士の戦いであった。したがって、日本としてもどうしても勝たなければならない試合ではないため、控えの選手を試す絶好の機会であった。ところが、先発メンバーを見ると攻撃陣はそのままで、出場停止の長谷部に代わり細貝が、DF陣に新たに栗原と酒井宏樹が入っただけであった。

 試合は、前半15分で終わってしまった。すなわち、開始当初は攻めていた日本の選手が疲労から全く動けなくなり、セカンドボールをほとんどメキシコに拾われて攻撃がつながらず、自陣でもミスからメキシコに何度もボールを奪われるなど、一方的なメキシコペースとなってしまったからである。前半は辛うじて0-0で終えたものの、後半にはクロスとCKからエルナンデスに頭で決められ、終了間際に岡崎のゴールで1点を返すのが精一杯であった。

 ザッケローニ監督は、この日の選手起用について「あまり多くの選手を入れ替えると戦術が機能しなくなる」旨のコメントを出していたが、逆に言えば、それだけレギュラーと控えとの差が大きく、主力抜きでは目指すサッカーができないということに外ならない。しかし、かかる事実は、ザッケローニ監督が就任して約3年、レギュラーをほぼ固定して試合を積み重ねてきたことの弊害であり、監督しての手腕を疑わせるものである。

 おそらく、ザッケローニ監督は、現在のレギュラーメンバーでワールドカップ本番も戦うことを想定しているからこそ、レギュラーメンバー相互間の連携や意思疎通を極限まで高めるために、レギュラーを固定して試合に臨んでいると思われる。しかし、そうであれば、控えのメンバーには、レギュラーと似たタイプの選手ではなく、いざと言うときに頼りになる優れた武器を有している選手が必要である。例えば、1点を取りに行くときはスピードのあるFWを入れ、1点を守るときはボール奪取力に優れたボランチや高さと速さを兼ね備えたセンターバックを入れるなど、状況に応じた選手起用がなされてしかるべきであるが、現在の控えにそのような特徴を持った選手はいない。

まとめ

 日本は、敗れたにせよ強豪3か国と真剣勝負を行い、イタリア戦で見せたような流れるようなパス回しが世界にも通用することを証明した。これは、コンフェデレーションズカップを通じて得た大きなアドバンテージである。

 しかし、日本は、他方でその弱点をも世界にアピールすることとなってしまった。すなわち、①イタリアのように引いて守ると日本のペースになってしまうため、ブラジルやメキシコのように前線から激しいプレッシャーをかけるのが効果的であること、②日本の守備陣は高さと強さが足りないため、CKや外からのクロスボールへの対応に弱く、容易に失点してしまうこと、③日本の攻撃陣はパスは回せるが、点を取れるFWがおらず、MFのミドルシュート力もないため、ペナルティエリアの外側に強固な守備ブロックを敷くことにより効果的な防御が可能であることなどである。

 したがって、日本は、来るべきブラジルワールドカップにおいて、対戦国がこれらの弱点を突いてくるであろうことを想定して、残り1年間でこれらを克服しなければならない。設定されたハードルは極めて高いが、本田、香川、長友など意識の高い選手が揃っているので、チーム全員の個が高められることを期待したい。


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