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弁護士コラム・論文・エッセイ

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弁護士 門屋 徹

2015年08月01日

南米旅行記

(丸の内中央法律事務所vol.27, 2015.8.1) 

 本年6月、長めの休暇を頂きまして新婚旅行へ行って参りました。「せっかくなら二度と行けないような場所へ」ということで、行き先は南米に。主にマチュピチュ遺跡(ペルー)とイグアスの滝(ブラジル・アルゼンチン)を見て回りました。

1 マチュピチュ遺跡

 20世紀初頭にイェール大学講師ハイラム・ビンガムが発見したこの遺跡には、1日2000人以上の観光客が訪れます。「マチュピチュ」とは、厳密には遺跡自体ではなく付近一帯の山の名称で、ケチュア語で「老いた峯」を意味します。マチュピチュ山と隣り合ってワイナピチュ山(ケチュア語で「若い峯」の意)が聳え立ち、これら2つの山の間、マチュピチュ山の尾根の部分に遺跡が広がっています。

 前日に遺跡の麓の村に宿泊した私達は、翌朝シャトルバスに乗って遺跡を目指しました。つづら折りの山道を30分ほど登っていくと、遺跡の入口が見えてきます。ガイドの後について高台に上ると、ガイドブックやテレビでよく見る光景が広がっていました。石造りの建物群は遠目に見ても美しいものでしたが、近寄って見ると、石組みの緻密さに驚かされました。この石垣は「カミソリの入る隙間もない」と形容されるほど精緻に組み上げられていますが、古代インカ人は、セメントのような接着剤を使用することなく、単に石を積み上げるだけでこの石垣を作り上げる技術を有していました。因みに、用いる石の質や石組みの緻密さは建物の性質や使用者の階級によって区別されていたようで、神殿や高貴な身分の者の邸宅等に使用された石は綺麗に磨き上げられ、隙間なく積み上げられています。他方、倉庫や身分の低い者の住居等に用いられた石には凹凸が多く、積み方も粗くなっていきます。とはいえ、後者の石垣であっても、後年調査隊が修復した石垣に比べるとはるかに精緻な造りをしており、古代インカ人の技術の高さを窺い知ることができます。

 山の崖側には一面にアンデネス(段々畑)が広がっています。マチュピチュ山一帯は岩山で土がほとんど存在しなかったため、古代インカ人は畑を作るためにオリャンタイタンボという街から土を運び込みました。現在、オリャンタイタンボからマチュピチュ遺跡までの移動には、電車に約1時間半乗った後、バスに30分揺られなければなりません。このような広大な畑を作るまでにどれほどの労力と時間を要したのかを考えると気が遠くなりますが、今日、我々は古代人のおかげでこのような絶景を目にすることができます。

 遺跡散策の後、麓の村に一泊し、翌朝はワイナピチュ登山に臨みました。この山の標高は遺跡よりも300m程高く、山頂からはマチュピチュ遺跡が一望できるため大変な人気スポットですが、安全のために入山人数が1日400名(午前7時、午前10時にそれぞれ200人ずつ)に限定されており、事前の予約が必要です。我々が予約したのは午前7時の枠で、午前5時半のバスで遺跡に向かいました。登山道への入口は遺跡の中にあります。受付ゲートをくぐってなだらかな斜面を進むと、急な登山道が現れました。この道を汗だくになりながら1時間半程登り続け、何とか山頂へ。山頂から遺跡を見下ろした際の感動を言葉で表現するのは難しいですが、わざわざ地球の裏側まで足を伸ばした甲斐があったと心から感じた瞬間でした。

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背後の山が仰向けに横たわる人間の顔に見えます。鼻の部分に当たるのがワイナピチュ山です。

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崖側には段々畑が広がっています。トウモロコシ、ジャガイモ、コカ等が栽培されていたそうです。

nanbei 1.jpg「カミソリの刃も入らない」と評される石垣。


2 イグアスの滝

 世界最大の滝であるイグアスの滝は、アルゼンチンとブラジルの国境にまたがって存在しています。滝の80パーセントはアルゼンチン側にあり、間近で滝を見る場合にはアルゼンチン側を訪れるのが一般的であるため、ブラジル側に宿泊していた私達もアルゼンチン側に渡りました。

 アルゼンチン側国立公園のゲートをくぐった後は、トロッコ列車に乗ってイグアス最大の瀑布を目指します。列車を降りてイグアス川に架けられた橋を15分ほど歩くと、高く上がった水しぶきが見えてきました。目の前まで行くと、「ゴォー」という重低音が鳴り響きます。この場所は「悪魔の喉笛」と呼ばれていますが、これはこの重低音が悪魔のうなり声に聞こえるということに由来しているとのことです。足のすくむような高さから大量の水が流れ落ちていく様は壮観で、水しぶきに濡れるのも忘れて何時間でも見ていられる気がしました。

 その後、ボートで滝壺付近まで近づくボートツアーに参加するため、公園内を散策しつつ、ボートの発着場へ向かいました。足下から見上げる滝は上から見ていたときとはまた違った迫力を持っています。息が止まるほど大量の水をかぶりながら、世界最大の滝の雄大さを体感しました。

 滝の圧倒的な水量・落差、上空まで舞い上がる水しぶき、各所に現れる大小の虹、国立公園内に広がる大自然。どれをとっても素晴らしく、滞在中は感動しきりでした。かつて、セオドア・ルーズベルト元米大統領が夫婦でイグアスを訪れた際、夫人が「可哀想なナイアガラよ」と漏らしたそうですが、その気持ちも分かるような気がします。

nanbei4.jpgヘリコプター内から望む「悪魔の喉笛」。

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ブラジル側・アルゼンチン側共に、滝の周辺一帯は国立公園に指定されており、美しい自然が広がっています。

3 最後に

  マチュピチュでは広大かつ精緻な遺跡を築き上げた人々の偉大さに、イグアスでは神秘的な光景を作り出した自然の雄大さに触れる旅となりました。「二度と行けない場所へ」をテーマに旅行先を選んだはずでしたが、今は「死ぬ前に何とかもう一度」という気持ちです。

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