
2020年10月01日
(丸の内中央法律事務所事務所報No.37 2020.8.1)
新型コロナウィルス感染症の拡大により経済が大きな打撃を受ける中、政府、地方自治体、あるいは民間団体が、事業者に対する様々な支援策を打ち出しています。
このような制度を利用できるかは、事業者、特に、大企業に比べて体力の乏しい中小企業や個人事業主にとっては極めて切実な問題ですが、「そもそもどのような制度があるのか分からない」、「手続が複雑で二の足を踏んでしまう」というような声も耳にします。そこで、本稿では、これらの制度のうち、代表的なものについてざっくりとご説明したいと思います。
なお、紙幅の関係で、本稿でご紹介する制度は全体のほんの一部に過ぎず、また、本稿執筆時点(2020年7月10日)のものであることにご留意下さい。 最新の制度については、経済産業省のホームページ等をご参照下さい。
*参考:経済産業省「新型コロナウィルス感染症で影響を受ける事業者の皆様へ」
(https://www.meti.go.jp/covid-19/pdf/pamphlet.pdf)
◆持続化給付金
感染症の拡大により、特に大きな影響を受けている事業者に対し、事業全般に使える給付金を支給する制度です。対象業種も幅広く、申請手続も比較的簡易であるため、非常に利用しやすい制度であると言えるでしょう。
オンライン申請が原則ですが、インターネットを利用した申請が難しい事業者のために、「申請サポート会場」も設けられています。
また、2020年6月29日からは、「主たる収入を雑所得・給与所得で確定申告した個人事業者」、「2020年1~3月に開業した事業者」の申請も可能となり、その支給対象者が更に拡大されています。
□ 給付額
法人200万円、個人事業者100万円
ただし、昨年1年間の売上からの減少分が上限とされています。
*売上減少分の計算方法
前年の総売上(事業収入)-(前年同月比▲50%月の売上×12ヶ月) |
例)2019年の総売上が1000万円、2019年1月の売上が80万円、2020年1月の売上が40万円の個
人事業主の場合・・・
1000万円-40万円×12ヶ月=520万円
520万円>100万円
→上限100万円が支給される。
□ 主な支給要件
①新型コロナの影響でひと月あたりの売上が前年同月比で50%減少している事業者であること
②2019年以前から事業収入(売上)を得ており、今後も事業を継続する意思がある事業者であること
③法人の場合は
ⅰ)資本金の額または出資の総額が10億円未満
又は
ⅱ)ⅰ)の定めがない場合、常時使用する従業員の数が2000人以下である事業者であること
◆家賃支援給付金
2020年5月に発令された緊急事態宣言の延長等により、売上が急激に減少した事業者に対し、地代・家賃(賃料)の負担を軽減するために支給される給付金です。主要な固定費の1つである賃料の負担を軽減することができる点で、非常に有用です。
2020年7月14日から申請が開始され、ネット申請が原則ですが、申請サポート会場も設けられる予定です。
□ 給付額・給付率
申請時の直近の支払賃料(月額)に基づいて算出される給付額(月額)の6ヶ月分に相当する額。
ただし、法人は600万円、個人事業者は300万円が上限とされています。
*ひと月当たりの給付額の計算方法
支払賃料など | 給付額 | |
法人 | 75万円以下 | 支払賃料など×2/3 |
75万円を超える |
75万円以下の支払賃料等の2/3(50 + 75万円を超える金額×1/3の額 |
|
個人事業者 | 37.5万円以下 | 支払賃料など×2/3 |
37.5万円を超える |
37.5万円以下の支払賃料等の2/3(25 37.5万円を超える金額×1/3の額 |
例)個人事業主で直近の賃料などの支払いが30万円である場合
30万円×2/3×6ヶ月分=60万円
60万円<300万円
→60万円を支給
□ 給付対象者
テナント事業者のうち、中堅企業、中小企業、小規模事業者、個人事業者等であって、2020年5月~12月において、以下のいずれかに該当する者。
①いずれか1ヶ月の売上高が前年同月比で50%以上減少している。
②連続する3ヶ月の売上高が前年同月比で30%以上減少している。
◆雇用調整助成金の特例措置
雇用調整助成金とは、経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた事業主が、労働者に対して一時的に休業、教育訓練又は出向を行い、労働者の雇用維持を図った場合に、休業手当等の一部を助成する制度です。
新型コロナウィルス感染症の拡大を受け、令和2年4月1日から9月30日まで(※)は「緊急対応期間」とされ、助成金の支給要件や手続が大幅に緩和されています。代表的な点を挙げるとすれば、次の通りです。
※令和2年11月27日現在、令和2年12月31日までに延長されています。また、厚労省は、令和3年2月まで再延長する方針を固めました。
□ 助成額の上限額の引き上げ
緊急対応期間内の休業・教育訓練について、企業規模を問わず、対象労働者1日1人当たりの助成額の上限額が、これまでの8,330円から15,000円に引き上げられました。
□ 解雇等をせずに雇用を維持している中小企業への助成率の引上げ
解雇等をせずに雇用を維持している中小企業の休業・教育訓練に対する助成率が、100%に引き上げられました。
□ 雇用保険被保険者以外の者の休業等
これまで助成金を受給することができるのは、雇用保険の被保険者についてのみでしたが、被保険者以外の労働者も支給対象とされました。
□ 申請手続等
これまで認められていなかったオンライン申請も可能とされ、休業等計画届出の提出も不要とされています。
融資については、資金繰りだけでなく、設備投資や販路開拓を目的とするものなど多数の制度が用意されています。政府系金融機関によるものと、民間金融機関によるものとで制度内容が異なりますが、概ね、各種融資制度と利子補給制度を組み合わせて利用することで、実質無利子・無担保で融資を受けることができます。
紙幅の関係で全てを詳細に説明することはできませんので、以下、代表的な制度の概要を述べます。
◆セーフティネット貸付
社会的・経済的環境の変化によって資金繰りが困難になった事業者に対する融資制度です。売上高等の要件がないため、今後の影響が見込まれる事業者も対象となります。
◆新型コロナウイルス感染症特別貸付
信用力や担保に依らず、一律金利(融資後3年間は基準金利を0.9%引下げ)で融資を行う制度です。
◆新型コロナウィルス対策マル経融資
小規模経営者経営改善資金融資(マル経)が、商工会議所・商工会・都道府県商工会連合会の経営指導員による指導を受けた小規模事業者に対し、一律金利(融資後3年間は基準金利を0.9%引下げ)無担保・無保証人で融資を行う制度です。
◆危機対応融資
商工中金が、信用力や担保に依らず、一律の金利(融資後3年間は基準金利を0.9%引下げ)で融資を行う制度です。
◆特別利子補給制度
新型コロナウイルス感染症特別貸付、新型コロナウィルス対策マル経融資、若しくは危機対応融資により借入れを行った事業者のうち、売上が特に減少した者の利子の補給を行う制度です。なお、公庫等の既往債務の借り換えも実質無利子化の対象となります。
◆セーフティネット保証4号・5号
経営の安定に支障が生じている中小企業者に対し、その業種等に応じて、一般保証とは別枠(最大2.8億円)で、保証を受けられる制度を指します。
◆危機関連保証
全国、全業種の事業者を対象に、売上高が前年同月比▲15%以上減少している中小企業、小規模事業者に対し、セーフティネット保証とは更に別枠で、保証(最大2.8億円)を受けられる制度です。セーフティネット保証と併せて、最大5.6億円の保証を受けることが可能になります。
◆保証料・利子減免制度
セーフティネット保証、危機関連保証を受けた事業者に対し、保証料と利子の減免を認める制度です。
緊急事態宣言が解除されたとはいえ、コロナ禍はまだまだ収束にはほど遠い状況にあります。
上述の制度はほんの一部であり、日々更新されていますので、制度の利用に当たってご不明な点がございましたら、是非一度お問い合わせ下さい。