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ホーム弁護士コラム・論文・エッセイ門屋弁護士著作 一覧 > 取適法(改正下請法)の適用対象について
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弁護士 門屋 徹

2026年06月18日

取適法(改正下請法)の適用対象について

(丸の内中央法律事務所報No.48, 2026.1.1)

【はじめに】

令和7年5月16日、下請法が、「中小受託取引適正化法」(取適法)に改められ、令和8年1月1日から施行されることになりました(ただし、一部の規定は交付の日である2025年5月23日から施行)。

新法による規制については、丸の内中央法律事務所報No.47号において、重富弁護士が詳細に解説しているところですが(https://www.mclaw.jp/column/shigetomi/shitaukeho-kaisei.html)、本稿では、具体的にどのような取引に取適法が適用されるのか、その要件について概観したいと思います。

【取適法の適用要件】

 ある取引が、取適法の適用対象となる中小受託取引に該当するかは、2つの基準によって判断されます。

 1つめは取引内容、2つめは資本金又は従業員の規模です。

【取引内容】

 取り適法の適用対象となる取引は、大きく次の5つに大別されます。

⑴ 製造委託

部品を販売し、又は物品の製造を請け負う事業者が、規格、品質、形状、デザインなどを指定して、他の事業者に物品の製造や加工などを委託することを指します。

 *「物品」とは動産のみを指し、不動産は対象外とされます。

 例)自動車の販売業者が、自動車やその部品等の製造を外部業者に委託する場合。

⑵ 修理委託

物品の修理を請け負う事業者が、その修理を保管事業者に委託したり、自社で使用する物品を自社で修理している場合に、その修理の一部を他の事業者に委託することを指します。

 例)自動車の修理工場を営む事業者が、修理行為の全部又は一部を外部業者に委託する場合。

⑶ 情報成果物製造委託

ソフトウェア、映像コンテンツ、各種デザインなどの情報成果物の提供や作成を行う事業者が、他の事業者にその作成作業を委託することを指します。

「情報成果物」とは、次の通り大別されます。

 ①プログラム(ゲームソフト、家電製品の制御プログラム等)

 ②映画、放送番組その他映像又は音声その他の音響により構成されるもの(アニメーション、ラジオ番組等)

 ③文字、図形若しくは記号若しくはこれらの結合又はこれらと色彩との結合により構成されるもの(設計図、商品・容器デザイン、家電製品の取扱説明書等)

⑷ 役務提供委託

他社から運送やビルメンテナンスなどのサービスの提供を請け負う事業者が、請け負ったサービスの提供を他の事業者に委託することを指します。

 *建設業法に規定される建設業を営む事業者が請け負う建設工事は対象外とされます。

⑸ 特定運送業務

事業者が、販売する物品、製造を請け負った物品、修理を請け負った物品又は作成を請け負った情報成果物が記載されるなどした物品をその取引の相手方(当該相手が指定する者を含みます。)に対して運送する場合に、その運送の行為を他の事業者に委託することを指します。

 例)作成を請け負ったデザインに基づいて製造されたペットボトルについて、発注者への輸送を外部業者へ委託する場合。

【資本金又は従業員の規模】

取適法は、取引を委託する事業者と受注する事業者の資本金の額又は従業員の数によって、「委託事業者」又は「中小受託事業者」を定義します。

その基準は、取引内容に応じて定められています。

◆パターン1

まず、取引内容が、製造委託、修理委託、情報成果物委託(プログラムのみ)、情報提供委託(運送倉庫保管、情報処理(*1))、特定運送委託の場合、次の場合に取適法が適用されます。

①資本金3億円を超える事業者が、資本金3億円以下(個人を含む)の事業者に委託する場合

②資本金1千万円から3億円以下の事業者が、資本金1千万円以下(個人含む)の事業者に委託する場合

③常時使用する(*2)従業員が300人を超える事業者が、常時使用する従業員300人以下(個人含む)の事業者に委託する場合

*1 「情報処理」とは、データ入力、データ演算、データ分析など、成果物の作成よりも単純作業に重きが置かれるような場合を指します。

*2 「常時使用」するとは、事業者が使用する労働者のうち、日雇い労働者(1か月を超えて継続的に使用される者を除く。)以外の者を指します。これは、賃金台帳の調製対象となる従業員と同義です。

◆パターン2

次に、取引内容が、情報成果物委託(プログラム以外)、情報提供委託(運送倉庫保管、情報処理以外)場合、次の場合に取適法が適用されます。

①資本金5千万円を超える事業者が、資本金5千万円以下(個人を含む)の事業者に委託する場合

②資本金1千万円から5千万円以下の事業者が、資本金1千万円以下(個人含む)の事業者に委託する場合

③常時使用する従業員が100人を超える事業者が、常時使用する従業員100人以下(個人含む)の事業者に委託する場合

図解すると、次の通りとなります。

取適法・規模要件.jpg

公正取引委員会作成資料 「2026年1月施行!~下請法は取へ適法~ 改正ポイント説明会」20ページより抜粋

【注意すべき事項】

このように、取引内容に応じて、取適法が適用されるための要件も変わってきますので、自社の委託する業務が上記のいずれに該当するかは、慎重に検討する必要があります。

その他、次の点について注意するとよいでしょう。

資本金基準と従業員基準の両方の要件を満たす場合には、資本金基準が優先的に適用されます。すなわち、従業員基準は資本金基準が適用されない場合にのみ問題となります。

取引先がグループ会社の一員である場合でも、上記各基準は法人単位で判断され、グループ全体の資本金や従業員数を合算することはしません。

従業員基準は、委託時の従業員数を以て適用されます。そのため、委託時に従業員基準を満たした場合には、その後に従業員数が変動したとしても、取適法の適用は免れません。

委託事業者において、取引相手の従業員数を確認すべき義務までは認められないとされていますので、例えば、賃金台帳の写しの閲覧までは不要です。

とはいえ、結果的に従業員基準を満たしていたにもかかわらず、取適法の規定を遵守していないとすれば、各種指導や処分を受ける可能性があるため、契約に際し、従業員の数を確認しておくことが無難かと思われます。

因みに、取引の相手方が従業員数を誤って回答していた結果、取適法の適用がないと誤信したようなケースでは、同法違反の問題が生じたとしても、行政として直ちに勧告等を行うものではないとされています(前掲公正取引委員会説明資料24ページ参照)。

【さいごに】

取適法の適用についてご説明しましたが、これらはあくまで概要です。取適法に違反した場合、行政上の制裁(勧告、指導、公表等)を受けたり、悪質と判断されれば刑事罰を科されるリスクもあります。

自社の取引に同法が適用されるか、適用されるとしてどのような義務が課されるのかについては、慎重に判断する必要がありますので、不安な場合には、一度弁護士に相談されることをお勧めします。

以 上

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