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弁護士コラム・論文・エッセイ

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弁護士 園 高明

2006年01月01日

自動車保険あれこれ

(丸の内中央法律事務所報vol.8, 2006.1.1)

質問

 現在の交通事故問題の解決には自動車保険の知識が欠かせないと聞きました。自動車保険の基本的なことを教えてください。

回答

「自賠責保険と任意保険」

 自動車保険には大きく分けて自賠責保険と任意保険のふたつがあることは皆様ご存じでしょう。
 自賠責保険は、新車購入時あるいは車検時に車検期間について自賠責保険料を負担して契約されることになっています。
 また、中古自動車の場合は一般的には車両代金の中に残存車検期間分の自賠責保険料は含まれています。自賠法により契約が義務づけられていることから、強制保険とも言われます。任意保険は、皆様が損害保険会社の代理店と個別に契約して加入するもので、メディアで宣伝されるのもこちらの保険です。皆様は、自賠責保険は3,000万円(死亡の場合)しか出ないから、賠償額がそれを超えたときのために任意保険に入っているという意識が強いでしょう。確かに、任意保険の主たる意義がそこにあるのは間違いありませんが、平成9年の保険自由化以来、各保険会社が、いろいろな自動車保険を販売しているので任意保険の内容も多様化しています。
 交通事故の被害者になった場合、人身の傷害について、通常は任意保険会社の担当者が交渉に出てきます。しかし、自賠責保険については、任意保険のような保険会社の示談代行の制度はなく、直接自賠責保険会社に対し、被害者請求をすることになります。そうすると被害者は、傷害の自賠責分120万円は直接自賠責保険会社に請求し、それを超えた分は任意保険会社に請求するということになり、とても面倒なことになるので、現在は「一括払い制度」といって、任意保険会社が自賠責分も支払うようになっています。被害者に支払われた自賠責分は任意保険会社が自賠責保険会社に求償します。従って、被害者は、任意保険会社の担当者と賠償に関して自賠責保険分も含めて交渉できるわけです。
 しかし、加害者が任意保険に加入していない場合には、示談を担当する任意保険会社がないことになりますから、被害者は直接加害者と交渉するか、自賠責保険の範囲で、自賠責保険会社に被害者請求をするほかなくなります。
 後遺障害が残ったかどうかの判断も、基本的には自賠責保険に関して定めた後遺障害等級表に基づいて、損害保険料率算出機構という保険会社とは別の機関が認定をしていますが、この等級の判断が、賠償額に影響し、上積み保険としての任意保険の支払にも直接反映するので、損害賠償の実務では、過失相殺と並んでもっとも大きな争点となります。
 なお、自賠責保険は人身傷害を受けた場合の保険ですから、物損について支払われることはありません。

「任意保険の内容」

 任意保険は、基本的には、自らの自動車を運転して加害者となった場合の賠償責任を果たすための賠償資力を担保する対人賠責保険、対物賠責保険が中心ですが、自分が他人の車を運転していて起こした事故、事故の被害者になった場合にも役に立つ保険が組み込まれています。皆様も普段余り意識している訳ではないでしょうからここで紹介しておきます。
 自損事故保険は、単独事故の運転者などのように第三者に損害賠償請求できない場合に支払われる保険で、後遺障害保険金、死亡保険金、介護費用保険金、医療保険金が支払われます。
 例えば、交差点の信号機が青対赤で衝突し、赤信号の運転者が死亡した場合、一応、青信号の車両の所有者(運転者)の責任が問題となるわけですが、青信号の車両の運転者について自賠法3条の免責要件としての無過失が立証されると、赤信号を無視した車両の運転者は誰にも損害賠償の請求ができないので、このような場合に、任意保険の自損事故保険を支払うことにしたものです。
 搭乗者傷害保険は、自動車に搭乗中に受けた事故によって傷害を受けた場合に、死亡保険金、後遺障害保険金、医療保険金などが支払われます。例えば、高速道路で渋滞し止まっていたところ追突され重傷を負ってしまった場合、乗っていた車の運転者に過失はありませんが、搭乗者傷害保険金は支払われ、これとは別に追突した後続車に損害賠償の請求ができます。後続車への損害賠償請求では、乗っていた車の搭乗者傷害保険金を受けとっていても、その分が損益相殺されて賠償額が減額されることはありません。
 他車運転危険補償(担保)特約は、たまたま他人の自動車を運転していたときに事故を起こしたが、その自動車に任意保険がついていない場合(或いはついていても年齢条件などでその車の任意保険が使えない場合)に、自分の所有する自動車の保険によって他人の自動車を運転して起こした事故についての対人、対物の賠償責任を担保するものです。
 無保険車傷害保険は、無保険自動車の所有、使用または管理に起因して被保険者が死亡し、または身体が害されその直接の結果として後遺障害が発生した場合、その加害者の賠償資力が充分でないときに自らが加入している任意保険会社が損害賠償金に相当する金額を保険金として支払うものです。この無保険とは任意保険がないという意味で、自賠責保険しか入っていない車によって被害を受け、加害者の賠償資力が充分ないときに使用します。
 人身傷害補償保険は、被保険者が身体に傷害を被ることによって被保険者が受けた損害について人身補償条項(損害賠償請求の基準とは一致しない)に従い保険金を支払うものです。人身傷害補償保険は、平成9年の保険自由化後に発売された新保険商品で、無保険者傷害保険が、あくまでも損害賠償制度を前提とし実損を賠償するものであるのに対し、人身傷害補償保険は、傷害保険の性格が強く、被害者の過失により支払額が減額されない点に特徴があります。
 被害者は加害者に対し損害賠償を請求することも、自分の人身傷害補償保険から支払を受けることもできますが、抽象的には、一方から支払があればその限度でもう一方の請求権は消滅するという関係になります。しかし、双方の支払基準は同じではなく、人身傷害補償保険は過失相殺しないとしていることから、本来の賠償請求では過失相殺される場合、保険金の支払いが賠償のどの部分の支払に当てられ、保険会社は加害者にどの範囲で求償できるのかなどが議論されています。
 また、人身傷害補償担保特約は、自動車事故の被害者になった場合だけでなく、電車事故や駅構内での事故、あるいは広く乗り物に乗っていた場合の事故も保険事故としててん補の対象とし、あるいは、故意による犯罪被害にあった場合もてん補の対象としている場合など保険会社や商品内容によりてん補される事故の範囲が異なります。
 弁護士費用補償(担保)特約 自分が加害者になった場合には、民事裁判になっても、任意保険会社の弁護士が代理人となって裁判にあたってくれますが、自動車事故で被害者となった場合は基本的には、加害者(保険会社)との交渉、裁判は自ら行う必要があるわけです。しかし、このような場合に被害者自らが交渉や裁判を行うのは荷が重く、弁護士に委任しなければならない場合も多いでしょう。このような場合、その弁護士費用を一定の限度で支払ってくれる特約も付帯的なサービスとして登場しています。
 車両保険は、自損事故の場合のみでなく、加害者がいる場合にも使えます。加害者がなかなか賠償してくれないので、仕方なく自分の車両保険を使って修理した場合に、次回更新時の保険料は割増になるのですが、この割増分を損害賠償として請求できないかという質問がよくあります。賠償してもらいたい気持ちはわかりますが、加害者に賠償請求するか、自らの保険を使うかは被害者の選択の問題であり、自らの車両保険を使いその結果保険料が増加しても、増加分を加害者に転嫁できないとして、損害賠償を認めないのが一般的です。
 年齢条件と保険料 最近は任意保険に組み込まれる保険の内容も、リスクを細分化して保険料を細かく設定している傾向にありますが、何処まで危険を担保してくれる保険契約なのかを理解して契約することが大切です。
  運転者の年齢条件が保険料に大きな影響を与えることはご存じの通りです。例えば、全年齢担保なら、何時、何歳の人が運転しても心配はありませんが、保険料が高くなるので、例えば、20歳の息子が同居している場合、基本的には通常の使用を考えて年齢条件を35歳(30歳)未満不担保にして、同居の親族について全年齢を担保するという契約にすれば、その分保険料は安くなります。
 しかし、この契約では、大学生の息子が同級生の友人と一緒にドライブに行き、その友人が運転していたときの事故を考えてみると、特別な約款・特約(例えば、交代運転の場合に年齢を問わず担保する臨時運転者担保特約)がなければ担保されないことになります。つまり、この場合、運転していたのが息子の友人でも、自動車の所有者は自賠法3条により賠償責任を負うことになりますが、任意保険金は支払われないことになります。
  このように、任意保険契約を締結する場合には、万が一の使用状態を念頭に置いてどこまでカバーしている契約かを検討する必要があります。

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