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ホーム弁護士コラム・論文・エッセイ園弁護士著作 一覧 > <交通事故で損害賠償をできる人は?>
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弁護士 園 高明

2008年01月01日

<交通事故で損害賠償をできる人は?>

園高明弁護士は2023年(令和5年)3月をもちまして当事務所を退所いたしましたが、本人の承諾を得て本ブログの掲載を継続させていただいております。

(丸の内中央法律事務所報vol.12,2008.1.1)

質問

 交通事故にあった場合に、損害賠償を請求できるのはだれですか。直接の被害者以外に賠償請求できる人はいるのでしょうか。

回答

 交通事故にあった場合、事故によって直接身体を負傷した被害者本人が損害賠償請求できるのは当然ですが、それ以外にどのような人が請求できるのか、例として、会社員の夫A、専業主婦の妻B、未成年の子供C3人の家族の場合を考えてみましょう。

「被害者が死亡した場合」

 被害者が死亡した場合には、相続人が被害者の損害賠償請求権を相続するという構成がとられ、被害者の相続人が損害賠償請求権を取得することになります。

(1)Aが死亡した場合

 事故にあったAが死亡した場合、Aは損害賠償請求権の帰属主体ではなくなります。B、Cは直接的には身体の負傷はありません。しかし、Aの給料によって生活が成り立っていたのに生活費を稼いでくれていたAが亡くなるわけですから、扶養を受ける権利を侵害されているし、体に傷はなくても精神的には大きな打撃を受けるので、慰謝料は請求できないとおかしいということになります。
 この場合に、B、Cの受けた経済的損害を端的に扶養利益の侵害として構成して逸失利益を計算する考えもあり、欧米ではこのような構成が主流ですが、前にご説明(vol.5 2005.1.1)したように、日本では、相続構成をとっており、Aが生きていれば稼いでたであろう利益を計算し、それからAが生きていれば消費したであろうAの生活費を控除した金額をB、Cが相続するという構成をとっています。したがって、逸失利益の請求権者は基本的に死亡した被害者の相続人B,Cということになります。
 次に慰謝料ですが、現在では、死亡した被害者本人にも慰謝料請求権が発生し、死亡によりB、Cに相続されるという構成をとっています。また、被害者が死亡した場合の慰謝料請求権者について、民法711条は、死亡した被害者の父母、配偶者、子をあげており、Aの父母が存命なら慰謝料請求が可能です。
 この場合の死亡慰謝料の総額は現在2800万円が基準(vol.3 2004.1.1を参照)とされていますが、これをこの4人でどう分けるかについては明確な基準はありません。被害者本人分2000万円をB、Cが2分の1ずつ相続し、親族固有の慰謝料として、B300万円、C200~300万円で、Aの父母の分は合計200~300万円というあたりが現在の一応の目安と言えるかもしれません。

(2)Bが死亡した場合

 この場合も、考え方はAが死亡した場合と同じですが、慰謝料請求できる父母は当然Bの父母になりますし、慰謝料の金額は、一家の稼ぎ手であるAが死亡した場合に比べ多少金額が低くなり、総額で2400万円が一応の基準となっています。

(3)Cが死亡した場合

 この場合も、考え方は基本的に同じです。しかし、そもそもこのように子が親より先に死亡した場合、相続構成により子供の逸失利益を親が相続するというのは実態に反し、おかしいのではないかとの考えもあります。
 つまり、親が子供の生涯にわたって稼いだ財産を相続することはないのが通常で、このような場合には、親に慰謝料だけを認めれば足りるとの考えもあるところです。
 しかし、親が死んだ場合は相続を認めるのに、子が死んだ場合は相続を認めないという理屈が成り立ちにくいことから、この場合もCの逸失利益をA、Bが相続するという構成で逸失利益を計算しています。
 慰謝料の請求権者はA、Bのみですので、一応の基準とされている子供死亡の場合の慰謝料額2200万円をA、Bが平等に取得すると考えていいでしょう。A、Bの父母は、孫のCについて民法711条の慰謝料請求権者ではありませんので、一般的には、被害者の祖父母は、孫の死亡に伴う慰謝料を請求していません。
 なお、加害者の飲酒運転等の悪質な違反行為が原因となっている場合は、基準額2200万円よりかなり増額して3000万円以上の慰謝料を認めている裁判例も少なくありません。

(4)民法711条以外の者の慰謝料請求の可否

 前記の通り、被害者が死亡した場合、民法711条に規定された慰謝料請求権者は、被害者の父母、配偶者及び子ですが、最高裁は「711条の規定は、限定的に解すべきものではなく、文言上同条に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうるべき身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求しうる。」とし、歩行困難の身体障害をかかえた夫の妹につき、義理の姉を唯一の頼りとしていたとして固有の慰謝料請求権を認めました。(最判昭和49年12月17日 民集28巻10号2040頁)
 したがって、民法711条の類推適用により、祖父母にも慰謝料請求が認められる余地もあります。例えば、孫と同居し、共働きの息子夫婦の代わりに事実上面倒をみていた場合など、祖父母にも固有の慰謝料請求を認めて良いのではないでしょうか。
 なお、両親と同居していた被害者の兄弟に固有の慰謝料請求を認めた裁判例もあります。

 事故にあったAが死亡した場合、Aは損害賠償請求権の帰属主体ではなくなります。B、Cは直接的には身体の負傷はありません。しかし、Aの給料によって生活が成り立っていたのに生活費を稼いでくれていたAが亡くなるわけですから、扶養を受ける権利を侵害されているし、体に傷はなくても精神的には大きな打撃を受けるので、慰謝料は請求できないとおかしいということになります。
 この場合に、B、Cの受けた経済的損害を端的に扶養利益の侵害として構成して逸失利益を計算する考えもあり、欧米ではこのような構成が主流ですが、前にご説明(vol.5 2005.1.1)したように、日本では、相続構成をとっており、Aが生きていれば稼いでたであろう利益を計算し、それからAが生きていれば消費したであろうAの生活費を控除した金額をB、Cが相続するという構成をとっています。したがって、逸失利益の請求権者は基本的に死亡した被害者の相続人B,Cということになります。
 次に慰謝料ですが、現在では、死亡した被害者本人にも慰謝料請求権が発生し、死亡によりB、Cに相続されるという構成をとっています。また、被害者が死亡した場合の慰謝料請求権者について、民法711条は、死亡した被害者の父母、配偶者、子をあげており、Aの父母が存命なら慰謝料請求が可能です。
 この場合の死亡慰謝料の総額は現在2800万円が基準(vol.3 2004.1.1を参照)とされていますが、これをこの4人でどう分けるかについては明確な基準はありません。被害者本人分2000万円をB、Cが2分の1ずつ相続し、親族固有の慰謝料として、B300万円、C200~300万円で、Aの父母の分は合計200~300万円というあたりが現在の一応の目安と言えるかもしれません。

(2)Bが死亡した場合

 この場合も、考え方はAが死亡した場合と同じですが、慰謝料請求できる父母は当然Bの父母になりますし、慰謝料の金額は、一家の稼ぎ手であるAが死亡した場合に比べ多少金額が低くなり、総額で2400万円が一応の基準となっています。

(3)Cが死亡した場合

 この場合も、考え方は基本的に同じです。しかし、そもそもこのように子が親より先に死亡した場合、相続構成により子供の逸失利益を親が相続するというのは実態に反し、おかしいのではないかとの考えもあります。
 つまり、親が子供の生涯にわたって稼いだ財産を相続することはないのが通常で、このような場合には、親に慰謝料だけを認めれば足りるとの考えもあるところです。
 しかし、親が死んだ場合は相続を認めるのに、子が死んだ場合は相続を認めないという理屈が成り立ちにくいことから、この場合もCの逸失利益をA、Bが相続するという構成で逸失利益を計算しています。
 慰謝料の請求権者はA、Bのみですので、一応の基準とされている子供死亡の場合の慰謝料額2200万円をA、Bが平等に取得すると考えていいでしょう。A、Bの父母は、孫のCについて民法711条の慰謝料請求権者ではありませんので、一般的には、被害者の祖父母は、孫の死亡に伴う慰謝料を請求していません。
 なお、加害者の飲酒運転等の悪質な違反行為が原因となっている場合は、基準額2200万円よりかなり増額して3000万円以上の慰謝料を認めている裁判例も少なくありません。

(4)民法711条以外の者の慰謝料請求の可否

 前記の通り、被害者が死亡した場合、民法711条に規定された慰謝料請求権者は、被害者の父母、配偶者及び子ですが、最高裁は「711条の規定は、限定的に解すべきものではなく、文言上同条に該当しない者であっても、被害者との間に同条所定の者と実質的に同視しうるべき身分関係が存在し、被害者の死亡により甚大な精神的苦痛を受けた者は、同条の類推適用により、加害者に対し直接に固有の慰謝料を請求しうる。」とし、歩行困難の身体障害をかかえた夫の妹につき、義理の姉を唯一の頼りとしていたとして固有の慰謝料請求権を認めました。(最判昭和49年12月17日 民集28巻10号2040頁)
 したがって、民法711条の類推適用により、祖父母にも慰謝料請求が認められる余地もあります。例えば、孫と同居し、共働きの息子夫婦の代わりに事実上面倒をみていた場合など、祖父母にも固有の慰謝料請求を認めて良いのではないでしょうか。
 なお、両親と同居していた被害者の兄弟に固有の慰謝料請求を認めた裁判例もあります。

2 被害者が傷害を負った場合

 物の時価(取引価格)とは、「同一の車種、年代、型、同程度の使用状態、走行距離等自動車を中古車市場において取得するに要する価額によって定める」(最判昭和49年4月15日 民集28巻3号385頁)とされています。時価はどうやって調べるかと言いますと、一般的にはオートガイド社の自動車価格月報(通称レッドブック)によっています。自動車の価格には、ユーザーがそれまで使っていた自動車を下取りに出した場合の下取価格、自動車業者が他の業者に販売する卸価格、業者が仕入れた自動車に整備を加え店舗で販売する場合の販売価格の三種類があり、レッドブックにも三種類の価格が記載されており、その販売価格が時価にあたります。

「飲酒運転周辺者への罰則の新設」

 今度は、子のCが負傷した場合を考えてみましょう。この場合に損害賠償を請求できるのは、基本的には被害者本人だけです。例えば、子Cの治療費などを父親Aが負担しても、損害はCに発生すると考えて、賠償請求者はCになり、親権者のA及びBはCの法定代理人として損害賠償請求することになります。
 また、親が子の付き添い等のために休業しても、休業損害という名目ではなく、付き添いに伴う看護費用としてCの損害として賠償請求するのが一般的な方法です。
 これは、法律論としては、間接被害者論といって、直接の被害者以外の第三者は原則として損害賠償請求できないという一般論から導かれるのです。
 例えば、O会社の所属タレントが事故で重症を負い仕事ができない場合、所属会社にとって被害者が唯一のタレントでタレントの個人会社とみられるような場合は別として、何人ものタレントを雇っているような会社では、タレントの休業に伴う会社の損害は賠償請求できず、タレント個人が休業による損害を賠償請求できるにすぎないのです。
 したがって、被害者が傷害を受けた場合に損害賠償できる人は、原則として負傷した本人だけということになります。もっとも子供の看護に伴う休業損害に関しては、このような一般論を考慮せず、近親者の休業損害として賠償を認めた裁判例もあります。
 なお、傷害に伴う近親者慰謝料に関して、最高裁は、「不法行為により身体を害された者の母が、そのために生命を害された場合にも比肩しうる精神的苦痛を受けた場合には、民法709,710条により慰謝料を請求できる。」(最判昭和33年8月5日 民集12巻12号1901頁)としていることから、被害者本人が重症を負い、重度の後遺障害が残った場合などには、A、BにCとは別に親族固有の慰謝料請求が認められます。近親者慰謝料額に基準はありませんが、脳挫傷による精神神経系統の障害として後遺障害等級表1級の後遺障害が残った場合、入通院慰謝料の外、後遺障害分としてC被害者本人分2800万円、A、Bそれぞれに300万円をプラスして総額3400万円程度の慰謝料が認められることも充分に考えられます。

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