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弁護士コラム・論文・エッセイ

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弁護士 園 高明

2021年09月16日

高齢者の自動車運転事情

園高明弁護士は2023年(令和5年)3月をもちまして当事務所を退所いたしましたが、本人の承諾を得て本ブログの掲載を継続させていただいております。

(丸の内中央法律事務所事務所報No.39, 2021.8.1)

人生最後の車選び

 私も、70歳が近くなり運転に際しても運転支援があったほうが安全かとか、そろそろ人生最後の車選びを考えるようになってきました。
食通の人は人生最後の一皿、ワイン通の人は人生最後に飲むべきワインなどと言ってあれこれ思いを巡らせるようです。もっとも、このことを考えるのはまだ元気なうちなので、実際そのときになれば優雅に思いを巡らす余裕はないかもしれません。車好きも最後に乗る車といってしまうと松任谷正隆氏のJAFメイト誌6月号の記事のように救急車か霊柩車になりそうなので、車好きが最後に手に入れる車として考えるのですが、たいていの場合は、新規の車購入の言い訳の場合が多く、人生最後のつもりの車が複数になってしまう人も珍しくないように思います。
 私にとっては、クラシックフェラーリやクラシックポルシェはあこがれではありますが、財力はもとより体力を考えると新しい車が現実的だとは思っています。日常運転するには運転支援はあったほうが安全だしミスをカバーしてくれるのは心強いのですが、スポーツカーに魅せられてきた身としては、最後にそういう車を選ぶのは抵抗があります。これはこの次の車選びかな(結局最後の車選びの先送り)などと考えてしまいます。この話をしだすと止めどもなくなり個人的な話題に堕してしまうので、本稿では高齢者にまつわる道交法について触れてみます。

高齢者マーク

 正式には高齢者運転者標章といい、以前は橙色と黄色の紅葉(もみじ)マークでしたが、紅葉マークの二色に濃淡二色の緑を加えた四つ葉マークが10年ほど前から使われるようになってきました。
 もともとの高齢者マークは、75歳以上の運転者は高齢者マークを付けることが求められ、70歳以上75歳未満の運転者は、加齢に伴って生ずる身体機能の低下が自動車の運転に影響を及ぼすおそれがあるときに高齢者マークをつけることが求められるものでしたが、高齢運転者標識表示義務に関する当面の措置によってこれらの義務は努力義務とされています。従って、75歳以上の高齢者も加齢により身体機能が低下し運転に影響を及ぼすおそれのある70歳以上の高齢者も、高齢者マークを貼らなくても罰則を科せられることはありません。
 一方、高齢者マークを貼っている車は、初心者マークを貼っている車と同様に周りの車に対し道交法上保護されており、無理な幅寄せ、割り込みを行った運転者には反則金(普通車・二輪車6000円、大型車7000円)及び違反点数1点が課されます。

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紅葉マーク(左)と四つ葉マーク(右)

高齢者講習・認知機能検査

 自動車運転免許は、自動車を運転して安全な一定の能力があることを前提に与えられるものですが、年齢とともに運転に必要な能力が衰えてくることは避けられません。運転免許更新期間満了日(誕生日の1か月後の日)までに70歳から74歳を迎える人は、高齢者講習を受ける必要があります。高齢者講習は、東京都では、鮫洲運転免許試験場、府中運転免許試験場及び都内45か所の教習所で実施されており、座学・運転適性検査のほか60分の実車が行われますが、運転免許試験のように実車で落とされることはありません。
 運転免許更新期間満了日までに75歳以上を迎える人は、高齢者講習の前に認知機能検査が義務付けられています。認知機能検査は、記憶力や判断力を測定する検査で、時間の見当識(検査時の年月日、曜日、時間)、手がかり再生(一定のイラストを記憶し、他の課題をこなした後記憶しているイラストを再生する)、時計描写(時計の文字盤を描きその文字盤に指定された時刻を指す針を描く)となっています。
 認知機能の結果は、①「記憶力・判断力が低くなっている」②「記憶力・判断力が少し低くなっている」③「記憶力・判断力に心配がない」という三段階で判定されます。
 この結果を踏まえ高齢者講習が実施されますが、①の結果の人は臨時適性検査を受けるか、医師の診断書を提出する必要があります。認知症と判断されれば聴聞手続きを経たうえ免許停止、取消しがなされることになっていますが、実際に免許停止、取消しに至る場合はあまりないようです。

道路交通法改正

 近時は、高齢者による悲惨な事故あるいは逆走など異常な運転が繰り返し報道され、75歳以上の高齢者で一定の違反歴のある人に対し運転技術検査を実施し、検査結果が基準に達しなければ免許の更新ができないとする道交法の改正案が成立し、来年には同制度が実施されることになっています。詳細は検討中だと思いますが、自動車は、高齢者にとっては移動に不可欠な道具という面があり、高齢者の移動の自由の保障と一般予防的な安全対策という二律背反的な要素をどう調整するのか、危険運転行為のように非難可能性で割り切れない問題を含んでいるように思います。また、検査結果に絡んで運転支援車(セーフティサポートカー)に限定した免許制度の創設も議論になっていますが、運転支援車で防げる事故は限定的ですし、75歳以上の高齢者の収入、購入費用の問題もあり議論は煮詰まっていないようです。

終わりに

 最近は、コロナウィルスの感染への不安から車移動を原則としていますが、楽しみのための外食、ドライブの機会もありません。コロナウィルスの心配がなくなったときに備えて、食事とワインと車について空想しておくことにします。

 

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