


2026年06月18日
(丸の内中央法律事務所報No.48, 2026.1.1)
私は、母校である学校法人芝学園(東京タワーの真下に位置する芝中・芝高)の監事を務めさせていただいております。そこで、監事の職務についてご紹介させていただこうと思います。
⑴基本的職務
監事は、会社における監査役のように、学校法人の業務の状況、財産の状況、理事の職務の執行の状況を監査すること(私学法52条1号)を基本的な職務とします。この監査とは、ある事象・対象に関し、遵守すべき法令や社内規程などの規準に照らして、業務や成果物がそれらに則っているかどうかの証拠を収集し、その証拠に基づいて、監査対象の有効性を利害関係者に合理的に保証することをいい、監事による監査は、学校法人の管理業務、財産関係だけでなく教学も対象としています。
要するに学校で行われていることのほぼ全てのことを知り、その合理性を判断することが求められています。
そして、監事は、その職務を適切に遂行するため、
①当該学校法人の理事及び職員、子法人の役員及び使用人等と意思疎通を図り、情報収集及び監査環境の整備に努めること、
②必要に応じ、当該学校法人の他の監事、子法人の監事、監査役等との意思疎通及び情報の交換を図るよう努めることとされています(私学則19条2項、4項)。
⑵さらに、監事には次の職務等があります。
①評議員会への提出書類等の調査義務(54条前段、私学則18条)、報告義務(54条後段)、
②理事会及び評議員会への出席義務(新法52条2号)、
③学校法人の業務若しくは財産の状況又は理事の職務の執行の状況について理事会及び評議員会並びに理事選任機関に対し報告する義務(報告義務。52条3号、56条)。
④私学法の他の規定により監事の同意を要する事項*[1]について、その可否を決すること(新法52条4号)
⑤私学法の他の規定により監事が行うこととされた職務(52条5号)
ア 特定の場合における理事会又は評議員会の招集(57条、73条)。
イ 特定の場合における理事の職務執行の差止め(58条1項)。
ウ 訴訟における学校法人の代表権(59条)。
このように監事の職務は広範囲に及びます。この職務を遂行するためには監事を常勤にしなければならないと思いますが、大学などと異なり、私立中学校・高校などではその余裕はないと思います。
そこで、私のような非常勤の監事が監査を担うことになるのですが、その職務の遂行に対し及第点をもらうためには、職務について優先順位をつけて効率的に行う必要があります。
そこで、このような考えの下、私が実施している職務内容は以下の通りです。
①理事会、評議員会に出席して学校法人の業務の状況、財産の状況、理事の職務の執行の状況等を把握する。
②私学助成法で求められている会計士監査を担当する会計士とヒアリングを行い、学校法人の財務や財産の状況を具体的に把握する。
③理事長からのヒアリングを通じて、学校法人の経営方針と課題について把握する。
④校長からのヒアリングを通じて主として教務に関する課題について把握する。
⑤日頃から事務局とコミュニケーションを取り、業務全般に関する課題を把握する。
⑥前年度に行った上記①から⑤の結果等を基に重点監査項目を抽出し、理事長、校長、会計士等に対するヒアリングを中心とした監査計画を立案し、スケジュール調整と当該重点監査項目に関する調査を事務局に依頼し、報告してもらう。
⑦このほか特別に発生した課題については速やかに事務局と情報を共有し、必要があれば意見を述べる。
⑧期末に監査報告書を作成し、理事会、評議員会に報告する。
そして、これらの職務は、事務局に原案を作成してもらうなどの具体的な作業がなければ前に進みません。したがって、非常勤の監事が職務を遂行するためには事務局の協力が不可欠なのです。
私立の中学校・高校にとって最も重要なミッションは、生徒それぞれの個性と環境に応じて生徒の健全な成長を導くことにあると思います。それを、それぞれの学校が自分たちが信じている教育理念や建学の精神に則って実践するのだと思います。
冒頭で述べましたとおり、監事が学校を対象としてその合理性の保証を役割としているのであれば、監事の職務として最も重要なことは、学校がその教育理念や建学の精神に則って生徒の健全な成長を導いているかを保証することにあると思います。
多くの生徒が健全に成長してくれれば、社会全体も健全なものになるでしょう。
新しい年も学校が多くの生徒の健全な成長を導いてくれる存在であり続けることを願ってやみません。