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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会議事録の閲覧・謄写の可否が争われた事例(1件)一覧 > 株式買取請求を行った者が会社法318条4項の「債権者」に該当するとされた事例(最二小判令3・7・5 判例タイムズ№1491・16)
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株式買取請求を行った者が会社法318条4項の「債権者」に該当するとされた事例(最二小判令3・7・5 判例タイムズ№1491・16)

2023.10.17

(R4-⑾) 

  ① 事案の概要

   XはY社の株主であったところ、Y社の株式併合により1株に満たない端数株式を保有することになった。
 Xは、Yに対し、上記株式の買取請求をした上、同株式の価格の支払請求権を有してるからYの債権者に該当すると主張して、会社法318条4項に基づき、株主総会議事録の閲覧及び謄写を求めて提訴した。

 ② 判決要旨

 4 会社法318条4項は、株式会社の株主及び債権者は株主総会議事録の閲覧等を請求できる旨を定めている。そして、同法182条の4第2項各号に掲げる株主(反対株主)は、株式併合により1株に満たない端数となる株式につき、同条1項に基づく買取請求をした場合、会社との間で法律上当然に売買契約が成立したのと同様の法律関係が生ずることにより上記株式につき公正な価格の支払を求めることのできる権利を取得し(最高裁平成22年(許)第30号同23年4月19日第三小法廷決定・民集65巻3号1311頁参照)、同法318条4項にいう債権者に当たることとなると解される。
 ところで、会社は、上記株式の価格の決定があるまでは、上記買取請求をした者に対し、自らが公正な価格と認める額を支払うことができる(同法182条の5第5項)。もっとも、上記株式の価格は上記の者と会社との間の協議により又は裁判によって決定されるところ(同条1項、2項)、同法182条の4第1項の趣旨が、反対株主に株式併合により端数となる株式につき適切な対価の交付を確保することで上記株式についての反対株主の利益の保護を図ることにあることからすれば、上記裁判は、裁判所の合理的な裁量によってその価格を形成するものであると解される(前掲最高裁平成23年4月19日第三小法廷決定参照)。そうすると、上記協議が調い又は上記裁判が確定するまでは、この価格は未形成というほかなく、上記の支払によって上記価格の支払請求権が全て消滅したということはできない。
 また、同法318条4項の趣旨は、株主及び債権者において、権利を適切に行使し、その利益を確保するために会社の業務ないし財産の状況等に関する情報を入手することを可能とし、もってその保護を図ることにあると解される。そして、上記買取請求をした者は、会社から上記支払を受けたとしても、少なくとも上記株式の価格につき上記協議が調い又は上記裁判が確定するまでは、株式併合により端数となる株式につき適切な対価の交付を確保するため会社の業務ないし財産の状況等を踏まえた合理的な検討を行う必要がある点においては上記支払前と変わるところがなく、上記情報の入手の必要性は失われないというべきである。
 したがって、同法182条の4第1項に基づき株式の買取請求をした者は、同法182条の5第5項に基づく支払を受けた場合であっても、上記株式の価格につき会社との協議が調い又はその決定に係る裁判が確定するまでは、同法318条4項にいう債権者に当たるというべきである。

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