
2023.11.08
(H24-⑵)
各種情報提供サービス業務等を目的とする⑭インスタイル(被告。以下「インスタイル社」という)の代表取締役(原告)が、同社に対し、同社の平成20年12月5日開催の臨時株主総会における取締役の解任決議・選任決議について、主位的に、本件臨時株主総会はインスタイル社の代表取締役以外の者が議長を務めたものであるから不存在であるなどと主張し、同決議が存在しないことの確認と平成21年1月分から同年6月分までの役員報酬の支払を求めるとともに、予備的に、本件株主総会はその決議の方法が法令又は定款に違反するなどと主張して、本件株主総会決議の取消し及び上記役員報酬の支払を求め、本件決議の不存在確認及び取消し並びに上記役員報酬請求が認められない場合には、予備的に、取締役の解任によって生じた損害の賠償を求めた。
ちなみに、上記臨時株主総会決議後の平成21年1月8日、インスタイル社は、株主総会を開催し、上記臨時株主総会決議を追認する決議をしている。
インスタイル社は定款上、代表取締役が議長として動議の審議・採決を行うべきとされているところ、裁判所は、本件では、議長の資格のない代表取締役以外の者の下において、議長不信任、議長交代動議採決がなされているから、本件臨時株主総会決議は不存在であると判断した。
ちなみに、本件では、平成21年1月8日の株主総会おける本件追認決議により、本件臨時株主総会決議が遡及的に有効になるか否かについても争われており、その点について裁判所は、本件追認決議が、本件臨時株主総会決議に効力が遡及すると、元取締役の地位の喪失時期に影響を与え、報酬請求権を一方的に奪うことになるとして、本件追認決議の遡及効を否定した(即ち、原告である元取締役について、本件臨時株主総会から本件追認決議までの間の取締役としての地位を認めた)。
また、本件では、本件追認決議により取締役の地位を解任された元代表取締役の損害賠償請求の可否についても争われている。その点について裁判所は、本件追認決議の前日までの未払報酬請求と本件追認決議から取締役任期満了までの間の解任によって生じた損害賠償請求を認めている。