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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会及び招集手続における手続的な問題が争われた事例(24件)一覧 > 株主提案権の妨害(提案議案の削減、招集通知への不記載)及び取締役の説明義務違反を理由とする決議の取消請求が棄却された事例(東京高判平23・9・27 資料版商事法務№333・39)(HOYA株主総会決議取消控訴事件) 
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株主提案権の妨害(提案議案の削減、招集通知への不記載)及び取締役の説明義務違反を理由とする決議の取消請求が棄却された事例(東京高判平23・9・27 資料版商事法務№333・39)(HOYA株主総会決議取消控訴事件) 

2023.11.08

(H24-⑴)

① 事案の概要

 HOYA(被告)の株主(原告)が、議案59個を提案したところ、そのうち20個に議案を減らされた上、20個のうち5個について、招集通知に記載されず、提案理由の一部を削除されたほか、111項目に亘る事前質問事項を送付していたにもかかわらず、事前質問事項すべてに対する回答を与えられなかった。

 そこで、原告である株主は、平成22年6月18日に開催されたHOYAの定時株主総会において、会社提案議案(2議案)の各可決決議及び株主提案議案(15議案)の各否決決議について、HOYAが株主の株主提案権を妨害し、また、株主総会での取締役等の説明義務違反があり、株主総会の招集手続に法令違反があり、決議方法にも法令違反又は著しい不公正があったとして、会社法831条1項1号に基づき、取消しを求めた。

② 判決要旨 

 ア 本判決は、1審判決(東京地裁平成23年4月14日判決・金商1383・2)の結論を支持し、株主提案議案の各否決決議に関する株主総会決議の取消しを求める訴えについては訴えが不適法であるとして却下し、その他の請求についてはいずれも棄却している。

 イ 本件には3つの争点がある。第1の争点(否決決議が株主総会決議の取消しの訴えの対象になるか)について裁判所は、株主総会決議の取消しの訴えの対象となる決議は、第三者に対して効力を有するものを指すが、否決決議は、第三者に対して効力を有しないから、株主総会決議の取消しの訴えの対象にならないと判断した。

 ウ 第2の争点(株主提案権の妨害が株主総会決議の取消事由に該当するか)について裁判所は、株主が会社法303条所定の株主提案権によって議題を追加請求し、それが株主総会において取り上げられなかった場合であっても、原則として株主総会決議の取消事由に該当しないと判示した。そして、「例外的に①当該事項が株主総会の目的である事項と密接な関連性があり、株主総会の目的である事項に関し可決された議案を審議するうえで株主が請求した事項についても株主総会において検討、考慮することが必要、かつ有益であったと認められるときであって、②上記の関連性のある事項を株主総会の目的として取り上げると現経営陣に不都合なため、会社が現経営陣に都合のよいように議事を進行させることを企図して当該事項を株主総会において取り上げなかったときに当たるなど、特段の事情が存在する場合に限り」、株主総会決議の取消しの訴えの対象になるが、本件では、上記①及び②のいずれにも該当せず、株主総会決議の取消事由に該当しないと判断した。

 エ また、第3の争点(事前質問事項全てを回答しなかったことが取締役の説明義務違反になるか)について裁判所は、会社法314所定の取締役等の説明義務について、原判決を引用し、「会社法314条所定の取締役等の説明義務は、同条に規定するように株主総会において株主から特定の事項について説明を求められた場合に生ずるものであり、株主が事前質問書を会社に提出していても、株主総会で質問がない限り、取締役等がこれについて説明する義務を負うものではないと解される。他方、株主総会でされた質問については、取締役等は、同条に基づき、株主総会において、決議事項の内容、株主の質問事項と当該決議事項との関連性の程度、質問がされるまでに行われた説明(事前質問状が提出された場合における一括回答等)の内容及び質問事項に対する説明の内容に加えて、質問株主が保有する資料等も総合的に考慮して、平均的な株主が議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明をする義務を負うものと解される。」と判示した。そして、本件の場合、原告である株主は、本件株主総会において議案を提出した株主として補足説明の機会を与えられ、事前質問事項のうち原告である株主が重点を置く事項については説明がなされたのであるから、取締役の説明義務違反があったということはできないと判断した。

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