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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会及び招集手続における手続的な問題が争われた事例(24件)一覧 > 株主総会の議題等を招集通知・株主総会参考書類に記載するよう求める仮処分命令の申立てに関する即時抗告が棄却された事例(東京高決平24・5・31 金融・商事判例№1426・2)(HOYA株式会社)
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株主総会の議題等を招集通知・株主総会参考書類に記載するよう求める仮処分命令の申立てに関する即時抗告が棄却された事例(東京高決平24・5・31 金融・商事判例№1426・2)(HOYA株式会社)

2023.10.27

(R26-⑴)

① 事案の概要

 HOYA株式会社(以下「被告」という。)の株主(以下「原告」という。)が、①自己の提案議案を平成24年6月開催の被告会社株主総会の目的とすること、②議案要領・提案理由を招集通知又は株主総会参考書類に記載することを求め、取締役兼代表執行役宛てに63個の提案議案が記載されたメールを送信するなどした。

 これに対し、被告は、原告の行為が株主提案権の濫用に該当するとして、この提案を株主総会に付議しない旨同人に通知した。

 そこで、原告は被告に対し、上記63個の議案のうち58個にかかる議題、議案の要領及び提案理由全文を、平成24年6月1日以降に開催予定の被告定時株主総会の招集通知又は株主総会参考書類に記載するよう命じる仮処分命令発令を申し立てた。

 原決定が申立てを却下したため、原告が即時抗告を行った。

② 判決要旨  

 ア 被保全権利の有無について

   株主提案権といえども、これを濫用することが許されないことは当然であって、その行使が、主として、当該株主の私怨を晴らし、あるいは特定の個人や会社を困惑させるなど、正当な株主提案権の行使とは認められないような目的に出たものである場合には、株主提案権の行使が権利の濫用として許されない場合がある。

   しかし、①以前の株主総会の際には、原告によって本件株主提案より多い議案が提出された上、最終的に15又は20個が議案として上程されたこと、②被告会社の株式取得規制には、株主提案の数や字数を制限する規定はないこと、③被告会社が本件株主総会の招集通知等の内容を確定させるまでの間に1か月以上の期間があったことからすると、本件株主提案が、議案の数が58個に及び、提案理由もかなりの長さになっていることのみをもって、権利濫用に当たるとまでいうことはできない。

 イ 保全の必要性について

   本件申立てにおける保全の必要性は、本件株主提案にかかる議題及び議案の内容、可決可能性等を踏まえた上で、本件株主提案が認められないことにより原告又は被告会社に生ずる損害又は危険と、本件申立てが認容された場合に被告会社が被る不利益又は損害とを総合的に考慮して判断すべきものと解される。

   本件株主提案にかかる議案は、①その可決可能性が極めて乏しいか、可決されても実現可能性がないもの、②可決されても実質的な法律関係に影響を及ぼさないもの、③本件株主総会に上程しなければならない緊急性又は必要性が疎明されていないもののいずれかであって、これらが本件株主総会に上程されないことによって原告あるいは被告に生ずる不利益は、それほど大きなものであるとは考えられない。

   他方、仮に本件申立てが認められた場合には、新たに必要となる費用及び事務作業の負担はかなり大きなものとなる。また、招集通知及び株主総会参考書類の作成が間に合わず、本件株主総会を開催することができない事態も予想される。そうすると、本件申立が認容されることによる被告会社の不利益は、決して小さなものではない。

 ウ 総合判断

   以上を総合して判断すると、今後の立証によっては、本件株主提案が全体として権利の濫用と認められる余地があり、その点において、被保全権利の疎明の程度が高いとはいえない。したがって、断行的仮処分の性質を有する本件申立てを認容するためには、より高度な保全の必要性が認められるべきところ、そのような保全の必要性の疎明があったとは到底いえない。

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