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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会及び招集手続における手続的な問題が争われた事例(24件)一覧 > 一部の株主提案が、法律上無効である点を含むこと等を理由として違法とされる一方、提案理由の全文を株主参考書類に記載すべき旨の請求が一部認容された事例(東京地決平25・5・10 資料版商事法務№352・34)(HOYA株式会社)
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一部の株主提案が、法律上無効である点を含むこと等を理由として違法とされる一方、提案理由の全文を株主参考書類に記載すべき旨の請求が一部認容された事例(東京地決平25・5・10 資料版商事法務№352・34)(HOYA株式会社)

2023.10.25

(H29-⑺)

① 事案の概要

 HOYA株式会社(以下「Y₁」という)の株主である債権者らは、Y₁の代表取締役である債務者Y₂及び同社の取締役兼代表執行役である債務者Y₃等に宛てて提案議題、議案の要領及び提案理由を平成25年6月21日に開催予定の債務者会社の定時株主総会(以下「本件株主総会」という。)の招集通知又は株主総会参考書類に記載するよう求める等した上で、その実現を求めて断行の仮処分を申し立てた。

 Y₁は、提案議案のうちの第4号議案及び第8号議案(以下「本件2議案」という)について虚偽や名誉毀損を含んでいるとして、その一部を削除する等したため、かかる対応の是非等が争点となった。

 

② 判決要旨

⑵ 本件2議案の適法性について(中略)

  

 ア 株主は、法令又は定款に違反する場合等を除き、株主総会において議案を提出することができ、また、議案の要領を招集通知に記載することを請求することができるところ(会社法304条、305条1項、4項)、債務者らは、本件各議案のうち、本件2議案が違法である旨主張していることから、この点について検討する。

 イ 第4号議案について

    (中略)第4号議案は、既に付与されたストックオプション、今後付与されるであろうストックオプション、ストックオプションに係る新株予約権を行使した結果取得した株式及びストックオプションに係る新株予約権の行使以外の方法により取得した株式といった複数の性質の異なるものを対象としているところ、少なくとも既に付与されたストックオプションを対象とする部分は効力を生じないというべきであり、かつ、その禁止すべき行為も「プットオプションを保有しコールを売却することなどの手段によるヘッジを行うこと」というあいまいなものであることからすると、議案全体として明確性を欠くものというべきである。

    したがって、第4号議案については、無効である部分を多く含む上に、内容としても明確性を欠くものといわざるを得ず、このような議案の提案は、適法な株主提案権の行使とは評価できないというべきである。(中略)

  

⑶ 株主総会参考書類に本件4議案(筆者注:第2号議案及び第5号ないし7号議案)の提案の理由の全部を記載することの要否について

  

 ア 株主が、議案の要領を招集通知に記載することを要求するに際して、提案の理由を株式会社に対して通知したときは、当該提案の理由が明らかに虚偽である場合又は専ら人の名誉を侵害し、若しくは侮辱する目的によるものと認められる場合を除き、その理由を株主総会参考書類に記載しなければならず、また、その理由が株主総会参考書類にその全部を記載することが適切でない程度の多数の文字、記号その他のものをもって構成されている場合にあっては、その理由の概要を記載しなければならないものとされている(会社法施行規則93条1項)。

   債務者らは、本件4議案の提案の理由には、「明らかに虚偽である場合又は専ら人の名誉を侵害し、若しくは侮辱する目的によるものと認められる場合」に該当する記載があるとして、当該記載を除いた提案の理由を株主総会参考書類に記載すべきである旨主張していることから、この点について検討する。

 (ア) 第2号議案について

   債務者らは、第2号議案の提案の理由(中略)が虚偽であるとして、当該部分を株主総会参考書類に記載しない旨主張している。しかしながら、当該部分は、債権者らの見解あるいは評価を述べる部分及び債務者会社やその役員が訴えを提起されている事実を摘示する部分であるところ、債権者らの見解あるいは評価を述べる部分は、そもそも会社法施行規則93条1項の除外事由には当たら(中略))ない。(中略)

 (イ) 第5号議案について

   債務者らは、第5号議案の提案の理由(中略)が虚偽であり、又は名誉毀損となるとして、当該部分を株主総会参考書類に記載しない旨主張している。しかしながら、当該部分は、債権者の評価を述べる部分及び雑誌の記事を紹介する部分からなるところ、これらが明らかに虚偽であり、専ら人の名誉を侵害する目的によるものであることを疎明するに足りる資料はないから、債務者らの主張を採用することはできない。

 (ウ) 第6号議案について

   債務者らは、第6号議案の議案の理由(中略)が虚偽であり、又は名誉毀損となるとして、当該部分を株主総会参考書類に記載しない旨主張している。

   この点、(中略)債務者会社のコーポレート企画室の従業員が取締役会や各委員会のアジェンダ及び株主総会での取締役会の意見の下書きをしていないことが一応認められるから、第6号議案の提案の理由のうち債務者らの主張に係る部分については、明らかに虚偽であると一応認めることができる。

 (エ) 第7号議案について

   債務者らは、第7号議案の提案の理由(中略)が虚偽であり、又は名誉毀損となるとして、当該部分を株主総会参考書類に記載しない旨主張している。しかしながら、当該部分は、全体として見れば、債務者会社における不祥事抑止のシステムが不十分であるという債権者らの意見の表明であって、これが、明らかに虚偽であり、専ら人の名誉を侵害する目的によるものであることを疎明するに足りる資料はないから、債務者らの主張を採用することはできない。

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