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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会及び招集手続における手続的な問題が争われた事例(24件)一覧 > 株主提案権の侵害を理由とする取締役に対する損害賠償請求の是非が争われた事例(東京高判平27・5・19 金融・商事判例№1473・26)(HOYA株式会社)
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株主提案権の侵害を理由とする取締役に対する損害賠償請求の是非が争われた事例(東京高判平27・5・19 金融・商事判例№1473・26)(HOYA株式会社)

2023.10.25

(H28-⑷)

① 事案の概要

 HOYA株式会社(以下「被告会社」という。)の株主である原告が、被告会社の平成20年度定時株主総会である「第71期株主総会」、平成21年度定時株主総会である「第72期株主総会」、平成22年度定時株主総会である「第73期株主総会」に際し、以下の事実により株主提案権が害されたと主張して、被告会社及び同社の取締役・執行役らに対して損害賠償請求を行った。

  

 ア 71期株主総会については、自らの提案に係る議案が招集通知に記載されなかった

 イ 72期株主総会については、提案議案の削減を強要され、これに応じて削減したにもかかわらず、残る議案のうち一部が招集通知に記載されなかった

 ウ 73期株主総会については、提案議案の内容が改変されて招集通知に記載された

 原審は、被控訴人の請求の一部を認容したところ、これを不服として控訴人らが控訴し、被控訴人が附帯控訴した。

② 決定要旨

 被控訴人は、控訴人会社からの重なる要請に従い、最終的には提案を72期提案2の20個にまで削減したものの、その中にはなお倫理規定条項議案及び特別調査委員会設置条項議案が含まれており、それらは、D及びB(中略)を直接対象とするものであり、被控訴人が最後までこれらに固執したことからすれば、72期株主総会に係る提案は、上記のような個人的な目的のため、あるいは、控訴人会社を困惑させる目的のためにされたものであって、全体として株主としての正当な目的を有するものではなかったといわざるを得ない。また、72期株主総会に係る提案の個数も、一時114個という非現実的な数を提案し、その後、控訴人会社との協議を経て20個にまで減らしたという経過からみても、被控訴人の提案が株主としての正当な権利行使ではないと評価されても致し方ないものであった。

 他方、控訴人会社の側からみれば、被控訴人に対し、その提案を招集通知に記載可能であり、株主総会の運営として対応可能な程度に絞り込むことを求めることには合理性があるといえるし、控訴人会社が、被控訴人に協議を申し入れ、その調整に努めたことは前記認定のとおりであり、このような経過を経ても被控訴人が特定個人の個人的な事柄を対象とする倫理規定条項議案及び特別調査委員会設置条項議案を撤回しなかったことは、株主総会の活性化を図ることを目的とする株主提案権の趣旨に反するものであり、権利の濫用として許されないものといわざるを得ない。

 そして、72期株主総会に係る提案が前記のような目的に出たものと認められることからすれば、その提案の全体が権利の濫用に当たるものというべきであり、そうすると、控訴人会社の取締役が72期不採用案を招集通知に記載しなかったことは正当な理由があるから、このことが被控訴人に対する不法行為となるとは認められない。(中略)

 よって、主文のとおり判決する。

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