
2023.10.19
(R2-⑶)
X₁は、a株式会社(以下「本件会社」という。)の代表取締役社長、X₂は本件会社の監査役であり、次期株主総会でも重任が予定されていた者である。
X₁らは、Yらが共謀の上、適法な招集手続を取ることなく株主総会を招集し(以下「本件総会」という)、その際、存在しない委任状があると偽って議事進行するという不法行為を行い、同総会において、X₁ら以外の者を取締役ないし監査役を選任し、X₁らを失職させたと主張して、不法行為に基づき、Yらに対し、①株主構成が確定的に変わった平成25年1月9日までの役員報酬、②慰謝料及び③弁護士費用の支払いを求めて提訴した。
原審は、Yらの請求をいずれも棄却したため、これを不服とするYらが控訴を提起したのが本件である。
⑴ 本件総会の有効性
「本件総会の招集通知は、発送日の翌日から総会の前日まで6日間しかないことからして、総会の日の1週間前までに発送するという会社法299条1項が定める要件を満たさないものであり、本件会社の定款にもこのような取扱いを容認する規定は見当たらない。それどころか、本件会社の3740株(21%)の株式を有する大株主であるc社に対する招集通知を欠いており、その委任状(議決権行使書)も入手されていなかった。これらはいずれも重大な瑕疵といわざるを得ない。
そうすると、Yらが、Y₁を議長として、C社が議決権の行使をAに委ねているなどという虚構の事実を前提に、A(6776株)とX₂(110株)のほかに、C社(3740株)とB(1111株)が本件総会に出席し、出席株主(合計1万1737株)が全員異議なく提出議案に賛成したものとして違法に作出した本件総会における決議は、招集手続の瑕疵が著しく、不存在であると認められる。」
⑵ Yらの不法行為責任
「本件総会には、発送された開催通知についても開催日までの期間が法定の要件に足りないものであっただけでなく、大株主の1人に対して開催通知自体がされていないという、重大な手続上の瑕疵があった。
Y₁は、自らの名で開催通知を行った者であるし、Y₂は、弁護士として開催通知等の作成及び発送の手続に当たった者であるから、これらの瑕疵の存在を認識していたと認められるし、当時の株式の保有状況からして、適式に株主総会を開催した場合には、X₁の意思に反してAを経営者に復帰させることはできないことも認識していたと認められる。
他方、本件総会の直前の平成23年3月10日付けで本件会社からY₁が所長を務めるB研究所に対し顧問契約解除の通知書が発送されるなどしたことから、被控訴人らは、X₁が本件会社と被控訴人らとの契約関係を打ち切ろうとしていたことを認識し、Aが経営者に復帰しない限り、これまで労せずして得ていた相当額の顧問料収入等を失ってしまうことを危惧していたものと認められる。
これらのことからすると、被控訴人らは、自らの収入を維持するためにAが経営者に復帰することを望んでいたところ、たまたまAがそれを望んだものの、それを実現するには違法な手続行為を行うほかなかったことから、敢えて実行に及んだと認めるのが相当であり、上記違法な手続行為につき、共謀の上、自らの利得を確保するために故意によって不法行為を行ったものと認めることができる。」