• 事務所概要
  • 企業の皆様へ
  • 個人の皆様
  • 弁護士費用
  • ご利用方法
  • 所属弁護士

企業の皆様へ

企業の皆様へ

ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会及び招集手続における手続的な問題が争われた事例(24件)一覧 > 招集通知の瑕疵等を理由とする株主総会決議の取消請求が裁量棄却された事例(東京地判令3・4・8 資料版商事法務№448・133)
イメージ

招集通知の瑕疵等を理由とする株主総会決議の取消請求が裁量棄却された事例(東京地判令3・4・8 資料版商事法務№448・133)

2023.10.17

(R4-⑼)

① 事案の概要

 Xは、海運業等を事業として行うYの大株主であるが、Yが令和元年6月及び令和2年6月開催の定時株主総会における株主総会決議の取消しを求めて提訴した。

 本件の争点は多岐に亘るが、本稿では、特に重要と思われる次の2点について説明する。

  ⑴ 招集通知の発送日ないし議決権行使書面の行使期限に関する適法性

  ⑵ 不適切集計処理を取消事由として追加することの可否

② 決定要旨

 8 争点9(招集通知の発送日ないし議決権行使書面の行使期限に関する法令違反の有無)について
 ⑴ 会社は、株主総会の2週間前までに招集通知を発しなければならない(会社法299条1項)。すなわち、株主総会の日と招集通知の発送日との間に、14日間を置かなければならないことになる。

   
 他方で、議決権行使書面の行使期限については、原則として株主総会の日時の直前の営業時間の終了時であるが(会社法311条1項、同施行規則69条)、取締役会は、招集の決定に際し、特定の時を議決権行使書面の行使期限として定めることができる。もっとも、同期限は、株主総会以前の時であって、招集通知を発した日から2週間を経過した日以後の時に限られる(同法298条1項5号、同施行規則63条3号ロ)。

   したがって、会社が、株主総会招集通知と議決権行使書面を同時に発送し、株主総会の前日の特定の時を議決権行使書面の行使期限として定めた場合、上記各規定に違反しないためには、株主総会と招集通知及び議決権行使書面の発送日との間に15日間を置く(すなわち、株主総会の16日前に招集通知を発送する)ことが必要となる。

 ⑵ 本件では、令和2年招集通知等が令和2年6月4日に発送されたところ、令和2年総会は同年6月19日午前10時から開催されることとされていたから、令和2年総会と招集通知及び議決権行使書面の発送日との間に14日間があった。他方で、令和2年招集通知等に記載された議決権行使書面の行使期限は、令和2年総会の前日である同月18日午後5時とされていた(前提事実⑸)。

   証拠(第2事件甲4から6まで)及び弁論の全趣旨によれば、被告のホームページ上に記載された営業時間及び採用に際して提示されている勤務時間が午前9時から午後5時20分であることが認められるから、被告の「営業時間の終了時」(会社法施行規則69条)は、午後5時20分であると認められる。そうすると、それよりも早い午後5時を議決権行使書面の行使期限としたことは、会社法施行規則63条3号ロの「特定の時」を定めたものであると認めるのが相当である。

   したがって、議決権行使書面の発送日と総会日との間に15日間を設けなかった令和2年総会の招集手続は、議決権行使書面の行使期限に関する規定に違反するものというべきである(会社法298条1項5号、同施行規則63条3号ロ)。

(中略)

 ⑸ 裁量棄却の可否について  

ア (中略)、令和2年総会の招集手続の瑕疵は、株主の書面による議決権行使に関する権利を制限するものであり、看過することはできないが、他方で、特定の時を定めなかった場合の議決権の行使期限は、被告の営業時間の終了時である午後5時20分であって、本件の行使期限(午後5時)から20分間伸長されるにすぎず、株主の議決権行使に与える影響が大きいとまではいえないこと、また、午後5時をもって営業時間の終了とすることが我が国のビジネス慣習上広く見られることに照らし、瑕疵の程度が重大でないと認められる。また、令和2年総会の前日である令和2年6月18日午後5時から同日午後5時20分までの間に到達した議決権行使書面があったことをうかがわせる証拠はなく、そのような議決権行使書面は存在しなかったものと認められるから、上記招集手続の瑕疵は、決議に影響を及ぼさないものであったと認めるのが相当である。

  よって、当裁判所は、書面による議決権行使の行使期間に関する法令違反の瑕疵を理由とする令和2年総会決議の取消請求について、裁量で請求を棄却する。

 11 争点12(本件不適切集計処理による令和2年総会決議の決議方法の瑕疵の有無、裁量棄却の可否及び当該取消事由追加の可否)について

  ⑴ (中略)、会社法831条1項所定の期間経過後の取消事由の追加は認められない。

   本件において、原告は、本件不適切集計処理を理由として、令和2年総会決議には決議方法に法令違反又は著しい不当があると主張するところ、当該取消事由の主張は、令和2年総会決議の日から3か月が経過した同年10月2日提出の第2事件原告準備書面(1)によって追加されたものである(当裁判所に顕著な事実)。

   したがって、原告の上記主張の追加は許されず、採用することができない。

ページトップ