
2023.10.30
(R5-⑵)
Y社は、A社、B社、C社及びD社(以下「本件株主ら」という)のみを株主とし、Y社を非公開会社化することを計画し、平成31年1月23日に開催した臨時株主総会において、Y社株式4万9842株を1株に併合する株式併合(以下「第1回株式併合」という)を行うことを決議した。ところが、X社の代表社員であるEが、第1回株式併合の効力発生日である同年2月15日より前にY株式を買い増し、4万9842株を超えるY株式を取得したため、第1回併合後、本件株主ら以外に、Eが社Y社株式を保有するに至った。
Yは、当初の目的を達成するために再度株式併合を行うこととした。具体的には、Y社株式2株を1株に併合することとし(以下「本件株式併合」という)、平成31年4月23日、取締役会において、本件株式併合の証人と定款の一部変更を目的とする臨時株主総会の招集を決議した(以下「本件取締役会決議」という)。
なお、本件取締役会当時のYの取締役は、G(代表取締役)、H、I、J、Kであったが、それぞれ本件株主らと次のような関係を有していた。
G:A社の発行済株式を全て保有。
H:B社の取締役を兼務。
I:C社の取締役を兼務。
J:B社の代表取締役を兼務。
K:C社の代表取締役を兼務。
そのため、Fを除く取締役らは、本件株式併合に関して利害関係を有するとして、本件取締役会決議には参加しなかった。
Y社は、本件株主総会の開催に際し、議決権行使の基準日を定めないまま、同日付で招集通知を発し(以下「本件招集通知」という)、これが同月24日にEを含む全株主に到達した。本件招集通知には、「会社法第180条2項各号に掲げる事項」として、次の通りの記載が為されていた。
株式の割合:当社株式について、2株を1株に併合いたします。
効力発生日:2019年5月17日
効力発生日における発行可能株式総数:114株
ところで、令和元年5月8日、X社はEからY社株式を譲り受け、その旨の名義書換が為された。その結果、同日時点のY社株主は、A社、B社、C社、D社及びX社となった。
こうした中、同月8日、本件株主総会が開催され、本件株式併合に係る議案を含む全議案が可決された。同総会には、G、I、F及びXの代表社員であるEが出席した。なお、Iは本件株主らの委任状(いずれの議案についても賛成欄に○が付されている)に基づき、同人らの代理人として同総会に出席した。
同月17日、本件株式併合の効力が発生し、Xは、1株に満たない端数株式を保有することになったため、同年8月6日、主位的に、本件株式併合及び定款変更を可決した決議(以下「本件各決議」という)の取消し、予備的に本件各決議が無効であることの確認を求め、提訴した。
こうしたところ、原審は、Xの請求を棄却したため、Xがこれを不服として控訴したのが本件である。
以下では、控訴審において独自に判断された判示部分のみ引用する。
2 Xの当審における補充主張について
⑴ Xは、当審において、A以外の株主ら作成の委任状(中略)には権限を委任する相手である代理人の住所、氏名の記載がなく無効であり、本件株主総会において株式会社a、株式会社b、株式会社c及び株式会社dはいずれも議決権を行使していないと主張する。
しかしながら、株主総会において議決権の代理行使を委任状によって行う場合、本件のように、予め議案として示された内容について、賛否の意思が示されていれば、受任者(代理人)の住所、氏名が白紙であっても無効ではなく、受任者はその委任者の意思どおりに議決権を有効、適法に行使したものと解するのが相当である。そうすると、(中略)、本件において、前記の株式会社a、株式会社b、株式会社c及び株式会社dは本件株主総会に出席したJを代理人として各委任状(中略)に記載された各議案に対する賛否のとおり議決権を行使したものと認められるから、Xの上記主張は採用することができない。
⑵ また、Xは、AからXへの株式の名義書換請求が完了したのは令和元年5月17日であり、本件株主総会が開催された同月8日の時点において同書換作業は完了していなかったから、本件各決議の議決権を行使したのはAであってXではない旨主張する。
しかしながら、株式が譲渡された場合、株主名簿には「株主が株式を取得した日」が記載されるところ(会社法121条3号)、株式を取得した日として記載されるのは、一般に名義書換請求を会社が受け付けた(受理した)日と解され、これを本件についてみると、(中略)、AからXに対する株主の名義書換請求をY社が受け付けた(受理した)日は令和元年5月7日と認められるから(中略)、本件各決議の議決権を行使したのはA個人ではなくXであると認められる。したがって、Xの上記主張は採用することができない。