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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会及び招集手続における手続的な問題が争われた事例(24件)一覧 > 株主総会の招集通知を欠いたことによる株主総会決議不存在確認請求等を認容した原審判決が取り消された事例(東京高判令4・7・27 金融・商事判例№1663・34)
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株主総会の招集通知を欠いたことによる株主総会決議不存在確認請求等を認容した原審判決が取り消された事例(東京高判令4・7・27 金融・商事判例№1663・34)

2023.10.30

(R-5⑹)

① 事案の概要

 Xらは、自身らがY社の株主であると主張して、Y社の平成22年12月11日付定時株主総会(以下「平成22年総会」という)及び平成26年11月19日付定時株主総会(以下「平成26年総会」といい、平成22年総会と併せて「本件各株主総会」という)について、いずれもXらに対する招集通知が発せられていない等と主張して、本件各株主総会における各決議(以下「本件各決議」という)が不存在であることの確認、及び、X₂がY社株式120株を有する株主であることの確認を求めて提訴した。

 原審は、Xらが株主であると認定した上、Y社株式の90%を有するXらへの招集通知を欠くことから、本件各決議は不存在であるとし、また、X₂についてはY社株式100株を有するY社の株主であると判示した。

 これを不服とするY社が控訴し、また、X₂も自身の敗訴部分について附帯控訴したのが本件である。

② 判決要旨

 控訴審は、原審の判決を取り消し、Xらの請求及びY社の敗訴部分に係るXらの請求並びに附帯控訴請求をいずれも棄却した。 

 2 争点(3)(X₂がY社設立時にY社株式200株を取得したか)について

 ⑴ 平成7年4月17日付本件原始定款に記載されたX₂が引き受けた株式数は100株であり(中略)、その余の100株を引き受けたことを明らかにする株式申込証は見当たらないものの(中略)、上記翌日の同月18日には、発起設立用の株式払込事務取扱委託書(中略)により、G銀行b支店に200株分の株式引受金1000万円が払い込まれ、同月20日にはY社が設立されていること(中略)、本件原始定款と上記株式払込事務取扱委託書のX₂名下の押印は、いずれも、同人自身が実印により押印したものであること(中略)、株式会社設立の実務上、募集設立による場合であっても、発起人が更に引き受けることは可能とされていること(中略)、X₂は、Y社設立当時、勤務先からの給与、Zグループ各社からの役員報酬、所有していた土地の売却代金により多額の預貯金があったこと(中略)からすれば、Y社設立の際に発行された200株の株式は、X₂が全て引き受けたものと推認される。   

 (中略)Y社の主張を検討しても、設立時に200株を引き受けたのがX₂であるとの(中略)推認を左右する事情は認められないから、同人がY社設立時にY社株式200株を取得したと認められる。

 3 争点(4)(一郎とX₂がした合意等により、Y社の株式が移転したか)及び争点(5)(X₂からA社への株式譲渡の有無)について   

   (中略)X₂は、設立時にY社の株式200株を取得していた。   

   したがって、各株式譲渡契約書のうち、譲渡人をX₂とする100株分は、(中略)株式譲渡契約書が締結され、各譲受人から取得する株式数に応じた資金が拠出され、この資金をY社の資本の実態を整えるために用いるとの合意に基づきX₂がY社に提供したことにより、各譲受人には、同契約書記載の株式が有効に移転したと認められる。   

   また、株式譲渡契約書のうち、譲渡人を太郎とする100株分は、実際にはX₂の株式であったが、X₂は、この100株分は自分のものだと思うが、太郎のものかもしれないと考えながらも(中略)、株式譲渡契約書上は、太郎の100株と捉えて前記(中略)の合意をしているのであるから、上記株式譲渡契約書は、X₂が、その所有する株式について太郎の名で各譲受人と締結したと評価するのが相当である(太郎の記名下の押印を押捺したのは一郎かX₂かのいずれかであるが、一郎が押捺していたとしても、両者間には上記合意があるから、上記のとおり、X₂が、その所有する株式について太郎の名で各譲受人と締結したと評価される。)。この譲渡人を太郎とする100株分についても、譲渡人をX₂とするものと同様に、各譲受人から取得する株式数に応じた資金が拠出され、この資金をY社の資本の実態を整えるために用いるとの合意に基づきX₂がY社に提供したことが認められるから、各譲受人には、同契約書記載の株式が有効に移転したと認められる。   

   以上によれば、一郎とX₂がした合意及び株式譲渡契約書の作成等(中略)により、Y社の株式は、X₂から、被控訴人春子、被控訴人夏子、被控訴人秋子、被控訴人会社及びA社に各20株(株式譲渡契約書上の譲渡人をX₂とするもの)、竹郎と梅山に各40株、丙川下彦に20株(株式譲渡契約書上の譲渡人を太郎とするもの)がそれぞれ有効に移転したと認められる。   

   そして、Y社は設立後現在に至るまで株券を発行しておらず(中略)、株券不発行期間が長期間に及んでいること、Y社も、平成15年11月に開催された臨時株主総会や同年9月30日を期末とする確定申告書で、各株式譲渡契約書に記載された各譲受人を株主として取り扱っていること(中略)からすれば、上記株式譲渡移転の効力は、Y社に対しても及ぶと解される。

 4 争点(2)(本件各決議が不存在か)

 ⑴ 前記3の検討によれば、平成22年総会の決議当時及び平成26年総会の決議当時の株主であったと認められる被控訴人春子、被控訴人夏子、被控訴人秋子及び被控訴人会社は、上記各決議の不存在確認の訴えにつき原告適格がある。また、X₂は、上記各決議当時は株主ではなかったが、平成15年8月21日にY社の取締役に選任され、平成22年株主総会では再選されなかったことが認められる(中略)のであり、X₂は、上記各決議の不存在確認の訴えが認容された場合には、自己の取締役の地位が回復されることになるから、X₂にも原告適格がある。

 ⑵ 平成22年総会の決議が不存在であるか

 ア 平成15年の株式譲渡によりY社の20株の株主となった丙川下彦は、平成19年8月20日、Y社の取締役会の承認を得て、一郎が代表者を務めるM株式会社(以下「M社」という。)に株式20株を譲渡した(中略)ことから、平成22年総会当時のY社の株主は、竹郎40株、梅山40株、A社20株、M社20株と、被控訴人春子20株、被控訴人夏子20株、被控訴人秋子20株、被控訴人会社20株(以下、上記株主である被控訴人らを「被控訴人株主ら」という。)である。    

  そして、平成22年総会は、被控訴人株主らには招集通知を発せず、同人らが同総会に出席することもなくされたものである(中略)から、同総会の招集手続には瑕疵があると認められる。

 イ もっとも、平成22年総会の決議は、Y社のその余の株主である、竹郎、梅山、A社、M社が実際に出席し、又は委任状を提出して出席した上で決議されていること(乙6、弁論の全趣旨)、上記出席した株主の持株比率は60%であり、仮に被控訴人株主らが出席して、一郎、竹郎、梅山らを取締役に、松子を監査役に選任する議案(第2号議案)に反対したとしても、出席株主の議決権の過半数の賛成により議案が承認可決される蓋然性が高かったことが認められる。
 そうすると、平成22年総会は、(中略)招集手続に瑕疵があるものの、株主総会を開催した事実がないとまではいえず、また、招集手続の違法性が著しく、法的に株主総会決議の存在が認められないともいえないから、平成22年総会の決議が不存在であるとは認められない。

 ⑶ 平成26年総会の決議が不存在であるか

 ア 平成26年総会は、被控訴人株主らに招集通知を発せず、同人らが同総会に出席することもなくされたものである(中略)から、同総会の招集手続には瑕疵があると認められる。

 イ もっとも、平成26年総会の決議は、Y社のその余の株主である。竹郎と梅山、一郎の経営する会社(A社、M社か、同社らから株式の譲渡を受けた会社)が実際に出席し、又は委任状を提出して出席した上で決議されていること(中略)、上記株主の持株比率は60%であり、仮に、被控訴人株主らが出席して、一郎、竹郎、梅山らを取締役に、松子を監査役に選任する議案(第2号議案)に反対したとしても、出席株主の議決権の過半数の賛成により議案が承認可決される蓋然性が高いことが認められる。
 そうすると、平成26年総会の決議も、平成22年総会の決議と同様に、不存在であるとは認められない。

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