
2023.10.27
(H26-⑹)
日本高速物流株式会社(以下「高速物流」という。)の株主である控訴人らは、同社における普通株式の全部取得条項付種類株式への転換及び当該全部取得条項付種類株式の会社による取得についての株主総会決議(以下「本件決議」という。)の取消しを求めて訴えを提起した。
第1審判決は、株主総会決議取消訴訟の原告適格の要件は、口頭弁論終結時に当該会社の株主であることであり、取消判決確定までは本件決議は有効であると扱われ、控訴人らは株主でないと扱われることなどから、控訴人らには原告適格がないと判断し、訴えを却下した。
これに対し、控訴人らが控訴を提起した。
なお、本件決議後、高速物流は日本郵便逓送株式会社(以下「郵便逓送」という。)に吸収合併され、控訴人らもこの合併の効力は争っていない。
ア 原告適格の有無
株主総会決議により株主の地位を奪われた株主は、当該決議の取消訴訟の原告適格を有する。決議が取り消されれば株主の地位を回復する可能性を有している以上、会社法831条1項の関係では、株主として扱ってよいと考えられるからである。
イ 合併無効の訴えがないことが決議取消訴訟に与える影響
高速物流の郵便逓送への吸収合併について合併無効の訴えが法定の期間内に提訴されていないから、この吸収合併は、たとえ高速物流の株主である控訴人らへの招集手続を欠く高速物流の株主総会において合併契約の承認決議がされたという瑕疵があるとしても、もはやその効力を争うことはできず、有効な合併として扱われるべきことが、対世的に確定している。これによれば、高速物流は、控訴人らがその株主ではないことを前提とする合併契約により郵便逓送に吸収されて消滅(解散・会社法471条4号)したものであり、控訴人らは、もはや、この吸収合併の効力を争うことはできない。そして、有効として扱われる合併契約については、控訴人らは、何らの合併対価の交付も受けないことになっている。
そうすると、本件決議を取り消したとしても、控訴人らには、高速物流又は郵便逓送の株主の地位等、対世的に確認すべき権利、地位がないことに帰する。したがって、本件決議取消訴訟は、訴えの利益を欠くものとして不適法である。