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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主、取締役の地位の喪失について争われた事例(7件)一覧 > 原告の株主たる地位確認請求、株主総会決議不存在確認請求、計算書類等の交付請求等がいずれも認容された事例(水戸地土浦支判平29・7・19 金融・商事判例№1539・52)
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原告の株主たる地位確認請求、株主総会決議不存在確認請求、計算書類等の交付請求等がいずれも認容された事例(水戸地土浦支判平29・7・19 金融・商事判例№1539・52)

2023.10.19

(H31-⑴)

① 事案の概要

 株式会社であるY₁の設立に当たり、発起人たるXが設立時発行株式60株のうち30株を引き受けたが(以下「本件株式」という)、同株式に係る出資金(以下「本件出資金」という)については、Xに代わって株式会社Y₂が払い込んだ。

 なお、Y₃は平成24年10月17日からY₁の代表取締役であり、またY₄は、Y₁の発起人として同社の設立時発行株式の半数30株を引き受けた株主であって、Y₁の取締役も務めている。

 平成27年10月21日、Y₁の定時株主総会(以下「本件株主総会」という)が開催され、決算報告書を承認する旨の議案が可決されたが(以下「本件承認決議」という)、この際、Y₁は、本件株式の出資者は、立替え払いをしたY₂であって、Xは名目的な株主に過ぎないとして、Xに株主総会の招集通知を送付せず、その結果、Xは本件株主総会に出席していなかった。

 以上の事実関係の下に、Xは、本件株式に係る株主はXであると主張して、Yらに対し、以下の通りの訴えを提起した。

 

 ① XがY₁の株主であることの確認

 ② Xに招集通知をせず、Xが出席せずに行われた本件承認決議が存在しないことの確認

 ③ Xの株主権を否定するYらの取扱いが違法であることを理由とする合計55万円の損害賠償請求(慰謝料50万円、弁護士費用相当損害金5万円)

③ 判決要旨

⑴ XはY₁の設立時に同社の株主であったか否か(争点①)について

 

 ア Xは、本件出資金を、Y₂がXの代わりに立替払いする方法で調達したが、 XはY₁の発起人であり、X名義で本件株式を取得した。Y₁は、平成20年ないし平成21年の事業年度において、Xを株主と扱っていた。しかし、平成23年ころ以降、XとY₄ないしY₂との関係が悪化し、両者間の紛争は、Y₂がXに対し別件訴訟を提起するまでになった。こうした中、平成27年10月21日に開催された本件株主総会に先立ち、Y₁は、Xの株主の地位を否定して、Xに対し招集通知を発せず、また、Y₂は、平成28年4月5日、Y₃及びY₄と連名で、本件株主総会の開催日をもって、本件株式はY₂の所有であるなどと通知した。

   この経緯中、XがX名義で本件株式を取得したこと、Y₁は、Xを株主として扱っていたが、本件株主総会の時点でこれを転換し、Xの株主の地位を否定するに至ったことが認められる。そうすると、XはY₁の設立時に同社の株主であったと認めることができる。

 イ これに対し、Yらは、最高裁昭和42年11月17日第二小法廷判決(民集21巻9号2448頁)等を参照して、名義人ではなく実際に対価を提供した行為者が株主と認定されるべきであると主張する。

   しかし、上記は、他人の承諾を得てその名義を用いて株式の引受がされた場合においては、名義貸与者ではなくて、実質上の引受人が株主となる旨の判例である。これに対し、本件は、Y₂がXの名義を用いて株式の引受をしたわけではなく、XがY₂に引受名義を貸与したものでもないから、判例とは事案が異なり、Yらの主張は失当というべきである。

 ウ そして、Xが本件株式を譲渡ないし放棄するなどした形跡はうかがわれず、YらがXの株主の地位を否定したことに合理的な理由は見当たらない(YらはXが主張する相殺の効力を争うが、仮に相殺が不成立であるとしても、Y₁の設立時におけるXの株主の地位が否定されるものではない。)。したがって、Xは、現在、本件株式(Y₁の発行済株式の2分の1の株式)を有する株主であると認めることができる。

   また、本件株主総会は、発行済株式の2分の1を有する株主であるXに対する招集通知を欠いており、手続上の瑕疵が著しく、法律上の株主総会と評価することができない。したがって、本件承認決議は存在しないというべきである。

   さらに、Xは、Y₁に対し、会社法442条3項に基づく計算書類等の交付請求権及び閲覧請求権が認められる。

 エ 上記ウのとおり、YらがXの株主の地位を否定したことに合理的理由は認められない。Y₂がY₃及びY₄と連名で発した本件通知等は、違法なものであり、Yらに不法行為が成立するというべきである。

   証拠(中略)及び弁論の全趣旨によれば、Yらの不法行為により、Xは精神的苦痛を被ったということができる。その苦痛を慰謝するに足りる額は、本件に現れた一切の事情を考慮して、50万円を認めるのが相当である。また、Yらの不法行為と相当因果関係のある弁護士費用の額は5万円である。

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