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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主、取締役の地位の喪失について争われた事例(7件)一覧 > 会社の代表権を欠く者による提訴であるとして訴えが却下された事例(大阪地判平30・2・20 商事法務№2274・81)
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会社の代表権を欠く者による提訴であるとして訴えが却下された事例(大阪地判平30・2・20 商事法務№2274・81)

2023.10.18

(R4-⑻)

① 事案の概要 

   Aは、自らがXの代表者であると主張して、Y銀行に対してX社名義の預金の払い戻しを求めた。

   本件の本質はX社の代表権を巡る争いにあり、Aは、①主位的には、本件訴え提起時にAがXの代表権を有していた(以下、この主張を「X主張①」という。)、②予備的には、訴え提起時にXの代表権を有していたのがAではなくZ(被告補助参加人)であったとしても、本件訴え提起後にXの過半数の取締役であるC及びDが会社の業務(具体的には、弁護士に本件訴訟を委任し、それに基づく委任状を作成すること)を決定したため、その結果として、Xの過半数の取締役は代表取締役に代わってX代表取締役名義で委任状を作成することができる(以下、この主張を「X主張②」という。)等と主張し、Yがこれを争った。

② 判決要旨 

 1 争点(1)(本件訴え提起時にAがXの代表権を有していたか否か〔X主張①の当否〕)について  

   Xは、本件訴え提起時にAがXの代表権を有していた旨主張し、その理由として、Aは平成29年6月23日に開催されたXの臨時株主総会において代表取締役に選定されたところ、上記臨時株主総会は、Xの発行済株式全部を有するEに対して招集の通知を発して開催されたものであって、同臨時株主総会におけるAを代表取締役に選定する旨の決議は、有効に存在していることを挙げる(X主張①)。  

   そこで検討すると、平成29年6月23日開催のXの臨時株主総会は、Eに対して招集の通知を発して開催されたものである(中略)。そして、①Eが同日当時Xの発行済株式全部又は過半数程度を有する株主であったことを裏付けるに足りる客観的な証拠が提出されていないこと、②本件訴え提起後に、京都地方裁判所宮津支部が、Zの申立て(株主総会決議不存在確認請求権に基づく申立て)を相当と認め、AがXの代表取締役の地位にないことを仮に定め、ZがXの代表取締役の地位にあることを仮に定める旨の仮処分決定をし、同仮処分決定に基づきAを代表取締役とする登記が抹消されてZを代表取締役とする登記が回復されたこと(中略)、③平成23年~平成27年の同族会社等の判定に関する明細書(このうちXの株主等の株式数等の明細)においてEがXの株式を有している旨の記載が全くないこと(中略)、④京都地方裁判所宮津支部平成29年(ヨ)第1号職務執行停止・代行者選任仮処分申立事件において、Aは平成24年12月頃にZからXの株式90株を代金450万円で買い受けた旨主張したが(なお、この主張は、本件訴訟における主張とは異なる。)、同支部は、AがZから実質的な株主としての権利を取得したとは認めるに足りないなどと認定判断したこと(中略)、⑤別紙3の1(1)の民事訴訟においてG・X・Z間でGがXの株主ではないとされたこと(中略)等の事実を総合すれば、Xの株主構成の一部になお不確定な面がないわけではないとしても、少なくともEが当時Xの発行済株式全部又は過半数程度を有する株主であったことを認めることは困難である。したがって、同臨時株主総会におけるAを代表取締役に選定する旨の決議は、株主に対する招集通知がされていないことが明らかであって、不存在であるというべきである(中略)。  

   したがって、Aが平成29年6月23日に開催されたXの臨時株主総会において代表取締役に選定されたとは認められず、本件訴え提起時にAがXの代表権を有していたとは認められない。そして、AがXの代表取締役として本件訴訟又は支払督促を(中略)弁護士に委任する旨の同年7月31日付け委任状(中略)は、AがXの代表取締役であったとはいえないため、有効なものとはいえず、美根弁護士の訴訟代理権は欠けていることになる(中略)。Xの上記の主張は、採用することができない。

 2 争点⑵(本件訴え提起時にXの代表権を有していたのがAではなくZであったとしても、本件訴え提起後にXの過半数の取締役であるC及びDが会社の業務〔具体的には、弁護士に本件訴訟を委任し、それに基づく委任状を作成すること〕を決定したため、その結果として、Xの過半数の取締役は代表取締役に代わってX代表取締役名義で委任状を作成することができるか否か〔X主張②の当否〕)について

  Xは、本件訴え提起時にXの代表権を有していたのがAではなくZであったとしても、本件訴え提起後にXの過半数の取締役であるC及びDが会社の業務(具体的には、(中略)弁護士に本件訴訟を委任し、それに基づく委任状をC及びDが作成すること)を決定したため、その結果として、Xの過半数の取締役は代表取締役に代わってX代表取締役名義で委任状を作成することができる旨主張する(X主張②)。

   しかし、C及びDは、平成29年3月28日に開催された臨時株主総会において、Xの取締役を解任されている(中略)。また、その点を措くとしても、Xのような取締役会設置会社以外の株式会社において、取締役の中から代表取締役が選定された場合、他の取締役が有する権限は対内的な業務執行権にとどまるのであって、会社の対外的な業務執行権である会社の業務に関する一切の裁判上及び裁判外の行為をする権限は代表取締役にあると解されるから(会社法349条4項。Xの定款28条において、「当会社の業務は、取締役の過半数をもって決定する。」とされているのは、飽くまでXの対内的な業務執行権を定めたものと解される。)、取締役の対内的な業務決定が直ちに対外的な業務執行権の行使に該当するものではなく、取締役の過半数が代表取締役に代わって対外的な業務執行権を行使することはできないと解するのが相当である。そうすると、本件訴え提起後にXの過半数の取締役であるC及びDが会社の業務(具体的には、(中略)弁護士に本件訴訟を委任し、それに基づく委任状をC及びDが作成すること)を決定したとしても、その決定が直ちに対外的な業務執行権の行使に該当するものではなく、取締役の過半数であるC及びDが代表取締役であるZに代わって対外的な業務執行を行使する権限(具体的には、X代表取締役名義で委任状を作成することができる権限)を有するものではないというべきである(中略)。

   したがって、本件訴訟を(中略)弁護士に委任する旨の平成29年10月20日付け委任状((中略))はZの意思に基づいて作成されたもの(つまり真正に成立したもの)とはいえず、美根弁護士の訴訟代理権は欠けていることになる。Xの上記の主張は、前提を欠くか、又は独自の見解に基づくものであって、採用することができない。

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