
2023.10.19
(R2-⑷)
Xは、Xの弟と母親が代表取締役を務めるA株式会社(以下「A社」という)について、代表権を有しないYが、A社を代表して、子会社株式の買戻契約を締結する等したことから、A社は、Yに対し、不当利得返還請求権(以下「本件不当利得返還請求権」という)を取得したところ、かかる債権をA社からXが譲り受けたと主張して、債権者としてYの破産手続開始申立てを行った。申立てを受けた裁判所は、Yが支払不能状態にあるとして破産手続開始決定をしたところ、Yが、本件不当利得返還請求権の有無等を争い、即時抗告を申し立てた。
なお、A社の平成23年総会議事録には、Yのほか取締役が出席し、Xの母親を含む辞任の申出をした取締役の後任として、Yが選任されたと記載され、その旨の登記もされていた。
「A社の平成23年株主総会の議事録には、Yのほか取締役等が出席したと記載されているが、(中略)、当該議事録の記載を以て、平成23年総会が開催された事実を裏付けるものとはいえない。その他平成23年総会の開催の事実を認めるに足りる的確な証拠はない。
そうすると、平成23年総会が開催されたとは認められないから、平成23年総会決議は不存在というべきであり、Y及びCが平成23年総会決議により取締役に選任されたとは認められない。また、取締役ではないYが代表取締役に選任されることもない。(中略)
以上によれば、A社では、平成23年総会から平成27年5月18日の株主総会までの取締役選任決議はいずれも不存在であり、これに対応する取締役の就任及び重任の登記は実態がなく、Yの代表取締役の就任及び重任の登記も同様である。(中略)
B社株式買戻契約及び平成26年消費貸借契約は、YがA社の代表取締役でないのに、YがA社の代表取締役として締結したものであるから、無効であると認められる。そして、Yは、A社からB社株式買戻契約の代金として18億9924万6000円を、平成26年消費貸借契約の貸金として4億円をそれぞれ受領しているから、A社はYに対して本件不当利得返還請求権(中略)を有していたと認められる。」