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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例議決権の行使について争われた事例(11件)一覧 > 株式振替制度を利用する会社における少数株主権の行使方法が違法であるとして決議の取消請求が棄却された事例(大阪地判平24・2・8 金融・商事判例№1396・56)(株式会社三ツ星)
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株式振替制度を利用する会社における少数株主権の行使方法が違法であるとして決議の取消請求が棄却された事例(大阪地判平24・2・8 金融・商事判例№1396・56)(株式会社三ツ星)

2023.11.07

(H-25⑴)

① 事案の概要

 株式振替制度を利用する株式会社三ツ星(以下、「被告」という)において、原告である少数株主が定時株主総会における議題及び議案の提案をするため、口座管理機関である証券会社に対して個別株主通知の申出をするとともに、被告に対して議題及び議案の要領を株主総会招集通知に記載するよう求めた。後日、振替機関が被告に個別株主通知をしたが、通知の日が株主総会の日の8週間前を過ぎていた。

 被告は、①株主総会の日の8週間前までに個別株主通知がなされていないこと及び②株主提案に先立って個別株主通知がなされていないことを理由として株主提案を招集通知に記載しなかったため、原告は、招集手続に違法があるとして決議取消訴訟を提起した。

 なお、原告は被告の取締役であったところ、原告が提案した議題及び議案は、原告を含めた3名の候補者を取締役に選任することである。問題となった定時株主総会で原告は取締役に再任されなかったため、任期満了により退任した。

② 判決要旨

ア 個別株主通知の要否について

 個別株主通知は、社債等振替法上、少数株主権等の行使の場面において株主名簿に代わるものとして位置付けられており(社債等振替法154条1項)、「少数株主権等」を行使する際に自己が株主であることを会社に対抗するための要件である(最決平成22年12月7日・民集64巻8号2003頁)。

 そして、社債等振替法154条が、会社法130条1項の規定を適用せず、振替株式についての少数株主権等の行使に個別株主通知を要するとした趣旨は、株主名簿の書換が、原則として、年2回行われる総株主通知(社債等振替法151条)を受けた場合にしか行われないため(同法152条)、総株主通知がされる間に振替株式を取得した者が、株主名簿の記載又は記録にかかわらず、個別株主通知により少数株主権等を行使することを可能にすることにある。

 したがって、少数株主権等である株主提案権の行使に際し、個別株主通知が必要であることは明らかである。

イ 個別株主通知の時期について

 会社法上、株主が、公開会社に対し、株主総会の日の8週間前までに会社法303条1項及び同法305条1項所定の株主提案権を行使することができるとの要件が定められている趣旨は、当該会社は、株主から株主提案権の行使を受けた場合、当該株主による追加議題及び議案の要領を招集通知に記載た上で株主総会の日の2週間前まで発しなければならないことから(同法299条1項、同条3項、同条4項、298条1項)、当該会社の準備期間を確保することにある。

 そして、振替株式について、株主提案権を行使した株主の株式継続保有要件を確認する方法として、振替口座簿の株式の増減の記載がされた個別株主通知によることが予定されている。

 したがって、会社としては、個別株主通知をもって、まず、株主が株式継続保有要件を満たすかを確認することになるから、遅くとも株主提案権の行使期限である株主総会の日の8週間前までに個別株主通知がされることが必要である。

 他方、株主は、振替機関から発行会社に対して個別株主通知がいつされるのかを申し出時点において正確に把握することはできないことから、株主提案権の行使に先だつ個別株主通知を要求するのは酷であり、株主提案権の行使に先立って個別株主通知がなされる必要があるとまではいえない。

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