
2023.10.30
(R5-⑺)
Y社は、令和2年6月24日開催の定時株主総会(以下「本件株主総会」という)において、Y社株式等の大規模買付行為に関する対応策(「以下「本件買収防衛策」という)を継続する旨の議案(以下「本件議案」という)を可決した(以下「本件決議」という)。
本件決議に当たり、Y社の株主であるXは、令和2年6月22日、上記議案に反対する旨の議決権行使書面188通(以下「本件議決権行使書面」という)を郵便局の窓口へ提出したものの、本件議決権行使書面は、書面による議決権行使の期限後に提出されたものであるとして、本件決議において集計の対象から除外された。
そこで、Xは、本件議決権行使書面を出席議決権の議決権数に算入しなかった決議方法には法令違反があると主張して、本件決議の取り消しを求めて提訴したところ、原審がこれを棄却したため、Xが控訴したのが本件である。
控訴審は、次の通り述べ、原審を取り消して、訴えの利益の喪失を理由にXの請求を却下する旨を判示した。
1 認定事実
(中略)証拠及び弁論の全趣旨によれば、次の各事実が認められる。
⑴ 本件決議は、本件買収防衛策の有効期間を本件株主総会の日から1年以内に終了する事業年度のうち最終のものに関する定時株主総会終結の時までとするものであった(中略)。
⑵ 令和3年6月24日、Y社の第70期定時株主総会が開催され、「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)継続の件」を可決する旨の決議がされ、終結した。(中略)
2 判 断
株主総会決議取消の訴えは、形成の訴えであり、法律の規定する要件を充たす限り、訴えの利益が存するのが通常であるけれども、その後の事情の変化により、その利益を欠くに至る場合がある。
これを本件についてみるに、前記1の認定事実のとおり、本件決議が内容とする本件買収防衛策の有効期間は、原審口頭弁論終結後の令和3年6月24日にY社の第70期定時株主総会が開催され、終結したことによって、満了しており、Y社の第70期定時株主総会において、「当社株式等の大規模買付行為に関する対応策(買収防衛策)継続の件」を可決する旨の決議がされたのであるから、本件買収防衛策が既に失効しているにもかかわらず、これを可決した本件決議を取り消すことに具体的な実益があるという特別の事情がない限り、本件訴えは、本件買収防衛策の有効期間満了により訴えの利益を欠くに至ったというべきである。
そして、Xは、上記特別の事情があることについて、何ら主張立証しないし、一件記録を検討してもそのような特別の事情があるとは認められない。
したがって、本件訴えは、既に訴えの利益を欠くに至っており、不適法といわざるをえないものである。