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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例議決権の行使について争われた事例(11件)一覧 > 執行役に対して株主総会における特定の取扱いを禁止する仮処分命令申立が認められなかった事例(東京高決令元・6・21 商事法務№2250・63)(株式会社LIXILグループ)
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執行役に対して株主総会における特定の取扱いを禁止する仮処分命令申立が認められなかった事例(東京高決令元・6・21 商事法務№2250・63)(株式会社LIXILグループ)

2023.10.18

(R3-⑹)

① 事案の概要

 L社の株主であるXらは、同社定時株主総会の開催に際し、会社提案にかかる取締役候補者とは別の候補者を取締役に選任すべき旨を提案していた。

 L社側は、委任状勧誘を行ったところ、同社が作成した委任状勧誘に関する説明資料(以下「本件依頼書面」という)には、会社提案に賛成し、株主提案に反対する旨の委任状を議決権行使書と共に返送するよう依頼する旨の記載があり、その趣旨が記載された部分の下方には、「当社による勧誘の趣旨・・・に合致しない委任状については、当社としてお取り扱いいたしかねますので、予めご了承下さい」との注意書きがあった。

 こうしたことから、Xらは、L社の代表執行役であるYが、定時株主総会における議決権行使に関し、次の行為が行うことを懸念し、これらを仮に差し止める旨の仮処分命令の発令を申し立てた。

 

① 株主が委任状と議決権行使書を提出した場合に、それが会社提案に賛成する委任状であるか否かによって、当該委任状の受任者を委嘱するか否かを区別する行為(以下「本件行為1」という)。

② 株主が株主提案に賛成する委任状と賛否の表示のない議決権行使書の双方を提出した場合に、議決権行使書をもって会社提案に賛成の議決権行使と認め、又は、当該株主を棄権したものとして取り扱う行為(以下「本件行為2」という)。

 原審である東京地方裁判所がXらの請求を認めなかったため、Xがこれを不服として即時抗告したのが本件である。

② 判決要旨

  以下は、抗告審決定が原決定を補正したものである。

 ⑴ 本件行為1について  

 「Yは、(中略)本件各書類を株主に送付することにより、L社の株主に対して、会社提案の議案に賛成する旨の議決権行使を勧誘し、会社提案に賛成する議決権を行使するための方法を説明するとともに、その議決権行使に反する記載のある本件委任状書面については取り扱わない旨(中略)を本件以来書面に明記しているのであり、他方、株主提案に賛成の議決権行使を行うものは、本件議決権行使書面及び委任状のうち、本件議決権行使書面に株主提案に賛成の旨を記載して返送することにより、容易に株主提案に賛成の議決権行使ができるのであって、(中略)、株主が相当の注意を以て本件各書類を読めば、それを理解できるというというべきである。そうすると、(中略)、L社による勧誘の趣旨に合致しない委任状を提出した株主につき、一律に同委任状の指示に従った議決権行使が行われるように取り計らう義務が生じると解することは相当でない。」

 ⑵ 本件行為2について  

 「無記載の議決権行使書面がL社に返送された場合には、(中略)、当該株主により第一号議案及び第二号議案に賛成並びに第三号議案に反対の議決権行使の表示があったといわざあるを得ない。仮に、株主提案賛成の委任状がL社に同時に返送されたときに、それをもって、本件議決権行使書面の表示と株主の内心が異なると認定できる場合があるとしても、本件議決権行使書面の表示を上記と異なるものと解することはできない上、表示と内心の齟齬、ひいては錯誤の成否の問題は、当該個々人の認識や具体的状況において個別に評価、判断されるべき事柄であり、予め包括的、抽象的に判断することになじまない性格を有するから、現時点で、錯誤の成否等につき議論することはそもそも相当でない。

 ⑶ 抗告審における補足

  Xらの抗告理由に鑑み補足する。

    (本件行為1について) 

 「L社の代表執行役たるYは、(中略)、議決権行使に関して実際に各株主がとった行動につき、一定の合理的な基準を設けつつ、事前に予想しきれない個々の事例については、合理的意思解釈や公平性等に照らして個別にその取扱いを決めることにより、善良な管理者としての注意義務を履行することになるというべきであって、本件株主総会に先立つ現段階において、(中略)本件行為1につき一律にこれを法令に違反するものであるということはでき(中略)ない。」 

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