
2023.10.25
(H28-⑴)
株式会社大分フットボールクラブ(以下「被控訴人会社」という)は、全部取得条項付種類株式制度を用いて、既存株式の全てを強制的に無償で取得した(以下「本件株式取得」という)。
これに対し、被控訴人の株主である株式会社朋(以下「控訴人会社」という)及び同社の代表者(以下「控訴人代表者」という)が、被控訴人会社及び同社の代表者(以下「被控訴人代表者」という)に対し、上記株式取得は、少数株主を適正な対価も与えることなく不当に排除するものであり、その財産権(憲法29条1項)を違法に侵害するスクイーズ・アウト(少数株主の締め出し策)であって許されない等と主張して、以下の訴えを提起した。
ア 被控訴会社に対して、本件株式取得の実施等を内容とする被控訴人会社株主総会決議について、主位的に無効であることの確認、予備的に取消しを求める
イ 控訴人会社が、被控訴人代表者に対し、会社法429条1項に基づき損害賠償の支払いを求める
ウ 控訴人代表者が、被控訴人代表者に対し、会社法429条1項に基づき損害賠償の支払いを求める
原判決は、控訴人らの請求をいずれも棄却したので、控訴人らがこれを不服として控訴した。
控訴人らは、本件においては、会社法172条の取得価格決定の申立てによってはその利益が保護されないので、全部取得条項付種類株式を用いて100パーセント減資を行うには「正当事由」を要する旨主張する。しかし、全部取得条項付種類株式に関する会社法の各規定(108条、111条2項、171条)は、控訴人ら主張に係る諸事情に配慮した定めを置いていないのであって、これらの規定が、種類株式発行会社に会社法461条所定の分配可能額が存するか否かに応じ、異なる規制を設けていると解することはできないから、控訴人らの上記主張は採用できない(なお、被控訴人Y1社に会社法461条所定の分配可能額が存しない以上(控訴人らも自認している。)、会社法172条の取得価格決定制度による救済が得られなかったとしても、このことが憲法29条1項との関係で問題となるものではない。)。(中略)
以上の次第で、原判決は相当であって、本件各控訴はいずれも理由がない。よって、これらを棄却することとして、主文のとおり判決する。