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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会の決議の有効性が問題となった事例(22件)一覧 > 取締役会への取締役以外の者の出席・発言が、取締役会決議及びそれに引き続く株主総会決議の効力を否定すべき事由とはならないとした事例(東京高判令元・12・5 商事法務№2250・64)
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取締役会への取締役以外の者の出席・発言が、取締役会決議及びそれに引き続く株主総会決議の効力を否定すべき事由とはならないとした事例(東京高判令元・12・5 商事法務№2250・64)

2023.10.18

(R3-⑺)

① 事案の概要

 Yの取締役Aは、同社の臨時取締役会(以下「本件取締役会」という)を招集し、次の決議を行った。

   ①X₁及びX₂をYの代表取締役から解職すること。

   ②Yの臨時株主総会を開催すること。

   ③上記②の臨時株主総会の目的を、取締役1名の選任の件とすること。

 なお、本件取締役会においては、X₂が議長を務めていたところ、Aが、B及びC弁護士の同席を求め、X₂はこれを認めない旨述べた。こうした中、Dが議長不信任及びAへの議長交代を求める動議を提出し、Aら5名がこれに賛成したため、議長となったAが、B及びC弁護士を同席させる旨を述べた。これを受けてX₂は退席し、他方、B及びCは、取締役会の席上、進行について意見を述べる等した。

 その後、上記②に基づいて、Yの臨時株主総会が開催され、Bが取締役に選任された(以下「本件定時株主総会決議」という)。

 こうしたところ、X₁及びX₂は、本件取締役会決議の無効確認を求めるとともに、本件取締役会決議が無効であるがゆえに、本件株主総会決議には取消事由があると主張して、同決議の取消訴訟を提起した。

 原審の東京地方裁判所がこれを棄却したため、これを不服としたXらが控訴したのが本件である。

② 決定要旨

 ⑴ Xらは、Bが出席、発言し、C弁護士が出席のため待機しているなどの極めて異常な事態において、控訴人X₂が、本件取締役会においては正常な審議ができないと判断して開催不可能の趣旨で閉会宣言をし、仮に開会されたとみるとしても閉会宣言により終了したものであると主張する。  

   しかし、本件取締役会が開会されたとみるべきであることは原判決の説示するとおりである。また、(中略)、Bは平成30年6月20日の被控訴人の取締役会に途中から出席し、議論に加わったが、その際、本件株主間協定書を巡って紛糾するなどしたものの、取締役会が途中で打ち切られるようなことはなかったのであって(中略)、Bが出席することによって本件取締役会において正常な審議が困難であったと認めるべき事情は見当たらない。かえって、同月25日の被控訴人の第64回定時株主総会においては、取締役の選任を議題として取り上げるべきか否かについて議論がされたところ、控訴人X₂は、改めて取締役会を開くことを宣言して株主総会の閉会を宣言したものであり(中略)、その後Aが取締役会の開催を請求した際には、控訴人らに対し、取締役2名解任及び取締役1名選任を議題として臨時株主総会を開催すべきことを取締役会の議題として示していたのであるから(中略)、被控訴人の取締役会において早晩その議決をせざるを得ない状況に立ち至っていたものというべきであり、X₂のした本件取締役会の閉会宣言は、議長の交代を回避し、ひいては、上記議決を回避するために議長としての権限を濫用してされたもので無効といわざるを得ない。  

   したがって、Xらの上記主張は採用することができない。

 ⑵ Xらは、取締役会に取締役以外の者を出席させる場合には取締役会の事前の決議による承認が必要であるのに、本件取締役会においてはそのような承認のないままB及びC弁護士が出席、発言しており、そこにおいてされた本件取締役会決議は無効であると主張する。  

   しかし、(中略)証拠(中略)によれば、控訴人らの退室後、B及びC弁護士の同席については、その場に残った取締役が異議を述べないまま本件取締役会が継続し、HがC弁護士には発言を控えてもらいたいと述べるにとどまったものであるから、B及びC弁護士が本件取締役会に出席、発言していたとしても、そのことのみをもって、そこでされた本件取締役会決議が当然に無効になるということはできない。  

   なお、証拠(中略)によれば、議長等の履行補助者といえない者については、事前の取締役会決議がなければ取締役会に出席することはできず、たとえば、取締役間に鋭い反目があり、特定の取締役が弁護士を自分のアドバイザーとして取締役会に同席させたというような場合などには、事前の取締役会決議なしに弁護士等が取締役会に出席した場合には、その取締役会でされた決議には瑕疵があることになるとの見解が主張されていることが認められる。しかし、C弁護士については、議長になったAが同弁護士を同席させる旨述べているところ、同弁護士の発言は取締役の発言の趣旨を確認した上で議論を整理し、取締役からの質問に対してAが特別利害関係人に該当するなど法律的な観点からの助言を行うに留まっていることからすると、議長の履行補助者とみることができるのであって、C弁護士が出席、発言したことによって、本件取締役会決議が当然に無効になるということはできない。  

   また、Xらは、B及びC弁護士の出席、発言が本件取締役会決議に重大な影響を及ぼしたことは明白であるから、本件取締役会決議には重大な瑕疵があり無効であると主張する。  

   しかし、前記認定事実によれば、Yの取締役会においては、もともと、Yの普通株式を保有する8名が取締役として選任されるべきであるとの立場に立つA、D、E、Fに、本件株主間協定書やXらが被控訴人の代表取締役に選任された経緯について不満のあるGを加えた5名と、Yの取締役の選任については本件株主間協定書によるべきであるとする控訴人ら及びこれに同調するI、Hの4名との間に対立があったものと認められるから、B及びC弁護士の同席や発言によってこの状況に変化が生じ得るものではなかったと認められる上、本件取締役会において、Yの取締役の中にB及びC弁護士の出席、発言によって見解を改めた者がいたことをうかがわせる証拠も見当たらない。  

   なお、証拠(中略)によれば、C弁護士が本件取締役会の会場に入室後、『必要があれば代表取締役の解任の動議を出していただければと思います』と述べるまでの間に、取締役の誰からも代表取締役解任の話題は出ていなかったことが認められるが、C弁護士は、あらかじめAから問題状況を聞いて知っていたと考えられるし、仮にC弁護士が上記発言をしなかったとしても、Yの取締役の選任については本件株主間協定書によるべきであるとするXらの姿勢に不満を持つA、D、E、F及びGのいずれかから上記のような動議が出されることは当然起こり得たものというべきである。また、Bは、本件取締役会において、I及びHの解任を求めるのでなく、任期満了まで取締役をしてもらうという方向での意見を述べ、最終的に第2号議案の内容がそれに沿って変更されているが(中略)、そのこと自体は直接Bの利害に関わることではないし、上記の取締役間の対立状況に照らすと、本件取締役会決議に重大な影響を与えたものということはできない。  

   したがって、B及びC弁護士の出席、発言が本件取締役会決議に重大な影響を及ぼしたものとは認められず、Xらの上記主張は採用することができない。」

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