
2023.10.25
(H28-⑵】
オリンパス株式会社(以下「被告」という)の取締役は、平成25年6月26日に開催された被告の第145期定時株主総会(以下「本件株主総会」という。)において、株主の質問に対し、不正な計算書類を提示して説明を行った。原告は、かかる行為が取締役の説明義務違反に当たる等と主張して、主位的に、会社法831条1項1号に基づき、本件株主総会における前記第1記載の各決議(以下「本件各決議」という。)の取消しを求め、予備的に、会社法830条1項又は2項に基づき、本件各決議の不存在又は無効の確認を求めた。
原告は、被告の会計処理において、a社ののれん代の計上が不適切であるにもかかわらず、本件株主総会において、財務諸表が適正であると説明した被告の取締役には説明義務違反があるとともに、株主に対し、不適切な決算書類を前提として作成した不正な計算書類を提示したことが、「招集の手続又は決議の方法が法令若しくは定款に違反し、又は著しく不公正なとき」(会社法830条1項1号)に当たるとして、本件各決議には取消事由があると主張する。
しかし、そもそも、取締役は、株主から特定の事項に関する説明を求められた場合であっても、株主総会の目的である事項に関しないものである場合には説明義務を負わないものと規定されている(会社法314条ただし書)から、取締役が説明義務を負うというためには、株主からの質問が、直接的又は間接的に、このような株主総会の目的である事項に関するものであることが必要であると解すべきである。また、株主に対する不正な計算書類の提示についても、これが株主総会決議の取消事由に当たるというためには、このような計算書類の提示が、直接的又は間接的に、株主総会決議取消しの訴えにおいて取消しが求められている株主総会の決議事項に関するものであるといえることが必要であると解される。
これを本件についてみると、(中略)、本件株主総会の目的である事項には本件報告事項及び本件決議事項があり、本件各決議はこのうち本件決議事項に関するものであるところ、原告が主張する取締役の説明義務違反に係る原告の質問及び不正な計算書類の提示は、a社ののれん代の計上に係るものであって、本件報告事項のうち本件各計算書類に関連するものであり、また、本件各決議の内容(取締役選任決議、株式報酬型ストックオプションの付与に関する決議及び買収防衛策更新に関する決議)に照らすと、上記の原告の質問及び不正な計算書類の提示が、間接的に本件決議事項に関するものであるということもできない。
よって、原告の主張する被告の取締役の説明義務違反や不正な計算書類の提示を理由とする本件各決議の取消しの請求は、理由がない。(中略)