
2023.10.26
(H27-⑷)
株式会社セゾン情報システムズ(以下「被告」という。)の株主であるロイヤルバンク オブ カナダ トラスト カンパニー(ケイマン)リミテッド(以下「原告RBC」という。)及び自社が運用するファンドについて原告RBCに委託を行っているエフィッシモ キャピタル マネージメント ピーティーイー エルティーディー(以下「原告エフィッシモ」という。)は、被告の株式について大規模買付を行うことを計画し、平成20年8月以降、被告株式の買付を行い、原告RBCが原告エフィッシモの運用するファンドの受託者として購入したものを併せ、同年9月30日までに被告株式の25%以上を取得した。
これを受け、被告は、平成22年12月27日、取締役会において、不適切な者によって被告の企業価値・株主共同の利益に反する大規模買付行為がされることを防止すると共に、被告の株式の買収が行われる際に、被告の取締役会が株主に代替案を提案し、株主が大規模買付行為に応じるか否かを判断するために必要な情報や時間を確保し、又は交渉を行うこと等を可能にする大規模買付ルールを導入することを決議した。
平成24年6月12日、被告は、上記大規模買付ルールに従い、株主総会において、「大規模買付行為の中止要請に関する株主意思確認の件」と題する議案を可決し、株主総会の場において、原告エフィッシモに対し、大規模買付行為を中止するよう要請したところ、原告らが、被告に対し、上記株主総会決議の無効確認を求めて訴えを提起した。
ア 確認の利益の有無についての判断基準
株主総会の決議が無効であることの確認を求める訴えは、当該決議が会社法295条2項所定の事項に関してされたものであるかどうかにかかわりなく、当該決議の法的効力に関して疑義があり、これが前提となって当該決議から派生した法律上の紛争が現に存在する場合において、当該決議の法的効力を確定することが、上記紛争を解決し、当事者の法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ適切であるときは、確認の利益があるものとして許容されると解するのが相当である。
イ 検討
多数の被告株主が本件中止要請をすることについて承認を求める旨の議案に賛成した本件決議の無効確認を求める本件においては、本件決議の法的効力がないことを確定したとしても、被告が対抗措置を発動する可能性は消滅しないし、その可能性が減少するものでもないから、被告株式の買い増しが妨げられているという状況を除去することはできない。したがって、多数の被告株主が株主意思を表明していたにとどまる本件決議の無効確認を求める訴えは、本件決議の法的効力を確定することが、当該決議から派生した現在の法律上の紛争を解決し、原告らの法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ適切であるとはいえないから、確認の利益を欠くものというべきである(なお、本件大規模買付ルールにおいては、具体的な対抗措置として新株予約権の無償割当てを行う場合、対抗措置としての効果を勘案した行使期間、行使条件、取得条件等を設けることがあるなどと規定され、これらについての具体的な内容は明定されておらず、現段階では、これらの対抗措置の必要性や相当性を的確に判断することはできず、いわゆる紛争の成熟性を欠くから、本件決議の効力に関する疑義が前提となって、本件決議から派生した各種の法律関係につき現在紛争が存在し、本件決議の法的効力を確定することが、原告らと被告との間の紛争を解決し、原告らの法律上の地位ないし利益が害される危険を除去するために必要かつ相当であるともいえないことになる。)。