
2023.10.25
(H28-⑸)
株式会社アムスク(以下「被告」という)は、平成25年6月28日、定時株主総会及び臨時株主総会を開催し、それぞれ全部取得条項付種類株式制度を利用したスクイズアウトの実施(以下「本件先行決議1」という)、及び全部取得条項の付加に関する定款の一部変更(以下「本件先行決議2」という)について決議を行い、これが承認可決された。これに対し、原告らは、その取消を求めて提訴したところ(本事例とは別訴である)、第1審は本件先行決議を取り消す旨の判決を下した。
被告はこれを受け、平成26年6月19日付で、平成25年7月21日付時点の株主名簿記載の者に対し、臨時株主総会及び種類株主総会の招集通知を送付した上、同年7月4日、これらの総会を開催し、本件先行決議の取消判決が確定することを停止条件として、被告が原告らの普通株式を全部取得するため、次の決議を行った。
ア 臨時株主総会
(ア) 本件先行決議1を追認する件(以下「本件臨時株主総会決議1」という)
(イ) 全部取得条項付種類株式制度を利用したスクイズアウトの件(以下「本件臨時株主総会決議2」という)
イ 種類株主総会
(ア) 本件先行決議2を追認する件(以下「本件種類株主総会決議1」という)
(イ) 全部取得条項付種類株式制度を利用したスクイズアウトの件(以下「本件種類株主総会決議2」という)
これに対して、原告らは、これらの決議に関し、主位的には不存在確認、予備的には無効確認又は取消しを求め、訴えを提起した。
本件臨時株主総会決議1は先行決議1を追認する旨の決議であり、本件種類株主総会決議1は先行決議2を追認する旨の決議である。そのような内容の決議がどのような法的効果を有するかについては必ずしも明らかではないが、被告が、別件訴訟において、本件臨時株主総会決議1及び本件種類株主総会決議1がなされたことにより、先行決議1及び2の取消しを求める訴えの利益が失われた旨主張していること(中略)などからすれば、本件臨時株主総会決議1及び本件種類株主総会決議1の存否を確認することは、被告における原告らの株主たる地位の存否という法律関係についての紛争を解決し、そのような法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切であると認められる。
したがって、本件臨時株主総会決議1及び本件種類株主総会決議1が不存在であることの確認を求める訴えについては確認の利益があると認められる。(中略)
本件臨時株主総会決議2及び本件種類株主総会決議2は、要するに、先行決議1及び2に基づく本件全部取得の効果が生じなかった場合に、改めて被告の普通株式を全部取得することを目的とする決議であると認められる。すなわち、本件臨時株主総会決議2については前記(中略)停止条件が、本件種類株主総会決議2については前記(中略)停止条件がそれぞれ付され、全部取得の日は上記条件成就の日とされている。全部取得に関する決議について、このような条件を付することが法律上許されるか否かについては措くとしても(会社法172条1項によれば、全部取得に反対した株主等は株主総会の日から20日以内に株式取得価格決定の申立てをすることができる旨規定されているところ、本件においては、本件各総会から20日以内に上記条件が成就していないが、この間に株式取得価格決定の申立てをしなければならないとすれば、申立時において、申立人は株主の地位を有しないこととなる。)、上記条件が成就した場合には、被告において本件臨時株主総会決議2及び本件種類株主総会決議2に基づく全部取得の効力が生じたことを前提とすることが容易に想定されるから、停止条件付きとはいえ、上記各決議の存否を確認することは、被告における原告らの株主たる地位の存否という法律関係についての紛争を解決し、そのような法律上の地位の不安、危険を除去するために必要かつ適切であると認められる。
したがって、本件臨時株主総会決議2及び本件種類株主総会決議2が不存在であることの確認を求める訴えについては確認の利益があると認められる。