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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会の決議の有効性が問題となった事例(22件)一覧 > 取締役に対する報酬の支払いを追認する旨の株主総会決議の取消請求が棄却された事例(東京地判平27・5・26 金融法務事情№2034・84)
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取締役に対する報酬の支払いを追認する旨の株主総会決議の取消請求が棄却された事例(東京地判平27・5・26 金融法務事情№2034・84)

2023.10.25

(H29-⑸)

① 事案の概要

 被告株式会社Y₅は、従前株主総会を経ることなく取締役に対して報酬を支払っていたところ(以下「本件各支払」という)、被告の株主である原告らが、本件各支払がY₅の取締役らの任務懈怠に当たると主張して、先代の代表取締役である訴外Aの相続人Y₁ないしY₄、取締役であったY₃及びY₄、並びに代表取締役であったY₃に対し、本件各支払によりY₅に生じた損害を賠償するよう求め、株主代表訴訟を提起した。

 その後、Y₃はY₅の株主総会を招集し、同総会において、本件各支払の全部を追加承認する旨の決議(以下「本件決議」という)を行ったところ、原告らが、本件決議の取消しを求めて提訴した。

② 決定要旨

 原告らは、本件決議について、(中略)取締役の説明義務違反(会社法314条本文)があった旨主張する。

 そこで検討するに、(中略)本件総会において、Y₅の代表取締役たるY₃が、株主たるX₁から、本件決議の「理由」について説明を求められた事実は認められる(中略)。しかしながら、これに対してY₃が、①「その理由は、当社では、法律の理解が不十分で、株主総会の承認議決をすることを忘れて、役員報酬を支払ってきたと思われます。」、②「当社では、A、Y₁、Y₃の3名が従業員と取締役を兼ねて営業し、収益を上げてきたのです。」、③(本件各支払の額が)「低い金額です。」との回答をしていること(中略)も踏まえれば、この点において、決議取消事由を構成するような説明義務違反があったと認めることはできない。その他、原告らの主張内容及び本件全証拠によっても、本件総会において、本件決議の取消事由を構成するような説明義務違反があったと認めることはできない。

 これに対し、原告らは、本件各支払の対象取締役の具体的な業務内容、被告会社の収益、必要経費の内訳、報酬額の算出根拠等の説明がなかった旨主張するが、本件総会において被告会社の取締役が株主からそれらの「特定の事項について説明を求められた」(会社法314条本文)事実は認められず、そうである以上、それらの事項についての説明をしなかったことをもって同条本文に違反するということはできない。また、原告らは、「原告らがY₅に対し、過去の株主総会等の際に幾度となく、取締役報酬について株主総会決議をしない運営に異議を申し入れていたから、上記①の説明は虚偽である」旨主張するが、そのような申入れがあったことを的確に裏付ける証拠はないし、仮に上記①の説明の表現に正確でない点があったとしても、同説明は、(過去に取締役報酬に係る決議が行われなかった経緯を説明するものであって)本件総会において本件決議を行うべきと考える理由そのものを説明するものではなく、同理由については上記②及び③の説明がされたこと等も踏まえれば、なお、本件決議の取消事由を構成するような説明義務違反があったと認めることはできない。

 (中略)原告らは、本件決議について、(中略)被告Y₁らの株主権濫用によるものであって決議の方法が著しく不公正である(同法831条1項1号)旨、あるいは、特別の利害関係を有する者の議決権行使によって著しく不当な決議がされた(同項3号)旨を主張する。

 しかしながら、原告らの主張内容及び本件全証拠によっても、本件決議による承認の対象とされた本件各支払について、被告会社の規模、Y₁らの就労状況等に比して著しく過大である等と断ずることはできず、その他、本件決議について、Y₁らの株主権濫用によるものであるとか、著しく不当な決議がされたとまで評価すべき事実を認めることはできない。仮に、原告らがA及びY₃に対して取締役報酬が株主総会決議事項である旨の申入れをしていたこと、Y₅には本店所在地の土地及びビル1棟以外に見るべき資産がなく、そのビルの借り手がつきにくい状況であること、Y₅において株主に対する利益配当が行われていないこと、本件決議が甲事件に係る訴訟をY₁らの勝訴に導く目的で行われたことなどの事情が存在したとしても、それらの事情は上記判断を左右するものではない。

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