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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会の決議の有効性が問題となった事例(22件)一覧 > 元代表取締役らの会社に対する株主総会決議取消請求が棄却された事例(東京高判平29・1・31 金融・商事判例№1515・16)(株式会社フジ・メディアホールディングス)
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元代表取締役らの会社に対する株主総会決議取消請求が棄却された事例(東京高判平29・1・31 金融・商事判例№1515・16)(株式会社フジ・メディアホールディングス)

2023.10.23

(H30-⑶)

① 事案の概要

 株式会社フジ・メディアホールディングスと、同社の元代表取締役であるGとの間には訴訟が係属していたが、両者は、上記訴訟に株式会社aを参加させた上で、裁判上の和解を成立させた。

 その後、フジ・メディアホールディングスは臨時株主総会を開催し、当時の取締役だったXら3名を解任すること等の議案を可決承認した。なお、この決議にはaも参加している。

 このような事情の下、Xらが上記株主総会決議の取消しを求めて提訴したところ、第1審判決が請求を全部棄却したため、Xらがこれを不服として控訴した。

② 判決要旨

  

1 当裁判所も、控訴人らの請求はいずれも理由がないものと判断する。その理由は、次のとおり補正し、当審における控訴人らの主張に対する判断を後記2のとおり、当審における被控訴人の主張に対する判断を後記3のとおり付加するほか、原判決の「事実及び理由」欄の第3に記載のとおりであるから、これを引用する。(中略)

 

 (筆者注:第1審判決文)

⑴ 会社法120条1項違反について

    (中略)

 イ 「財産上の利益の供与」について

 (ア) (中略)、被告は、本件和解により、Gに対し、3902万円を支払っているので、財産上の利益の供与をしたと認められる。(中略)

 ウ 「無償で」等について

 (中略)被告は本件和解により無償で財産上の利益の供与をしたなどという原告らの主張を採用することはできず、本件和解について会社法120条2項は適用されないというべきである。

 エ 「株主の権利の行使に関し」について

 (ア) (中略)Gが12月総会に欠席することの見返りとして、被告がGに対して財産上の利益の供与をしたとは認められず、そのほかにこれを認めるに足りる証拠はない。

 (イ) (中略)本件和解の当時、被告の代表取締役がEであり、7名の取締役にCら4名が入っていたこと(中略)、Cらは、Gの保有する本件株式に係る議決権を確保すれば、被告の株主総会を支配することができたこと(中略)、Gは、原告ら及びCらに対し、今後の被告の経営体制、名誉回復措置及び退職慰労金の支払について具体的な提案を求め、これにより原告ら、Cらのいずれを支持するかを決定するつもりであるとの考えを示していたこと(中略)といった事情を指摘できるとしても、被告がGから本件株式を譲り受けるための対価を供与したと認めるには足りないし、Gの本件株式に係る議決権等の株主の権利を行使することを回避する目的であったとも認められない。(中略)よって、本件和解が会社法120条1項に違反するとは認められず、公序良俗に違反するともいえないから、無効であるとは認められない

 ⑵ 再審事由に該当する瑕疵について

   原告らは、本件和解は被告及びGが共謀して責任追及等の訴えに係る訴訟の目的である被告の権利を害する目的をもって成立させたものであり、再審事由に当たる瑕疵があるから、無効であるとも主張する。

   しかし、被告及びGが本件和解をした経緯は上記のとおりであり、被告及びGが被告請求に係る権利を害する目的をもって本件和解をしたことを認めるに足りる証拠はないので、上記主張は採用できない。

 ⑶ 株主名簿の瑕疵について

   原告らは、本件各株主総会の当時、被告の株主名簿は必要的記載事項を欠くものであったから無効であり、そうであるにもかかわらず、被告が当該株主名簿に記載のあったa社に議決権を行使させたことは違法であると主張する。

   (中略)しかし、会社法130条1項、2項は、株式の譲渡は、その株式を取得した者の氏名又は名称及び住所を株主名簿に記載しなければ、株式会社に対抗することができないと定めるところ、仮に株主名簿が一部の記載を欠いていたとしても、会社がこれに記載された、真に株式を保有する者を株主として認めることは支障がないというべきである

   したがって、本件各株主総会において、被告が本件和解(本件和解が無効ではないことは、上記(1)及び(2)のとおりである。)により本件株式を取得するに至ったa社に議決権を行使させたことが不適法であるとはいえない。

(筆者注:第一審判決文引用終了)

2 決議取消事由2について

 控訴人らは、被控訴人が本件和解においてGに対しa社の本件債務につき連帯保証したことはa社に対しその株主の権利の行使に関し財産上の利益を供与したものであるから、a社が議決権を行使した本件各決議には会社法831条1項1号の取消事由があると主張する。

 しかし、被控訴人がGに対しa社の本件債務につき連帯保証したことは、主たる債務者であるa社による債務の履行がなくても、Gが連帯保証人である被控訴人に対しその連帯保証債務の履行を請求することができることになるので、Gに対する財産上の利益の供与とみる余地はあるが(その場合でも、決議取消事由1についての説示に照らすと、このことも同法120条1項に違反するとは認められない。)、a社との関係では、被控訴人が連帯保証債務を履行すれば、a社は被控訴人に対し償還義務を負う(民法462条1項)から、a社に対し財産上の利益を供与したものとは認められない。なお、被控訴人がa社の本件債務につき連帯保証するに当たりa社から保証料その他の対価を収受しなかったとしても、保証会社のように他人の債務を保証することを業とする者ではない被控訴人が対価を得ずにa社の本件債務につき連帯保証したことがa社に対する財産上の利益の供与に当たるとは認められない

 また、控訴人らの上記主張はa社が本件和解当時被控訴人の株主であったことを前提とするものであるところ、a社は、平成24年12月14日、Kから被控訴人の株式200株を譲り受ける旨の契約を締結し、同月20日、Kに対し、売買代金を支払ったが(中略)、被控訴人の取締役会でその譲渡について承認を受けたのは平成25年1月8日である(中略)から、本件和解成立時である平成24年12月17日の時点においては、被控訴人に対する関係では、a社に対する株式の譲渡はまだ効力を生じておらず、a社が被控訴人の株主であったということはできない。他にa社が本件和解成立時において被控訴人の株主であったとの事実を認めるに足りる証拠はない

 (中略)以上によれば、被控訴人がa社の本件債務につき連帯保証したことが同条1項に違反することを理由にa社が議決権を行使した本件各決議に取消事由がある旨の控訴人らの主張は、採用することができない。」

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