
2023.10.23
(H30-⑸)
非公開会社(取締役会は設置している)Y1が、Y2を代表者に選任する旨を株主総会において決議したところ、XがYらを相手方としてY2の職務執行停止及び職務代行者の選任の仮処分命令を申し立てた。
第1審がこれを却下し、原審もXの抗告を棄却したため、Xがこれを不服として許可抗告を申し立てた。
なお、Y1の定款では、代表取締役は取締役会の決議によってだけではなく、必要に応じて株主総会の決議によって定めることもできるとされていた。
取締役会を置くことを当然に義務付けられているものではない非公開会社(法327条1項1号参照)が、その判断に基づき取締役会を置いた場合、株主総会は、法に規定する事項及び定款で定めた事項に限り決議をすることができることとなるが(法295条2項)、法において、この定款で定める事項の内容を制限する明文の規定はない。そして、法は取締役会をもって代表取締役の職務執行を監督する機関と位置付けていると解されるが、取締役会設置会社である非公開会社において、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができることとしても、代表取締役の選定及び解職に関する取締役会の権限(法362条2項3号)が否定されるものではなく、取締役会の監督権限の実効性を失わせるとはいえない。
以上によれば、取締役会設置会社である非公開会社における、取締役会の決議によるほか株主総会の決議によっても代表取締役を定めることができる旨の定款の定めは有効であると解するのが相当である。