
2023.10.20
(H31-⑵)
特例有限会社であるYは、平成28年12月19日、定時株主総会(以下「本件総会」という)において、「株主の相続人に対する株主売渡請求の件」として、生前Yの株主であったBが亡くなった際に保有していたYの株式1800株について、YがBの法定相続人に対して売渡請求をする旨の決議を行った(以下「本件決議」という)。
本件総会当時、X₁はYの株主の地位にあったところ、平成28年12月21日、X₁は、Yの株主として、会社法831条1項1号に基づき、本件決議の取消訴訟を提起した(以下、「190号事件」という)。
その後、平成29年1月29日、Yの株主総会が開催され、Yの取締役としてX₁、X₂及びDが選任され、同日、Yの代表取締役にX₁が就任した。これに伴い、従前Y仮取締役であったJは、その地位を喪失した。
こうした中、X₁及びX₂は、それぞれYの取締役として、平成29年3月3日、本件決議の取消訴訟を提起した(以下、X₁が提起した訴訟を「34号事件」、X₂が提起した事件を「35号事件」という)。
第1審がXらの請求を認容したため、Yがこれを不服として控訴したのが本件である。
前記前提事実によれば、X₁がYを被告として190号事件に係る訴えを提起した後で、Yを被告として34号事件に係る訴えを提起したものであるから、190号事件及び34号事件の当事者は同一である。また、190号事件及び34号事件は、いずれも本件決議の取消しを求める株主総会決議取消訴訟であるから、190号事件及び34号事件の訴訟物も同一である。よって、190号事件に係る訴えが提起された後に提起された34号事件に係る訴えは民訴法142条に規定する二重起訴に該当し、不適法である。
(中略)
2 争点⑵(35号事件に係る訴えは、二重起訴(民訴法142条)に該当し、不適法であるか)について
前記前提事実によれば、35号事件における原告は、X₂であるのに対し、これに先行する190号事件及び34号事件における原告はX₁であって、35号事件と190号事件及び34号事件とでは当事者が同一ではないから、35号事件に係る訴えが二重起訴(民訴法142条)に該当するとはいえない。
(中略)
3 争点⑶(190号事件についてX₁に原告適格があるか)について
前記前提事実のとおり、X₁は、平成29年1月29日にYの取締役に選任されているから、争点⑶の議決権を行使できない株主として株主総会決議取消訴訟の原告適格を有するかについて判断するまでもなく、190号事件についてX₁に取締役として原告適格があることは明らかである。
4 争点⑷(整備法14条3項が規定する「総株主」「当該株主」に当該決議との関係で議決権行使を制限された株主が含まれ
るか)について
当裁判所も、整備法14条3項の規定する「当該株主」は同項にいう「総株主」と同義であり、「総株主」には当該決議との関係で議決権行使を制限された株主が含まれると解され、本件決議は「当該株主」の議決権の4分の3以上という特別決議の成立要件を満たしていないと判断する。