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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会開催禁止の仮処分命令について争われた事例(2件)一覧 > 株主総会開催禁止の仮処分申立てにおいて保全の必要性が認められなかった事例(東京高決令2・11・2 金融・商事判例№1607・38)
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株主総会開催禁止の仮処分申立てにおいて保全の必要性が認められなかった事例(東京高決令2・11・2 金融・商事判例№1607・38)

2023.10.18

(R3-⑶)

① 事案の概要

 Aの株主であるYは、Aに対し、株主総会の招集を請求したが、Aが招集通知を発しなかったため、裁判所に対して株主総会招集許可の申立をしたところ、裁判所はこれを認めた。そこで、Yは、A株主に対し、臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会」という)の招集通知(以下「本件招集通知」という)を送付したが、この際、議決権を行使した株主に対してはクオカードを贈与する旨の文書が添付されていた。

 Aの監査役であるXは、こうしたクオカード贈与の表明は、Yの提案する各決議事項への賛成票の獲得を目的とするものであって、株主の議決権行使に不当な影響を与えており、本件臨時株主総会において行われようとしている決議の方法には法令違反又は著しい不公正があると主張して、本件臨時株主総会の開催を禁止する仮処分命令を求めた。原審はこれを却下したため、Xがこれを不服として抗告した。

② 判決要旨

 Yによるクオカードの贈与の表明については、Aの他の株主に対して本件招集通知とは別途送付された本件追加書面によるものはもとより、本件招集通知と同じ封筒で送付された本件当初書面によるものについても、本件臨時株主総会の招集手続又はその一部として行われたものではないから、これによって、本件臨時株主総会の招集手続がそれ自体直ちに違法になり得るものとは認められない。

 したがって、上記主張を前提として本件臨時株主総会の開催禁止を求める旨のXの主張については、その前提を欠くものとして採用することができない。

(中略)

 次に、前記のとおり、Xは、Yによるクオカードの贈与の表明により、現に相当数の株主の議決権行使に不当な影響を与えており、これにより、Aに著しい損害が生ずるおそれがあり、かつ、保全の必要性があるなどと主張する。

 しかし、本件臨時株主総会は、裁判所の許可を得た少数株主であるYが招集するものであり、本件臨時株主総会の開催を禁止することは、本件臨時株主総会において当該少数株主であるYを始めとするAの株主の権利行使の機会を一方的に奪うことになる一方、上記のようなクオカードの贈与の表明によって本件臨時株主総会の招集又は決議の方法に瑕疵が生じるのであれば、株主総会決議の取消しを求める訴えによってその是正をすることが可能であり、この訴えの提起と共に、民事保全法23条2項に基づき、本件臨時株主総会の決議で選任された取締役等の職務の執行を停止し、その職務を代行する者の選任を求めるなどの仮処分命令を求めるなどの方法も可能であって、救済手段に欠けるところはない。そして、一般に、株主総会開催禁止仮処分の申立てにおける保全の必要性は、当該株主総会の開催を許すと、違法若しくは著しく不公正の方法で決議がされるなどの高度の蓋然性があって、その結果、会社に回復困難な重大な損害を被らせ、これを回避するために開催を禁止する緊急の必要性があることが求められる。これらを踏まえて検討すると、Yが他のAの株主に送付した本件当初書面及び本件追加書面において行ったクオカードの贈与の表明が、本件臨時株主総会の決議に影響を与えるものであるか否かは、議決結果の全体状況によるものであり、現時点で確定し得るものとは認め難く、その他、Xが当審において追加して提出した疎明資料を含む一件記録を精査しても、Yが他のAの株主に送付した本件当初書面及び本件追加書面において行ったクオカードの贈与の表明によってAに回復困難な重大な損害を被らせるとの疎明があったとは認められない。

 そうすると、委任状による議決権行使をする株主に対するYのクオカードの贈与の表明を理由として、保全処分として本件臨時株主総会の開催禁止を求める旨のXの申立てについては、保全の必要性を認めることはできないから、被保全権利について判断するまでもなく理由がない。

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