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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会開催禁止の仮処分命令について争われた事例(2件)一覧 > 株主総会において事前登録制を採用し、出席株主を限定することを理由とする株主総会開催差止請求等が却下された事例(静岡地沼津支決令4・6・27 金融・商事判例№1652・2)
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株主総会において事前登録制を採用し、出席株主を限定することを理由とする株主総会開催差止請求等が却下された事例(静岡地沼津支決令4・6・27 金融・商事判例№1652・2)

2023.10.30

(R5-⑸)

① 事案の概要

 Y₁社の代表取締役であるY₂は、令和4年6月10日、定時株主総会(以下「本件株主総会」という)を開催するに当たり、新型コロナウイルス感染症予防の見地から、健康状態に関わらず、郵送又はインターネットを通じた議決権の事前行使を検討すること、出席を希望する株主は事前に登録を行い、事前登録の希望者が多数に上る場合には抽選を行うこと(事前登録制)、事前登録をしない株主、抽選に当選しなかった株主、及び入場の際に当選の事実が確認できなかった株主は会場に入場できない旨を通知した。

 こうした事情の下、Y₁社の株主であり、本件株主総会に当たって複数の株主提案をしたX₁らは、事前登録制の採用は株主が株主総会に出席して議題・議案に関する説明を求め、または意見を陳述する機会等を不当に奪うものであるとして、次の通りの仮処分を申し立てた。

主位的申立て:Y₁社に対し、株主の総会参与権に基づく妨害排除請求、又は会社法360条の以上行為差止請求権に基づく妨害排除請求権に基づき、本件株主総会の開催の差止めを求める。
予備的申立て:Y₁社に対し、総会参与権に基づく妨害排除請求権に基づき、本件株主総会にX₁らが出席して株主権を行使することの妨害禁止を求める。

② 決定要旨

 「2 主位的申立てについて 

 ⑴ (中略)株主総会開催に当たっては会場の規模や時間的制約等により出席株主を無制限とすることはできず、株主が総会参与権を有するとしても、希望すれば必ず株主総会に出席できる権利であると認めることはできない。したがって、株主の総会参与権に基づいて株主総会開催の差止請求権を観念することは困難である(中略)。

 ⑵ 仮に、株主の総会参与権に基づく株主総会開催の差止請求権を観念する余地があるとしても(中略)、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止という公益目的のために出席する株主数を一定数に限定し、かつ、株主間の公平性を担保するために(中略)事前登録者から抽選により出席者を選定するという事前登録制を採用することは、やむを得ないものであり、これが合理性を欠くものであるとは認められない。」

 ⑶ (中略)Xらは、被保全権利として、会社法360条の取締役に対する違法行為差止請求権も主張するが、Y₁社において、少数株主権である上記請求権を行使するためには、Y₁社に対して個別株主通知がされた後、社債、株式等の振り替えに関する法律154条2項に規定する期間内に権利行使することを要するところ、本件では、これらが履践されていないことに争いはないし、本件株主総会開催によりY₁社に回復することができない損害が生ずるおそれ(会社法360条1項、3項)があると認めるに足りる疎明もない。

 3 予備的申立てについて 

 ⑴ (中略)本件提案は、(中略)、Xらが共同で10件の提案をしたというものであり、株主総会招集通知書(中略)には提案の理由が記載されているから、(中略)、Xら全員の出席が不可欠であるとは考え難い。

   そして、本件では(中略)、抽選に外れた株西であっても、当選した株主から委任を受ければ本件株主総会に代理出席することができるから、当選した株主であるXらあるいは当選者から委任されて株主であるXらにおいて本件提案の趣旨説明を行うことは十分に可能であって、(中略)、Xらによる株主提案の趣旨説明の機会が奪われたとすべき状況は認められない。

   そうすると、事前登録制を採用して株主総会に出席する株主を一定数に限定することに合理性が認められる本件においては、事前登録制を採用したことが、抽選により出席することがでいないXらとの関係で、その総会参与権を不当に侵害するものであるとは認められないし、抽選に当選したXら又は当選したXらの委任を受けて本件総会に出席できるXらとの関係では、そもそもその総会参与権を制約するものではない。」

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