
2023.10.19
(R2-⑸)
Yは、平成28年6月29日に定時株主総会(以下「本件定時株主総会」という)、同年7月4日に臨時株主総会(以下「本件臨時株主総会」という)、及び普通株主による種類株主総会(以下、本件臨時株主総会と併せて「本件臨時株主総会等」という)をそれぞれ開催し、各種決議を成立させた。
これに対し、Yの株主であるXが、上記各株主総会には、招集手続について法令若しくは定款違反が認められ、かつ、著しく不公正であるとか、特別利害関係人の関与によって著しく不公正な決議が為された等と主張して、主位的に本件定時株主総会及び本件臨時株主総会の各決議の不存在確認を、予備的に当該各決議の取消しを、さらに予備的に同決議の無効確認等を求めて提訴した。
⑴ 判断の順序
「Xらが本件定時株主総会決議の取消の訴えの原告適格を欠く旨のYの主張(中略)は、本件臨時株主総会等決議による本件株式併合及びこれに伴う株式買取請求が有効であり、これによりXらがYの株主の地位を失うことを前提とするものであるところ、仮に本件臨時株主総会等決議の効力が否定されないのであれば、Xらは本件定時株主総会決議の取消を求める訴えに関する原告適格を失い、同決議についての本案に関するその余の争点(中略)についても判断を要しないことになるため、先に本件臨時株主総会等決議に関する争点(中略)を判断する。
⑵ Xらに本件定時株主総会決議の取消の訴えの原告適格があるか
「本件株式併合にかかる本件臨時株主総会等決議は取り消されるべきものとはいえず、不存在又は無効であるともいえないから、Yに対して株式買取請求をしたX(中略)については、本件株式併合の効力発生日である平成28年7月26日に株式の買い取りの効力が発生し(法182条の5第6項)、Yの株主の地位を喪失した。また、Yに対して株式買取請求をしていないX₄は、本件株式併合の上記効力発生日にその保有するY株式が全て1株未満の端数となるから、やはりYの株主の地位を喪失した。
したがって、Xらは、本件定時株主総会との関係で決議の取消しを請求することができる「株主等」(法831条1項前段)に当たらず、かつ、Xらは、本件定時株主総会決議の取消しによりYの株主となる者ではなく、同項後段にも当たらないから、Xらは本件定時株主総会決議の取消しの訴えにつき、原告適格がない。」