
2023.10.19
(R2-⑹)
Yは、平成27年10月14日開催のYの臨時株主総会(以下「平成27年総会」という)において、従前取締役であったXを解任した。その後、平成29年6月28日には定時株主総会(以下「本件総会」という)を開催し、各種決議を成立させたところ(以下「本件総会決議」という)、Xは、本件総会が招集権限を有しない者が招集したものであるとして、主位的に、本件総会決議が存在しないことの確認を求めるとともに、予備的に、本件総会は定足数を満たしておらず、決議の方法が法令又は定款に違反するとして、本件総会決議の取消しを求めて提訴した。
⑴ 本件総会決議の不存在自由の存否
「Xは、平成27年総会決議は取り消されるべきものであり、同決議により選任された取締役らによるCの社長への選定が無効であることを前提として、Y株主総会の招集権のないCが招集した平成28年総会決議は不存在であり、あるいは同決議自体も取り消されるべきものであって、同決議により選任された取締役らによるCの代表取締役及び社長への選定も無効であるとして、本件総会はCが無権限で招集したものであるから不存在である旨主張する。
しかし、株主総会決議取消しの訴えは形成の訴えであり、株主総会決議を取り消す判決が確定しない限り、当該決議が有効であることを前提とすべきであり、これが取り消されるべきであるとして、後の株主総会決議が不存在であるということはできない。(中略)
本件先行訴訟は東京高等裁判所に係属中であり、平成27年総会決議について確定した決議取消判決は存在しないのであるから、本件訴訟において平成27年総会決議が取り消されることを前提に本件総会決議が不存在であるということはできない。」
⑵ 本件総会決議の取消事由の存否
「Xは、平成28年総会決議が定足数を満たしておらず、取り消されるべきものであり、同決議による本件定款変更が遡及的に無効であることを前提として、本件総会決議も定足数を満たしておらず、法令若しくは定款に違反する旨主張する。
しかし、前記判断と同様に、平成28年総会決議を取り消す判決が確定していない以上、同決議による本件定款変更が無効であることを理由に本件総会決議が定足数を満たしていないという瑕疵を有するとすることはできない。
前記前提事実によれば、平成28年総会決議における本件定款変更によって、本件総会時における被告株主総会の定足数は、議決権を行使することのできる株主の議決権の2分の1以上を有する株主の出席をもって足りるのであり、本件総会において議決権を有する株主の議決権の個数は4万個で、本件総会には、Cが出席しており、Cは少なくとも2万個の議決権を有していることから(中略)、本件株式譲渡が有効であるかどうかを検討するまでもなく、本件総会決議について定足数不足の瑕疵があるとは認められない。(中略)
これに対し、Xは、前記と同様に、本件定款変更をした平成28年総会決議について決議を取り消す判決が本件総会決議の取消しの訴えの提訴期間経過前に確定しない限り、本件定款変更が無効であることを前提とする決議の瑕疵を主張することができなくなって不当である旨主張するが、同主張を採用することができないことは前記のとおりである。」