• 事務所概要
  • 企業の皆様へ
  • 個人の皆様
  • 弁護士費用
  • ご利用方法
  • 所属弁護士

企業の皆様へ

企業の皆様へ

ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株式取得価格の決定が問題となった事例(2件)一覧 > 会社法171条1項に基づく株式取得価格決定申立の適法性が争われた事例(東京地決平25・7・31 資料版商事法務№358・148)(グッドマンジャパン株式会社)
イメージ

会社法171条1項に基づく株式取得価格決定申立の適法性が争われた事例(東京地決平25・7・31 資料版商事法務№358・148)(グッドマンジャパン株式会社)

2023.10.26

(H27-⑺)

① 事案の概要

 グッドマンジャパン株式会社(以下「相手方」という。)は、親会社の完全子会社となるための手続の一環として、株式に全部取得条項を付す旨の定款変更を行い、これらを全部取得した。この際、相手方は、①種類株式発行会社となるための定款変更、②株主総会決議によって普通株式の全部取得を行える旨の定款変更、③別の種類株式を対価とする全部取得条項付株式の全部取得に関する決議を定時株主総会において行い、④上記②③の定款変更に関する種類株主総会決議(会社法111条2項1号)は別の日に行った。

 これに対し、相手方株式を保有していた申立人が、裁判所に対し、株式取得単価の決定を求めて申立てを行った。かかる申立ては、種類株主総会の日から20日以内に行われたが、定時株主総会の日から起算すると20日経過後であった。

2015版  地裁07.jpgのサムネイル画像

② 判決要旨

 ア 本件申立ての適法性について

 ①全部取得についての決議を行う株主総会の日が、会社法172条1項の価格決定申立ての申立期間の起算日(「同項(同法171条1項)の株主総会の日」)となるためには、少なくとも、上記株主総会の日と同じ日に、全部取得条項を付す旨の定款変更についての決議を行う種類株主総会が開催されていることが必要であり、②上記株主総会の日の後に、上記種類株主総会が開催された場合には、上記種類株主総会の日をもって、上記申立期間の起算日と解するのが相当である。なぜなら、このように解しないと、全部取得条項を付す旨の定款変更についての決議を行う種類株主総会が開催されておらず、全部取得についての株主総会決議が「全部取得条項付種類株式を発行した種類株式発行会社」による株主総会決議であることが定まる前に、株主に対して価格決定の申立てをすることを強いることになり、相当でないからである(このように解しないと、例えば、上記株主総会の日と上記種類株主総会の日の間に20日以上の間がある場合には、株主総会の日から20日後の時点では、全部取得についての株主総会決議が「全部取得条項付種類株式を発行した種類株式発行会社」による株主総会決議であることが定まっていないにもかかわらず、株主総会の日から20日以内に申立てをしないと、申立期間を徒過することになってしまい、相当でない。)。なお、このように解したとしても、「同項(同法171条1項)の株主総会の日」が株主総会決議の効力発生日を意味するものとなるわけではなく、相手方が主張するようなこれまでの裁判上の取扱いとの矛盾を生じさせるものではない。

 これを本件についてみると、全部取得についての決議を行った本件定時株主総会の日の後に、全部取得条項を付す旨の定款変更についての決議を行った本件種類株主総会が開催されており、本件種類株主総会の日が申立期間の起算日となるところ、申立人は、本件種類株主総会の日から20日以内に、本件申立てをしているから、本件申立ては、申立期間内にされたということができる。

 イ 申立人が「反対株主」及び「議決権を行使することができない株主」のいずれにも該当しないとの主張について

 基準日の後に株式を取得したということのみをもって、当該株式に係る取得価格決定申立権が与えられないということはできないと解される。

 したがって、基準日後取得株主は、会社法172条1項2号にいう「当該株主総会において議決権を行使することができない株主」として、価格決定の申立てをすることができると解するのが相当である。

 ウ 本件申立てが権利の濫用であるとの主張について

 相手方は、①申立人が本件各株式を取得したのは、本件定時株主総会における議決権行使に係る基準日後、かつ、本件プレスリリース(本件非公開化手続の実施が決定されたこと、相手方の発行済株式総数の約92.22パーセントを保有する株主が本件非公開化手続に賛成していること、株主に交付されることになる金銭の額が相手方株式1株当たり7万円となる予定であること等を公表するプレスリリース)の公表後であること、②申立人が、本件申立て以外にも、同種の価格決定の申立てを常習的に行っていること、③申立人が自ら開設するインターネット上のウェブサイト(ブログ)における記載からも、申立人が制度趣旨を逸脱した目的により価格決定の申立てを繰り返し行っていることがうかがわれることから、本件申立ては権利の濫用であると主張する。

 上記①の点については、本件定時株主総会における議決権行使に係る基準日後、かつ、本件非公開化手続の公表後に株式を取得したことをもって、当該株式に係る取得価格決定申立権が与えられないということができないことは、上記のとおりであり、申立人が本件各株式を取得したのが、本件定時株主総会における議決権行使に係る基準日後、かつ、本件プレスリリースの公表後であることから直ちに、本件申立てが価格決定申立権の濫用であるということはできない。また、上記②及び③の点については、資料及び審問の全趣旨によれば、申立人がこれまでに株式価格決定の申立てを複数回行っていること、申立人のブログにおいて「どのような理由でどのような決定が出るのかを確かめるために、試しに申し立ててみるか」等の記載があることが認められるが、上記各事実から直ちに、本件申立てが価格決定申立権の濫用であるということはできない。

ページトップ