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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会における取締役の説明義務違反が争われた事例(1件)一覧 > 株主総会における取締役の説明義務違反が争われた事例(東京地判平24・7・19 判例時報№2171・123)
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株主総会における取締役の説明義務違反が争われた事例(東京地判平24・7・19 判例時報№2171・123)

2023.10.27

(H26-⑶)

① 事案の概要

 被告会社の代表取締役社長が、同社株主総会において、同社工場で不法投棄がなされたとの事実を否定し、この点に関する質問に対して回答を拒絶した。また、上記代表取締役は、被告会社の株主である原告らが事前に送付していた質問状記載の質問に対しても回答しなかった。

 これに対し、原告らが、代表取締役の上記行為が取締役の説明義務に違反すると主張して、会社法831条1項1号に基づき、決議の取消しを求めて訴えを提起した。

② 判決要旨  

 ア 取締役は、会社法314条に基づき、株主総会において、決議事項の内容、株主の質問事項と当該決議事項との関連性の程度、質問がされるまでに行われた説明の内容及び質問事項に対する説明の内容に加えて、質問株主が保有する資料等も総合的に考慮して、平均的な株主が議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行い得る程度の説明をする義務を負う。

   これを本件についてみると、被告会社の代表取締役社長の説明は、いささか不十分ではあるものの、原告の質問が不法投棄であることを前提としたものであったことに照らすと、不法投棄であることを否定し、その余の質問に回答する必要がないとした上で、所管行政庁への報告・調査の事実や今後の対策を説明したことが不合理であったと認めることはできない。そして、平均的な株主としても、社長からの上記説明により、その時点で廃棄物の撤去は求められておらず、今後も市の指導に従って定期的な水質調査を実施するなどの対応をとる予定であると理解することが可能であり、剰余金処分や新たな役員(取締役、監査役)の選任、退任役員に対する退職慰労金支給といった本件各議案との関係においても、議決権行使の前提として合理的な理解及び判断を行いうる程度の説明があったと認められる。

   また、被告が、本件株主総会の開催の時点で、上記の専門的な調査や所管行政庁への相談報告に加えて、自ら廃棄物処理法に違反するか否かを調査し、これを説明すべき義務があったと認めることはできない。

 イ 被告の取締役らは、原告らが本件株主総会前に送付した質問状記載の質問に答えていないが、株主総会前の質問状は、取締役等に事前に調査の機会を与え、株主総会で質問があれば応答できるように準備をさせるためのものであって、株主総会において質問がない限り、取締役等がこれについて説明する義務を負うものではない。

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