
2025.09.18
Y社(非上場会社)の株主であるXらは、自身らの保有するY社株式(以下「本件株式」という。)を第三者に譲渡するに際し、Y社に対してその承認を求めた。しかしながら、Y社はこれを拒否した上、会社法144条2項に基づき、裁判所に本件株式の価格決定の申立てを行った。
原審は、本件株式の評価方法としてDCF法(将来期待されるフリー・キャッシュ・フローを一定割合で割り引くことにより株式の現在の価値を算定する方法)を用いて1株当たりの価格を算定した上で、当該評価額につき、非上場会社の株式には市場性がないことを理由として30%の減額を行い(非流動性ディスカウント)、本件株式の売買価格を定めた。
これに対し、Xらが不服として抗告許可の申立てを行ったのが本件である。
2 会社法144条2項に基づく譲渡制限株式の売買価格の決定の手続は、株式会社が譲渡制限株式の譲渡を承認しない場合に、譲渡を希望する株主に当該譲渡に代わる投下資本の回収の手段を保障するために設けられたものである。そうすると、上記手続により譲渡制限株式の売買価格の決定をする場合において、当該譲渡制限株式に市場性がないことを理由に減価を行うことが相当と認められるときは、当該譲渡制限株式が任意に譲渡される場合と同様に、非流動性ディスカウントを行うことができるものと解される。このことは、上記譲渡制限株式の評価方法としてDCF法が用いられたとしても変わるところがないというべきである。
もっとも、譲渡制限株式の評価額の算定過程において当該譲渡制限株式に市場性がないことが既に十分に考慮されている場合には、当該評価額から更に非流動性ディスカウントを行うことは、市場性がないことを理由とする二重の減価を行うこととなるから、相当ではない。しかし、前記事実関係によれば、本件各評価額の算定過程においては、Y社らに類似する上場会社の株式に係る数値が用いられる一方で、本件各株式に市場性がないことが考慮されていることはうかがわれない。
したがって、DCF法によって算定された本件各評価額から非流動性ディスカウントを行うことができると解するのが相当である。