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ホーム企業の皆様へ株主総会関連判例株主総会決議に際して提出した委任状の取扱が問題となった事例(1件)一覧 > 委任状の送付が組織再編に反対する旨の通知に該当するとして、株式買取請求権の行使が認められた事例(最一小決令5・10・26ジュリスト1592・2)
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委任状の送付が組織再編に反対する旨の通知に該当するとして、株式買取請求権の行使が認められた事例(最一小決令5・10・26ジュリスト1592・2)

2025.09.18

① 事案の概要

 S社を吸収合併消滅会社とする吸収合併に関し、S社の株主Xは、同社の勧誘に応じ、委任状の「否」の記載に丸印を付した上で返送した。その後、上記合併がS社株主総会決議を以て承認されたため、Xは、S社に対して株式の買取を求めたものの、協議が整わなかったため、裁判所に対して価格決定の申立てを行った。
名古屋地裁及び名古屋高裁は、委任状の送付は会社法上の反対通知には該当しないとしてXの請求を却下したため、Xが不服を申し立てたのが本件である。

② 判決要旨 

   最高裁は、原審の決定を破棄した上、原々決定を取消し、審理を原々審に差し戻した。
 会社法785条1項、2項1号イは、吸収合併等をするための株主総会において議決権を行使することができる株主が反対株主として株式買取請求をするためには、上記株主総会に先立って当該株主が反対通知をすることを要する旨規定している。その趣旨は、消滅株式会社等に対し、吸収合併契約等の承認に係る議案に反対する株主の議決権の個数や株式買取請求がされる株式数の見込みを認識させ、当該議案を可決させるための対策を講じたり、当該議案の撤回を検討したりする機会を与えるところにあると解される。そして、本件のように、株主が上記株主総会に先立って吸収合併等に反対する旨の議決権の代理行使を第三者に委任することを内容とする委任状を消滅株式会社等に送付した場合であっても、当該委任状が作成・送付された経緯やその記載内容等の事情を勘案して、吸収合併等に反対する旨の当該株主の意思が消滅株式会社等に対して表明されているということができるときには、消滅株式会社等において、上記見込みを認識するとともに、上記機会が与えられているといってよいから、上記委任状を消滅株式会社等に送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。 これを本件についてみると、本件委任状は、S社が、Xに対し、宛先を自社とする本件委任状用紙を送付して議決権の代理行使を勧誘し、Xが、これに応じて、本件委任状用紙の各欄に記載をするなどして作成し、S社に対して返送したものである。そうすると、Xが本件賛否欄に記載したところは、代理人となるべき者に対して議決権の代理行使の内容を指示するだけのものではなく、上記勧誘をしてきたS社に対する応答でもあったということができ、本件委任状の送付は、S社に向けて本件吸収合併についてのXの意思を通知するものでもあったというべきである。そして、本件賛否欄には「否」に〇印が付けられていたのであるから、本件吸収合併に反対する旨のXの意思が本件委任状に表明されていたことは明らかである。なお、本件付記は、その記載内容等からすると、本件議案に反対する理由を記載したものとみるべきであって、本件付記があることは、本件吸収合併に反対する旨のXの意思が本件委任状に表明されていたとの上記判断を左右するものではない。
 以上からすると、本件委任状の送付は、本件吸収合併に反対する旨のXの意思をS社に対して表明するものということができる。
 したがって、XがS社に対して本件委任状を送付したことは、反対通知に当たると解するのが相当である。

 

 5 以上と異なる見解の下に、本件申立てを却下すべきものとした原審の判断には、裁判に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は理由があり、原決定は破棄を免れない。そして、原々決定を取り消し、更に審理を尽くさせるため、本件を原々審に差し戻すこととする。

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